建設業界の生産性を向上させ、人材不足という課題に光明をもたらすとされているBIM。国土交通省の旗振りもあって、導入を検討している企業はきっと多いことでしょう。
しかし、このBIMはAI(人工知能)のように自動で学習し、勝手に作業をおこなってくれるツールではありません。BIMを管理し、扱える人材が必要不可欠です。
では、そのBIM人材とはどのようなものであり、どうやって育成や確保をすればいいのでしょうか。今回はBIM人材の現状と課題について迫ります。
BIM人材とは
建設業界のQCDSE(品質・コスト・工期・安全・環境)改善に大いに貢献するといわれているBIMを扱えるひとたち、それが“BIM人材”。しかしその定義や範囲はさまざまです。いま建設業界において、BIM技術者とはどのようなものがあるのでしょう。
『BIM その進化と活用』(日刊建設通信新聞社刊)によると、「いまだ確立された職能・職種ではなく、国内外で必要と考えられているものを列記した」という断りを入れた上で、BIM技術者だけで実に13もの種類が挙げられています。
① スペシャリスト
② BIMマネジャー
③ モデラー
④ モデル専門家
⑤ 数値解析分析者
⑥ コンサルタント
⑦ BIM指南者
⑧ 機能自動化コード開発者
⑨ 教育・研究者
⑩ ソフト機能検証・開発者
⑪ プロジェクト管理・統括者
⑫ 施工BIMマネジャー
⑬ 専門工事BIMマネジャー
では、この中でBIM導入を考えている企業担当者が、まず必要とする人材はどれか。それは②⑫⑬のBIMマネジャー、そして③のモデラー(BIMオペレーター)でしょう。
今回はこのBIMマネジャー、そしてBIMオペレーターに絞って解説していきます。
BIMマネジャーとは
まずはBIMマネジャーです。
BIMマネジャーは、上記の表で言えば「スペシャリスト」と「モデラー」、さらには「BIM指南者」の知識と技術を持っています。BIMがさまざまな属性情報を付加した統合データベースであるがゆえに、設計だけでなく施工、あるいは専門工事についても幅広く知識を有している存在です。またプロジェクトの業務分担をおこない、どう進めていくかを判断し、ソフトウェアの選定やその利用タイミングも指示、管理していきます。
BIMマネジャーについてのまとめとして、『BIM その進化と活用』(日本建設情報技術センター)でわかりやすく表現されていた文章を引用してみましょう。
「BIMマネジャーの能力はF1レーシングチームの監督に似ているように思う。自チームが対戦相手と対峙するとき、どのタイミングで給油しタイヤ交換するか、レーシングカーがもつ性能や機能、ドライバーの腕を熟知していなければ、相手チームを打ち負かし、勝つことはできない」(『BIM その進化と活用』より引用)
繰り返しますが、BIMは統合データベースです。それに込められた情報をいかにうまく管理しながら活用できるか、それがBIMマネジャーの手腕にかかっています。
BIMオペレーターとは
続いては、BIMオペレーターについて。
建設ITジャーナリスト・家入龍太氏は著書『最新BIMの基本と仕組み』のなかで、「BIMソフトは『とっつきやすく奥が深い』ものです。建物の3次元モデリングやCG、簡単な図面の作成方法などは1週間もあれば習得できます」と記しています。
これを読むと、「自社の熟練CADオペレーターにRevitなどのBIMソフトをあてがえば、すんなりBIM化できるのでは?」と思われるかもしれません。しかし、それは早合点です。
「とっつきやすく奥が深い」とする一方で、「本格的な図面を描けるようになるまでにはかなり時間がかかり、忍耐強い修業が必要です」と家入氏はくぎを刺しています。
そもそもBIM技術の習得とは、建築設計や工事管理、維持管理など実務に即した技術の習得だとされています。つまり、BIMマネジャーほどではないにしても、建築/土木の知識を少なからず有している必要があるのです。
BIMオペレーターは現時点で公的な認定資格はありませんが、ソフトに紐づいた「Revit Architectureユーザー試験」「ARCHICAD オンライン認定試験」などの資格試験があります。しかし、ある意味で資格よりBIMオペレーターに必要なのは、建築/土木に対する関心と知識と言えるでしょう。
BIM人材確保の問題
かねてから業界内では、BIMマネジャーならびにBIMオペレーターの人材不足について叫ばれていました。BIMが建設業界の生産性向上に貢献し人材不足をカバーすると期待されていたのに、肝心のBIM人材が不足しているのでは本末転倒です。
建築分野に限ったデータですが、国土交通省による「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>」(令和3年1月)によれば、BIMを導入していない企業は全体の53パーセント。
出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和3年1月)」
導入していない理由として、「発注者・業務上の関係者からBIM活用を求められていないため」「CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため」という環境上の理由、「BIMを習熟するまで業務負担が大きいため」という自社内業務調整の理由に次いで「BIMを活用する人材がいないため、人材育成・雇用に費用がかかるため」が挙げられています。
出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和3年1月)」
またBIMを導入している企業でも、45パーセントが「(BIMを)積極的には活用していない」と回答しており、その理由の2番目に「活用したいが活用できる人材が不足している」を挙げています。
出典:国土交通省「建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査 確定値<詳細>(令和3年1月)」
また前述のように、実際に手を動かすBIMオペレーターに関しては、これまでよりレベルアップが求められるのも事実。自社のCADオペレーターに「ソフトを用意したからすぐにBIM案件に対応してくれ」と指示するのはさすがに酷というものです。
SNSでも「建築知識のあるBIMオペさん、周りでも不足。特にレンダリング出来る方」「BIMオペさんにはBIMソフトというツールへの深い理解と建築に対する広い知識が求められる」などとささやかれています。
なかには「BIMオペが少ないからモデル化するときは中国、台湾、韓国などへ外注」という声も。たしかに、大手企業などではアジア各国へBIMモデル制作をアウトソーシングしているとの話も聞かれます。
……もはやBIM人材を、国内で確保することは難しいのでしょうか?
BIM人材確保のソリューションとは
実際問題、BIM人材は、建設会社が自社ホームページで求人を出すだけでは、なかなか集められないのが現状です。
では、どうにもならないのか?――いえ、そうではありません。
「餅は餅屋」という言葉があるように、やはり建設業界の人材のことは建設業界に特化した人材サービス専門会社に相談し、自社の課題に合ったソリューション(解決策)を提案してもらうのが、もっとも確実であり、また安心といえるのではないでしょうか。
即戦力のBIMオペレーターをお探しなら「育成型派遣サービス」
たとえば「建設HR」の運営会社であるヒューマンリソシアは、グループ内のヒューマンアカデミーにて養成したCADオペレーターを、建設業界へ安定的に供給してきた実績を有しています。
ヒューマンリソシアはこれからのBIM時代到来を見越し、2016年1月からこれまでおこなっていた従来のBIM基本操作トレーニングだけではなく、より充実したBIMトレーニングカリキュラムを準備しています。
企業より人材の依頼があった際、人材データベースから選定された適任者が、就業前にBIMソフト(ARCHICAD、Revit、GLOOBE)の操作研修を受講します。これにより、派遣先企業の温度感やニーズに合ったスムーズなスタートが可能となる仕組みです。
また派遣先企業での就業中においても、派遣BIMオペレーターにはフォロー研修がおこなわれる点も安心材料と言えるでしょう。
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地方でBIMオペレーターをお探しなら「海外ITエンジニア派遣サービス」
BIMオペレーターは都市部に集中しがちだと言われています。ではその数が少ない地方に拠点をかまえる企業や支社では、BIMオペレーターの派遣は難しいのでは……。そう心配する責任者/担当者の方には、ヒューマンリソシアの「GIT(海外ITエンジニア)派遣サービス」が役立つはずです。
このGIT派遣サービス、海外の教育機関でITについて学び経験を積んだエンジニアを派遣するもの。通常の日本人の派遣サービスだと、BIM人材の現住所から通える範囲の派遣になるためどうしても距離的なハードルが生じますが、国を超え「日本で働きたい」とやってきたGIT派遣サービスならば、距離の問題はありません。
またヒューマンリソシアの社員として採用されているため、在留資格や住居手配などといった生活面のフォローも不要です。ITスキルだけではなく日本語コミュニケーション力も採用基準に設定しているので、これまで日本語だけを使用してきた地方の企業でも存分に活躍してくれるはずです。
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中途採用でBIMマネジャーを迎え入れたいなら「人材紹介サービス」
最後にBIMマネジャー。長期的な視野で見た場合、ぜひとも正社員採用したい人材です。ヒューマンリソシアでは建設業に特化した「人材紹介サービス」をおこなっています。
「人材紹介サービス」について詳しくはこちら
BIM導入に早々に着手している大手企業は、これからさらに優秀な人材を囲い込もうとするでしょう。また、BIM導入を検討している企業間でも、人材獲得競争はますます激しさを増すと予想されます。
まずは自社にとってどのような人材が必要なのか、現状の課題と将来あるべき姿を考えてみてください。まだまだ検討の段階だったとしても、人材についての最適なソリューションを提案できる、専門の人材サービス会社にまずは相談してみることをおすすめします。
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