国土交通省が導入を推進しているCIM(シム、Construction Information Modeling/Management)。CIMソフトウェア導入を検討している企業で、数あるCIMソフトウェアの中から、自社に適したソフトウェアかをどう選ぶのか、頭を悩ませている担当者は多いのではないでしょうか。「どのCIMソフトウェアを導入すればよいのか?」「定番CIMソフトウェアの特徴を知りたい」などの不安や疑問もあるはず……。
この記事ではそんなCIMソフトウェアの「定番」や各機能、CIMソフトウェアの今後の動向について解説します。
CIMソフトウェアでできること
CIM(シム)とはConstruction Information Modeling/Managementを略したもの。コンピューター上で作成した3次元モデルを、調査や設計、完成後の維持管理など構造物に関わるあらゆる工程で共有し、業務の効率化を実現します。そんなCIMを使用するためには、CIMソフトウェアへの切り替えが必要です。
CIMソフトウェアでは、構造物や地形の3次元データ作成や、材質や強度などの属性情報の付加などが可能で、より整合性の高い設計や修正の手間を省略できます。
ソフトウェアは主に3種類
代表的なCIMソフトウェアは主に3種類。当然、ソフトウェアによって特徴が異なります。今回はこの3種類+注目のソフトウェア1種類について紹介します。
名称(開発元) |
概要 |
特徴 |
3DCAD Studio (フォーラムエイト) |
国内の産学連携で開発されたCIMソフトウェア |
土木構造物の3次元モデル作成を主眼としたCIMソフトウェア |
Civil 3D (オートデスク) |
AutoCADをベースとしたCIMソフトウェア |
土木・測量分野向けの3次元設計ソフトウェア |
TREND-CORE (福井コンピュータ) |
国内のソフトウェア会社が開発したCIMソフトウェア |
2次元CADの操作感で使用できるソフトウェア |
3D地図データ (ゼンリン) |
地図情報を提供するゼンリンが提供する3次元地図データ |
プレゼンテーションに適した地図データを得られる |
各CIMソフトウェアの特徴
前項で紹介した、3つの代表的CIMソフトウェアの特徴をくわしく解説します。
3DCAD Studio(株式会社フォーラムエイト)
「3DCAD Studio」は国内企業であるフォーラムエイトが開発したCIMソフトウェアです。
CIMソフトウェアの中では税込で198,000円と比較的安価なのが特徴です。このソフトウェアは関西大学関西大学総合情報学部の田中成典教授を中心とした産学連携「関西大学カイザー・プロジェクト」で開発された3次元エンジンを、初めて採用したソフトウェアです。
3DCAD Studioの製品プランと価格
日本製ソフトであること、本体価格の安さが魅力です。まずは体験版がダウンロードできるほか、比較的安価な短期間レンタル版があるため、ぜひ一度使用感を試してみてはいかがでしょう。
Civil 3D(オートデスク株式会社)
アメリカ・オートデスク社のCADソフトウェア「Autodesk」を基にした3次元設計ソフトウェアが「Civil 3D」です。
3次元モデルの情報の変更・修正をすると、その内容はすべて平面図に反映されます。そのため修正が容易でかつ図面の整合性も高くなり、ムダな作業が削減できるはず。
また、毎年アップデートを行っているため、基本性能を保持したままのソフトウェアよりユーザーにとって使いやすいソフトウェアになっています。
Civil 3Dの製品プランと価格
正直なところ、Civil 3Dは使用料が比較的高額。とはいえ、導入前に一度無料の体験版を使用してその使用感を確かめれば「お値段以上」なのか分かるはず。そこで自社に合ったソフトウェアかどうかの判断をしてみては……?
TREND-CORE(福井コンピュータアーキテクト株式会社)
「TREND-CORE」は福井県に本社を構える福井コンピュータアーキテクトが開発したCIMソフトウェア。
ドローンなどで取得したデータを基に地形の3次元化を自動形成し、PDFまで出力可能なのが特徴です。
嬉しいのは、2次元CADの操作感で3次元モデルを作成できること。2次元CADの操作感に慣れている方にはもっともおすすめなソフトウェアのひとつと言えるでしょう。
なお、「TREND-CORE VR」と組み合わせでVR体験も可能なため、プレゼンなどでも活用可能です。
TREND-COREの製品プランと価格
豊富なオプション機能があるのもTREND-COREの魅力のひとつです。ぜひ体験版でお試しを。
3D地図データ(株式会社ゼンリン)
上記3つに加え、地図情報を提供している株式会社ゼンリンが3次元都市モデルデータを提供するサービス「3D地図データ」も紹介します。
特徴は、オンライン上で「3D地図データ」の必要な範囲・仕様を指定すると、利用ソフトウェアに適した3次元データへの変換が可能なこと。3D地図データを利用すれば、対象施設の周辺環境をとてもわかりやすくプレゼンテーションできます。すでにお気づきだと思いますが、これ自身で3次元モデルを作成するCIMソフトウェアではないのでご注意を。
また、3D地図データを使用することで、周辺環境をイチからモデル化する手間を省けるのも大きなメリットでしょう。
3D地図データの製品プランと価格
名称 |
3D地図データ |
価格(税別) |
・Sプラン(年間完全使い放題):550万円(税込) ・Aプラン(年間チケット制32枚):264万円(税込) ・Bプラン(年間チケット制14枚):132万円(税込) ・Cプラン(年間チケット制6枚):66万円(税込) ・Dプラン(完全従量課金制) 3D都市モデル:162,800円/単位(税込) 広域3D化モデル10メートル標高版:162,800円/単位(税込) 広域3D化モデル50メートル標高版:104,500円/単位(税込) DXFデータ:104,500円/単位(税込) |
無料試用版 |
あり/30日間 |
開発元 |
株式会社ゼンリン |
URL |
https://www.zenrin.co.jp/product/category/gis/contents/3d/index.html |
上記で記載されている「1単位」は、1ブロックまたは1ブロック相当面積。「チケット制」とは年間で利用できるデータの数です。つまり、Cプランなら年間で6枚利用可能です。
ちなみに、体験版ではゼンリンが提供する地域のデータをダウンロードし、3D地図データを検証できるのとこと。
・3D都市モデルデータ:渋谷駅周辺の限定範囲 ・広域3Dモデルデータ:長崎駅周辺の限定範囲 ・DXFデータ(2D/3D):渋谷駅または長崎駅周辺の限定範囲
各ソフトウェアのシェア、動向
前項で紹介した3つのCIMソフトウェアの具体的な占有率は、2021年9月時点では公表されていません。
ただ建設系のソフトウェアベンダー、ハードウェアベンダー等からなる一般財団法人OCFが公表している「国土交通省CIM導入ガイドライン・BIM/CIMモデル等電子納品要領対応ソフトウェア一覧」によると、オートデスクの「Civil 3D」と福井コンピュータアーキテクトの「TREND-CORE」は「CIM導入ガイドライン」でいうところの「地すべり」以外ですべて対応しており、その汎用性の高さを証明しています。
なお、オートデスクはCADやBIMソフトでも高いシェアを誇るため、CIMソフトウェア「Civil 3D」も今後シェアが高くなることが予想されます。
CIMソフトウェアを扱う人材不足にどう対応するか
国土交通省が2018年12月~2019年1月に実施した「CIMの普及状況」のアンケート調査によると、回答のあった企業のうち約6割の企業が「CIMの取り組みを行っていない」と回答しており、CIMの普及は思ったほど進んでいないことがわかります。
出典:国土交通省「CIMの普及状況(アンケート調査)」より引用
ただ、国土交通省は2023年度にすべての直轄事業においてBIM/CIMの原則適用を実施すると公表していることから、さらにCIM導入・活用を考える企業が増えるでしょう。CIMソフトウェアの普及拡大は間違いないのですが、それに伴ってCIMソフトウェアを扱える人材がさらに不足する可能性は高いと推測できます。
今後CIMソフトウェアを扱える人材はより希少な存在になるでしょう。CIM人材確保なら、まずは建設業界に強い人材サービス会社へのご相談を。ヒューマンリソシアではいつでもご相談を受け付けております。
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