リモートワークでBIM/CIMを。「在宅派遣」を建設業でこそ導入すべき理由
コロナ禍は新たな働き方や生活様式を生み出しました。そのひとつが「在宅派遣」という言葉。今ではすっかり慣れっこになりましたが、コロナ禍で聞かれた「自粛要請」のような不思議な日本語です。「家に滞在しているのに、いったい誰がどこへ“派遣”をするの……?」と首をかしげる人も多いのではないでしょうか。
しかしこの在宅派遣、大いに可能性を秘めています。建設業の人材不足を救うかもしれないのです。
在宅勤務の歴史と普及した理由
そもそも「派遣」とはなにか。『デジタル大辞泉』で派遣の意味を調べてみると、「ある使命をもっておもむかせること」とあります。
この「労働者派遣」においては、人材派遣会社と雇用契約を結んだスタッフが人材派遣会社(派遣元)から、人材派遣会社の取引企業(派遣先)に 「派遣」され、その職場で働く形態を指しています。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染拡大、そして緊急事態宣言発出によって物理的に職場に「おもむく」ことができなくなるケースが発生しました。それによって在宅勤務が急速に普及した経緯はあらためてここで説明不要でしょう。
たしかに、コロナ禍によって誰もが「在宅勤務」という働き方を知るようになりました。しかしこの制度、実は歴史は古いのをご存知でしょうか。しかも建設業界において……。
⽇建設計総合研究所は東日本大震災が起きた2011年8月、全所員が在宅勤務を実施。翌年には制度として本格導入しました。当初は時間外労働削減や福利厚⽣のひとつと想定していたものでしたが、今では経営戦略の一環として在宅勤務で所員のプライベートを充実させようとしているようです。
出典:総務省「働き⽅改⾰のためのテレワーク導⼊モデル」より引用
この日建設計総合研究所の例は特別としても、政府は、コロナ以前から在宅勤務を奨励していました。それは2016年頃の女性活躍、地方創生、そして働き方改革の文脈によるものです。政府が当時発表した「ニッポン一億総活躍プラン」「世界最先端IT国家創造宣言」「経済財政運営と改革の基本方針2016(いわゆる骨太方針)」などにもその文言が見られます。
厚生労働省が今から5年前に作成した資料「テレワークではじめる働き方改革」。ここには企業のメリットとして次のような点を挙げています。
- 優秀な人材の確保や雇用継続につながった
- 資料の電子化や業務改善の機会となった
- 通勤費やオフィス維持費などを削減できた
- 非常時でも事業を継続でき、早期復旧もしやすかった
- 顧客との連携強化、従業員の連携強化になった
- 離職率が改善し、従業員の定着率向上が図れた
- 企業のブランドやイメージを向上させることができた
もちろん、働く人にもメリットはたくさんあります。
- 家族と過ごす時間や趣味の時間が増えた
- 集中力が増して、仕事の効率が良くなった
- 自律的に仕事を進めることができる能力が強化された
- 職場と密に連携を図るようになり、これまで以上に信頼感が強くなった
- 仕事の満足度が上がり、仕事に対する意欲が増した
コロナ禍が加速させた在宅勤務。この恩恵を享受し、働き方に対する意識を変えた人も企業も多いのではないでしょうか。
在宅派遣のメリット
各派遣会社によって普及しつつある在宅派遣。ヒューマンリソシアでも「リモートワーク派遣」と銘打ち支援しています。
- 出勤から在宅勤務へ切り替え
- 出勤と在宅勤務の組み合わせ
- 出勤なしの完全在宅勤務
いずれにも対応可能です。
在宅派遣によって、企業側には次のようなメリットが生まれます。
- 地域に関係なく優秀な人材確保や雇用継続ができる
- 通勤費やオフィス維持費などを削減できる
- オフィス出勤による感染リスクを軽減できる
- 非常事態発生時においても業務をすすめられる
- 顧客との連携強化、従業員の連携強化になった
- 社員間の人間関係のトラブルが軽減できる
- 離職率が改善し、従業員の定着率向上が図れる
- 企業のブランドやイメージを向上させることができる
もちろん派遣社員にも、メリットは大きいのです。
- 勤務地が限定されることなく仕事が選べるようになった
- 通勤時間や通勤費の負担が削減できた
- 家族と過ごす時間や趣味の時間が増えた
- 集中力が増して、仕事の効率が良くなった
- 感染症に感染するかもしれないという不安が解消された
- 人間関係のトラブルに悩まされることがなくなった
- 自律的に仕事を進めることができる能力が強化された
- 職場と密に連携を図るようになり、これまで以上に信頼感が強くなった
- 仕事の満足度が上がり、仕事に対する意欲が増した
不足気味のBIM/CIMオペレーターこそ在宅派遣で
在宅派遣の仕事の中で、「建設HR」編集部が特に注目したいのは「BIM/CIMオペレーター」です。
ご存知のとおり、建設DXに不可欠なBIM/CIMオペレーターは不足しています。人口集中している都市圏でさえそんな状況なのに、オフィスが地方や遠隔地となれば物理的に「おもむく」ことができないため、人材確保はさらに難しくなるでしょう。
しかし、在宅派遣ならその問題は解消されます。そう、オフィスに「おもむく」必要がないのですから。極論ですが、BIM/CIMオペレーターが日本のどこに住んでいても、きちんとした成果が期待できるのであれば問題ないはずです。
また、腕はたしかなのに、子育て・介護や居住地などの事情でフルタイム勤務や通勤が難しいBIM/CIMオペレーターもいるはずです。そのような戦力をオフィスに「おもむく」ことができないからという理由で採用しないのは、実にもったいないと思いませんか……?
「在宅派遣」導入時に企業が注意したいこと
ただ、在宅派遣であるがゆえのリスクやデメリットが存在するのも事実。注意点を含めて解説します。
セキュリティ対策はマスト
パソコンなどのデジタルデバイスを使用するならば、ネットワークを通じて侵入するマルウェア(ウイルスなど)の危険に対策しておかなければなりません。
デジタル化が進めば進むほど、ハッカーやマルウェアの脅威は大きくなっていきます。昨今も大手建設コンサルタントなどがランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の攻撃を受けるなど、セキュリティ対策は各社の懸案事項です。
これが在宅勤務の場合、対策や管理が難しくなります。もし仮に個人所有のパソコンを使用して業務してもらう場合、セキュリティソフトを提供し対策しておく必要があるでしょう。
ちなみにヒューマンリソシアでは在宅派遣の場合、セキュリティソフトがインストールされたNTT東日本の「おまかせデータレスPC」やモバイルWi-Fi、リモートアクセスツールの貸し出しをおこなっています。さらにデータをパソコン本体ではなくクラウド上に自動保存する「データレス機能」付きゆえ、安心です。
管理・評価方法を定める
「在宅派遣? 目が行き届かないので仕事をサボってしまうのでは?」。そう心配する向きもきっとあるはず。これまでの「オフィスでの仕事するのが当たり前」だったのを考えれば、それも致し方ないでしょう。
しかし、「在宅勤務で仕事の内容や進捗が見えない」のは、正社員であろうと派遣社員であろうと同じこと。心配をする前に、業務の管理方法や評価方法をしっかり決めておいた方がよほど建設的だと言えます。
事務系であれば難しい管理・評価も、BIM/CIMオペレーターであれば、成果や進捗は明らかに分かります。その意味でもおすすめと言えるでしょう。
密なコミュニケーションを取る
派遣先企業とのコミュニケーションの機会が減るのが在宅派遣の最大の難点かもしれません。業務に支障をきたさないよう、Web面談やチャットツール、電話などで密なコミュニケーションを図っておく必要があります。
派遣元企業によってその差はありますが、ヒューマンリソシアでは就業がはじまっても担当者が定期的な面談や電話やメールによる随時フォローを実施。在宅派遣社員と企業のあいだをつなぎ、長期就業のためのサポートをしています。
2021年秋時点で新型コロナウイルスの感染者数がいったん落ち着いているとはいえ、まだまだ油断はできません。それよりも、優秀な派遣人材の確保の方が喫緊の課題といえるかもしれません。これからの人材雇用のニューノーマルとなる可能性を秘めている「在宅派遣」、検討してみる価値は大いにあります。