建設DX推進には欠かせないITエンジニア。しかしその人材は不足中で、有効求人倍率は建設技術者のそれをも上回る8~9倍と言われています。2030年には最大79万人が不足するとの経済産業省試算も……。これではDXどころではありません。
出典:経済産業省IT人材需給に関する調査(概要)より引用
未経験者を育成してなんとか賄おうとする企業やサービスもありますが、いっぽうでDXに求められるITエンジニアのレベルは上がるばかり。一朝一夕で解決する問題でないのは明らかです。
そこで近年、海外からの人材を受け入れる動きが活発化しています。ITエンジニアとしての腕が確かならば、なにも人口が減り続ける日本人にこだわる理由はないからです。コロナ禍によってストップがかかったものの、今後も人材のグローバル化は必然。外国人材の採用は待ったなしと言えるのではないでしょうか。
そうは言っても外国人材の採用というと、途端に二の足を踏む企業担当者も多いのも事実。こんな不安の声が聞こえてきそうです。
「技術があっても日本語が通じないから……」
「わが社が培ってきたカルチャーになじまないと……」
「みんなと同じように雑務や残業もこなしてもらわなくては……」
「すぐに母国に帰りたがるのでは……」
ひと昔前に比べれば日本国内で外国人と接する機会は圧倒的に増えましたが、「自分の職場で働いてもらおう」となると話は別。未知との遭遇に戸惑うのはごもっともです。
そこで今回は、外国人材の定着とパフォーマンスを発揮してもらうための組織づくりについて解説します。
外国人材とは
まず、この記事で外国人材は、主に「高度外国人材」のような人材を指します。
「高度外国人材」とはなにか。
すこし古い資料ですが、「外国高度人材受入政策の本格的展開を(報告書)」(2009年5月29日 高度人材受入推進会議、原文ママ)では高度外国人材を「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と定義づけています。
高度外国人材の受入れを促進するため、法務省は2014年に高度外国人材に対しポイント制を活用した出入国在留管理上の優遇措置を講ずる制度を設けました。以来、日本で働く高度外国人材の数は増え続けています。
「高度外国人材活躍推進プラットフォーム」を立ち上げるなど、高度外国人材の採用を検討する企業を応援しているのがJETRO(日本貿易振興機構)。JETROのこちらの動画に分かりやすくまとめられているので、ぜひ一度閲覧を……。
外国人材を採用するには、日本にすでに滞在している外国人留学生にアプローチする、あるいは海外在住の人材を直接アプローチする、公的機関等の実施するイベントに参加するなどの方法があります。
ひとつ注意したいのは、「高度外国人材」という在留資格は存在しないこと。前述のJETROの動画ではその手続きを「行政書士や自治体窓口に一度相談してみては……」と紹介しています。これらの煩雑な手間がネックと言えるかもしれません。
ちなみにヒューマンリソシアが提供する「海外ITエンジニア(GIT)派遣サービス」は、在留資格取得を始め入国に関する手続きを雇用主であるヒューマンリソシアがおこなっているので、採用や在留資格(在留資格は『技術・人文知識・国際業務』、配偶者が日本人の場合は配偶者ビザ)の点については企業側の負担がないため、ご関心の向きは、ぜひ下記にお問い合わせください。
海外ITエンジニア派遣サービスについて詳しくはこちら
外国人材が日本を選ぶ理由
優秀な外国人材は、いまや世界中で引っ張りだこです。専門教育を受け、大学院を修了し、米国の有名IT企業を目指す人は多いそう。そんな中、わざわざ日本を目指して働きに来る外国人材も多数います。そこには日本ならではの理由があるのです。
【外国人材が日本に来る理由】
- 日本の文化や歴史に興味・関心がある
- 日本のゲーム、アニメやサブカルチャーが好き
- 日本製品が好き
海外ITエンジニアインタビューはこちら
かつて日本人が米国の映画やテレビ番組、劇中に登場する華やかなカルチャーに憧れたように、ITエンジニアもまたいわゆる「クール・ジャパン」「Made in Japan」なものに幼少期から触れ、それに憧れて、大人になってからその世界を実体験したい、と思うのです。
また、街が清潔で治安も良く、物価が安い(“安いニッポン”は世界的に見れば喜ばしいことばかりではありませんが)ことや医療制度の充実ぶりも魅力と映る側面もあります。
せっかく憧れてくれるのだから、ぜひその気持ちには日本人として“おもてなし”の心で応えたいものです。
外国人材が定着しない理由
しかし、希望に胸膨らませて来日した外国人材が早期離職してしまうケースもしばし起きています。彼らが定着しない理由――それは何なのでしょう??
「技術があっても日本語が通じないからでは……」
「わが社が培ってきたカルチャーになじまないと……」
「みんなと同じように雑務や残業もこなしてもらわなくては……」
「すぐに母国に帰りたがるんじゃ……」
たしかに早期離職に至ってしまうのは、「日本語での会話・読解力」「日本の会社組織との親和性」という要因もゼロではないでしょう。ヒューマンリソシアの《海外ITエンジニア派遣》は、一定水準の日本語教育を受けたIT人材を送り出しているのでその点は心配ご無用なのですが、実は日本語力以外に早期離職となる理由があるのです。
ヒューマングループでビジネス・プロフェッショナル×バイリンガルのための転職・求人情報サイト「Daijob.com」を展開しているヒューマングローバルタレントが日本での在留・就労経験のある外国籍人材に向けておこなった調査において、「日本で働く海外人材の超早期離職率(入社後1年以内の離職)は28パーセント、モチベーションダウン率は53パーセント」という衝撃的な結果が報告されています。
出典:ヒューマングローバルタレントが実施した共同調査結果より引用
なぜ、これほど辞めてしまうのか、モチベーションが下がってしまうのか。そこにはいくつかの原因があります。前述の調査であげられた上位理由を見てみましょう。
【早期離職の理由】
- 上司のマネジメント・指導に対する不満
- 業務内容のミスマッチ
- 給料が安い、残業代が支払われない
- 職場の人間関係に対する不満
【モチベーション低下の理由】
- 上司のマネジメント・指導に対する不満
- 業務内容のミスマッチ
- 職場の人間関係に対する不満
- 外国人に対しての差別・偏見がある
【外国籍人材の受け入れ課題トップ3】
- 仕事と私生活のバランスへの配慮
- 日本人社員向けの異文化理解教育の実施
- 日本人と外国人のコミュニケーション促進
ここで賢明な読者のみなさんは、これらの理由のほとんどが「日本人/外国人であることは関係ない」とお気づきでしょう。
仮に日本人社員であっても、いわゆる「心理的安全性」が低い職場では自由な発言もできず、ストレスが溜まるばかり。コミュニケーションが取れなければ、相互理解もできません。
さらに「わが社(部署)はこういうやり方なんだからとにかく従え」と異なる価値観を押し付けられ、長時間にわたって滅私奉公的な働き方を強制されるのであれば、離職を考えるのは当然と言っていいでしょう。
ましてや給料や残業代の問題は、ここで言うまでもないレベルの話です。
相手が外国人材であろうが日本人であろうが、若者や女性、正社員や派遣社員であっても同じ。その組織にいる人にとって精神的・身体的に安心安全であれば、「もっとここで働きたい」と思えるでしょうし、「ここで認められたい」という想いからみずから勉強や努力を重ね、高いパフォーマンスを発揮してくれるはずです。
外国人材とともに建設DXを共創するには
外国人材に長く働いてもらい、なおかつ建設DXにおいて大きな成果を上げてもらうには、次のようなポイントがおさえられた組織をつくることが求められるでしょう。
・心理的安全性を高める
・採用時に業務目的や内容についてしっかり合意形成する
・コミュニケーションによる相互理解の場を積極的に設ける
・客観的な視点で「違い」を尊重するスタンスを持つ
ヒューマンリソシアの海外ITエンジニア(GIT)派遣を採用している企業の声を抜粋してみましょう。
「一緒に働くエンジニアが全員日本人でしたから、日本語でのやり取りはどうだろうか、という不安は若干ありました。しかし、実際に来ていただいたところ、日本語のコミュニケーション力が高いうえ、人付き合いの面も素晴らしく、すぐチームに溶け込んでしまいました」
「はじめに彼らがフロアを訪れたときは、注目されたということはありましたが、不安の声などはありませんでしたね。文化の違いでいえば、ムスリムの方などは定期的にお祈りをしますが、会議室を手配したので、問題なく解決しました。それぞれ宗教的に食べられない食材もあるため、みなで一緒に外食というと難しいですが、いろんな文化に触れることを私自身も楽しんでいます」
「(在宅勤務で)全員が顔を合わせられないので、オンライン飲み会をしたりもします。毎回、本当に楽しいですね。あるGITエンジニアは、わざわざプレゼン資料を用意して、自身のお国自慢をしてくれました。本当に訪ねてみたくなるほど素晴らしいプレゼンで、海外の方はプレゼンが上手だなと思いましたね」
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そこには、互いの違いを理解しようとする姿勢や、組織で働く仲間と一緒に高め合っていこうという姿勢がひしひしと感じられます。
繰り返しますが、ITエンジニアをはじめとした外国籍の人材にとっても働きやすい職場をつくることは、すなわち、日本人の若者や女性、派遣社員などにとっても働きやすい組織と同義。
今後の建設DX成功のカギは、「ダイバーシティ&インクルージョン」にあります。海外人材はある意味で「ダイバーシティ&インクルージョン」が進んでいるかを測るリトマス試験紙的な存在といえるかもしれません。
さて、これを読むあなたの職場は、外国人材を受け入れられる雰囲気でしょうか……?