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CIMとは何か?を解説~その導入効果から課題まで

国土交通省が普及を拡大させようとしている「CIM」。建設業界に身を置いて、業務効率化や生産性向上に取り組む担当の方ならば、CIMの名を聞く機会が増えたのではないでしょうか。では、CIMとはどういったもので、それで何ができるのでしょう?

この記事では、いまさら聞けない「CIMとは……何ぞや?」という素朴な疑問や、CIMの歴史、導入のメリットや課題にいたるまで解説します。

CIMの概要

CIM(シム)とは「Construction Information Modeling/Management」の略称です。

今から10年ほど前の2012年、国土交通省が情報化施工の本格的普及を目指し設立された「情報化施工推進会議」の会議の中で、コンピューター上に3次元モデルを作成するシステムであるBIM(ビム、Building Information Modeling)を参考としながら、それを土木分野においても活用すべく提唱されました。

実は2000年代後半頃から国土交通省の高官であった佐藤直良氏が「CIM」推進について言及しはじめており、のちに事務次官となった彼の積極的な後押しで国土交通省による試行業務が始まったとされています。

CIM(Construction Information Modeling)の導入検討について

BIMと同様、3次元化したモデルを計画や調査、設計段階から関係者に共有しながら随時情報を追加可能となります。また、その後の施工や維持管理の段階でも共有している3次元モデルを利活用できるため、情報共有がスムーズになり、結果的に業務効率化が実現する仕組みなのです。

また、情報共有が図れることで設計ミスや不整合があった際の手戻り作業などを大幅な減少を実現し、工期短縮や施工現場の安全性向上などさまざまな効果をもたらすと期待されています。

つまり、「Building」を「Construction」と置き換えたものであり、大枠はBIMと同じ基本概念なのです。

建設業界でさらに普及拡大する「BIM(ビム)」とは?

CIMの変遷

さて、そんなCIM、現在の日本ではどうなっているのでしょう。まずは制度面の整備状況から見てみます。

2012年からはじまったCIM施策による試行工事での結果を反映させて、国土交通省は2017年にCIMの一般化に向けての基準策定をおこないました。それが「CIM導入ガイドライン(案)」。

このガイドラインは、これまでのCIM試行事業で得られた知見などを基に、CIMモデルの作成指針や活用方法を記載したものです。

興味深いのは、この頃から「Construction Information Modeling」から「Construction Information Modeling/Management」と表記されるようになったこと。試行の結果、3次元化モデルの作成だけでなく、それを利用した工事マネジメントも重視されるようになったことの証と言えるでしょう。

【 BIM/CIMの概念 】

出典:国土交通省「CIM導入ガイドライン(案)」より

ちなみに、「CIM導入ガイドライン(案)」では冒頭で以下のように記されています。

国土交通省では、平成30年5月から従来の「CIM(Construction Information Modeling/ Management )」という名称を「BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)」に変更している。これは、海外では「BIM」は建設分野全体の3次元化を意味し、土木分野での利用は「BIM for infrastructure」と呼ばれて、BIM の一部として認知されていることから、建築分野の「BIM」、土木分野の「CIM」といった従来の概念を改め、国際標準化等の動向に呼応し、地形や構造物等の 3 次元化全体を「BIM/CIM」として名称を整理したものである
「CIM導入ガイドライン(案)」(令和2年3月)より引用

現在では「BIM/CIM」と呼ばれるようになったのですが、この記事では便宜上、土木分野の3次元化を「CIM」としています。

CIMの普及状況

続いて、CIMは日本においてどの程度行きわたっているのか。

国土交通省が2018年12月~2019年1月に実施した「CIMの普及状況」アンケート調査 によると、325の回答企業のうち139社(42.8パーセント)が「すでにCIMの取り組みをおこなっている」と回答しています。

また「積極的に取り組みたい」と回答した企業は55社(16.9パーセント)、「将来的に積極的に取り組んでいきたい」と回答した企業が91社(28パーセント)で、すでに取り組んでいる企業と合計すると、285社(88パーセント)の企業がCIMに取り組む意思があると回答しています。

裏を返せば、この2019年時点では約60パーセントの企業はCIMに取り組んでいませんでした。しかし各企業の前向きな姿勢を見るに、2021年の今日には、さらに普及していることと推測されます。

CIMが求められる理由

CIMがいま、日本の建設業界で求められる理由。それには下記のメリットがあるからです。

  • 設計ミスなどのリスク軽減
  • 正確な設計の実現
  • 関係者・部署・住民などとのイメージ共有
  • 維持管理における3次元モデル活用

設計・施工ミスなどのリスク軽減

施工地の切土や盛土、部材などの属性情報を利用した建造物の3次元モデル化により「見える化」が実現します。これによって詳細な構造や工程の理解、周辺環境との干渉などもチェック可能となる。それがCIMのメリットのひとつです。

さらに、3次元化した建造物を多方面から確認できるため、平面の設計図ではわかりにくかった問題点が見つけやすくなり、より正確な設計が実現できます。

これらの理由から、従来よりも設計ミスや施工ミスなどが発生するリスクが軽減可能となるのです。

正確な設計の実現

設計者が作成した建造物の3次元モデルを施工者に共有すると、設計段階で施工者の意見を反映できるようになります。施工時に懸念される問題の共有や施工手順のすり合わせなども、この段階でできる上、すり合わせした内容も3次元モデルに追加情報として随時落とし込めます。

もし仮に修正が必要な問題が発生しても、工事関係者に3次元モデルが共有できているため、迅速に対応可能なのです。

これら工程の初期(フロント)段階において、事前集中的に検討を重ね、 後工程で生じそうな仕様変更や手戻りを未然に防ぐ。そして品質向上や工期短縮化を図る――これが「フロントローディング」というCIMのメリットです。

また複数工程を同時並行で進め、各部門間での情報共有や共同作業を行うことで、開発期間の短縮やコストの削減を図る手法――「コンカレントエンジニアリング」もCIMのメリットと言えるでしょう。

関係者・部署・住民などとイメージ共有可能

CIMにより作成した3次元イメージを共有できれば、施主が必ずしも専門家ではなくてもわかりやすい完成イメージを共有できます。

また、地域住民への説明の際にも、わかりやすい3次元データによる完成イメージを示せば、建設工事における合意形成など、その準備をスムーズに進められるはずです。完成後のトラブルを防ぐことにもつながります。

維持管理における3次元モデル活用

CIMは部材などの属性データも登録できる「統合データベース」なため、情報を設計や施工時に利用するだけでなく、完成後の維持管理に利用できます。仮に補修が必要となった場合、構造物内部に使用されている部材の情報がすぐに引き出せるメリットがあります。さらに部材の耐用年数を登録すれば、点検時期の把握も可能に……。

このようにCIMを利用した維持管理は、従来よりも維持管理にかかるコスト削減に貢献するはずです。

日本におけるCIMの波に乗り遅れないために

前述のように、CIM導入を前向きに考えている企業は多く、国土交通省も積極的にCIM推進の旗振りをおこなっているため、今後さらに導入は進んでいくはずです。

それは国土交通省がBIM/CIM運用拡大に向けたロードマップ を作成し、「2023年度に全事業でCIMの原則適用を目指す」と宣言していることからも窺い知れます。

CIM推進の波に乗り遅れないために、まずはCIMについてよく理解し、自社においてはどのように取り組んでいくのか、そして「誰が扱うのか」――このツールについてもっとも重要な問題について早めに検討していくべきだと思われます。

建設業界に強みを持つヒューマンリソシアでは、CIM人材についてのご相談をいつでも受け付けております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

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