建設業界の人手不足の実態調査!各社の対策を解説
建設業界では、少子高齢化による労働人口の減少や若年層の入職者不足などを背景に、人手不足が深刻な課題となっています。現場では技術者や技能者の確保が難しくなり、工期の遅延や受注機会の損失、生産性の低下といった影響も懸念されています。
そのため、多くの建設会社がDXの推進やICT施工の導入、働き方改革、人材育成・採用強化など、さまざまな対策に取り組んでいるケースが多いです。
本記事では、建設業界の人手不足の現状や主な原因を解説するとともに、各社が実践している具体的な取り組み事例を紹介します。人手不足への対応策を検討している建設会社の担当者や、業界の最新動向を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
(1)ゼネコン・建設業界の人手不足の深刻な現状と推移

建設業界では、人手不足が年々深刻化しています。少子高齢化による労働人口の減少に加え、就業者の高齢化や若年入職者の減少が重なり、現場を支える人材の確保が大きな課題です。
また、建設投資は一定水準を維持している一方で、人手不足を理由に受注を見送るケースや、工期の長期化、人手不足倒産も増加しています。
ここでは、国の統計データをもとに建設業界の現状と今後の見通しを解説します。
建設業の人手不足の現状と今後の予測
建設業は、日本の産業のなかでも特に人手不足が深刻な業界です。
国土交通省や国会資料によると、2022年時点の建設業就業者数は約479万人で、1997年頃のピーク時と比較すると約3割減少しています。一方で、55歳以上の就業者は全体の約35.9%を占める一方、29歳以下は約11.7%にとどまり、高齢化と若手不足が同時に進行しているのが現状です。
さらに、建設需要は今後も維持されると予測されています。高度経済成長期に整備された道路や橋梁、上下水道などのインフラ更新に加え、防災・減災工事や再開発事業なども継続するためです。その一方で、生産年齢人口は減少が続く見込みであり、人材確保は今後さらに難しくなると考えられています。

就業者数の推移と深刻化する「建設業の2030年問題」
建設業では「2030年問題」と呼ばれる人材不足への懸念が高まっています。
現在、多くの熟練技能者が50代後半から60代となっており、2030年前後には大量退職が見込まれています。一方で、若年層の入職者数は十分とはいえず、技術やノウハウの継承が大きな課題です。
受注案件があっても施工管理者や技能者を確保できず、対応できる工事件数が限られるケースも増えています。
また、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。長時間労働の是正が進む一方で、従来と同じ工事量を少ない労働時間で対応する必要があり、人材不足を補うためにはDXやICT施工、生産性向上への取り組みが欠かせない状況です。
受注はあるが着工できない?人手不足倒産の急増傾向
建設業では、人手不足によって現場運営への影響が広がっています。
国土交通省が実施している「建設労働需給調査」では、多くの建設職種で技能労働者の不足が続いており、地域や職種によっては労働者の確保が困難な状況が確認されています。施工体制の確保が難しくなることで、工期への影響や受注体制の見直しが必要になるケースもあります。
また、国土交通省は建設業の担い手不足を重要な課題として位置付けており、建設DXやICT施工、BIM/CIMの活用による生産性向上を推進しています。限られた人員でも施工品質を維持しながら工事を進められる体制づくりが、今後ますます重要になると考えられます。
(参照元:https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/chojou/rodo.htm?utm_source=chatgpt.com)
(2)建設業界の人手不足はなぜ起きる?根本的な原因と課題

建設業界の人手不足は、一時的な採用難だけが原因ではありません。就業者の高齢化や若年層の入職者減少、働き方への価値観の変化、さらには技術継承の問題など、複数の課題が重なり合って深刻化しています。
ここでは、建設業界で人手不足が続く主な原因と、業界全体が抱える課題について解説します。
建設業界の高齢化と若手不足・早期離職の実態

建設業では、ベテランの退職が進む一方で、若手人材の確保と定着が大きな課題となっています。
国土交通省によると、建設業は他産業と比較して55歳以上の就業者割合が高く、今後も多くの熟練技能者が定年や引退を迎える見込みです。一方で、新卒・若手の入職者数は十分とはいえず、人材の世代交代が思うように進んでいません。
また、若年層は入職しても早期離職するケースが少なくありません。実際の仕事内容と入社前のイメージとのギャップや、体力的な負担、人間関係への不安などが離職理由として挙げられています。
そのため、採用人数を増やすだけでなく、教育体制やキャリア形成の仕組みを整え、長く働ける職場環境を構築することが重要です。
長時間労働や休日の少なさによる「ゼネコン離れ」の背景
建設業界では、働き方に対するイメージも人材不足の一因となっています。
工事は天候や工期の影響を受けやすく、工程の遅れを取り戻すために休日出勤や残業が発生することもあります。近年は週休2日制の導入や時間外労働の上限規制など働き方改革が進んでいますが、「忙しい」「休みが少ない」という印象は根強いといえるかもしれません。
特に若年層は、給与だけでなくワークライフバランスを重視する傾向があります。そのため、休日制度の充実やICT施工による業務効率化、現場とバックオフィス双方の負担軽減など、働きやすい環境づくりが企業の採用力向上にもつながると考えられています。
技能労働者の不足とベテランから若手への技術継承の課題
建設業では、人材不足とともに「技術を継承する人材が不足している」ことも大きな課題です。
建設工事では、施工品質や安全管理を支える高度な技能や経験が求められます。しかし、熟練技能者の高齢化が進むなかで、十分な指導期間を確保できないまま退職を迎えるケースも増えています。その結果、現場で培われたノウハウや判断力が次世代へ受け継がれにくくなっているのが難点といえるでしょう。
近年は、施工管理アプリやBIM、デジタルマニュアル、動画教材などを活用し、技術継承を効率化する企業も増えています。しかし、デジタルツールだけで技能を完全に引き継ぐことは難しく、OJTと組み合わせた教育体制の整備や、若手が継続して成長できる環境づくりが今後ますます重要になるでしょう。
(3)人手不足解消に向けた国土交通省・国の施策と法規制の影響

建設業界の人手不足を解消するため、国土交通省をはじめとする関係省庁は、働き方改革や生産性向上、人材育成を柱としたさまざまな施策を進めています。2024年4月には時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、従来の働き方を見直す転換点となりました。また、技能者の処遇改善やキャリア形成を目的とした制度整備も進められています。ここでは、建設業界に影響を与えている主な制度や国の取り組みを紹介します。
建設業界の働き方改革と2024年問題のその後の影響
2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。
これまで建設業は、労働基準法における時間外労働の上限規制の適用が猶予されていました。しかし、2024年4月以降は原則として時間外労働が年720時間以内、休日労働を含めた複数月平均80時間以内などの規制が適用されています(一部の災害復旧・復興事業を除く)。
この制度により、長時間労働の是正が進む一方で、限られた労働時間の中で工事を進める必要が生じています。そのため、施工計画の見直しやICT施工の導入、発注者を含めた適正工期の確保など、生産性向上を前提とした取り組みがこれまで以上に重要です。
(参照元:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html)
建設業界の人手不足に対する国土交通省の取り組み
国土交通省は、人手不足の解消に向けて「担い手3法」などを活用し、処遇改善や生産性向上を推進しています。
2024年には建設業法等が改正され、技能者の適正な賃金確保や価格転嫁の促進、働き方改革への対応が強化されました。また、公共工事では適正な工期設定や週休2日工事の拡大、ICT施工の普及などを通じて、建設現場の労働環境改善が進められています。
さらに、国土交通省は「i-Construction 2.0」を推進し、ICT建機やドローン、3次元設計データ、AIなどを活用した建設DXを後押ししているようです。これにより、省人化や施工の効率化、安全性の向上を図り、限られた人員でも工事を進められる体制づくりを目指しています。
(参照元:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000176.html)
建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入目的と現状
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者一人ひとりの資格や就業履歴を登録・蓄積するための仕組みです。
従来の建設業では、経験年数や保有資格が現場ごとに管理されることが多く、技能や実績を客観的に評価しにくいという課題がありました。CCUSでは、技能者の資格取得や就業履歴をデータとして管理することで、能力に応じた処遇改善や人材育成につなげることを目的としています。
国土交通省は公共工事での活用を進めるほか、民間工事への普及も推進しています。CCUSの活用が進むことで、技能者のキャリアが「見える化」され、適切な評価や賃金水準の向上、若手人材が将来設計を描きやすい環境づくりにつながることが期待されているようです。
(参照元:https://www.ccus.jp/)
(4)他社はどう動いている?建設業の人手不足対策・具体例

建設業界では、人手不足を解消するために、採用活動の強化だけでなく、労働環境の改善や外国人材の受け入れ、建設DXの推進など、さまざまな取り組みが進められています。実際に多くの建設会社では、それぞれの課題に応じた施策を導入し、人材の確保や生産性向上につなげています。
ここでは、実際の企業事例をもとに代表的な取り組みを紹介していくので、参考にしてみてください。
若手人材・建設人材を確保するための処遇改善と労働環境の刷新
ある建設会社では、若手社員の定着率向上を目的に、働き方改革と人材育成を一体的に進めています。
具体的には、現場業務のデジタル化による残業時間の削減や、有給休暇取得の促進、資格取得支援制度の充実などを実施しました。また、社員のスキルや経験を可視化し、それぞれに合わせた育成計画を立てることで、将来のキャリアを描きやすい環境を整えています。処遇改善だけでなく、「働き続けたい」と思える職場づくりを重視している点が特徴です。
労働環境を改善すれば、若手人材の確保だけでなく、離職率の低下も狙えます。継続的に働いてもらえる環境を作り上げれば、企業としての評判も向上できるでしょう。
(参照元:https://www.obayashi.co.jp/sustainability/employee/hrm.html)
技能実習・特定技能制度を活用した外国人材の受け入れ体制
ある建設会社では、外国人材の受け入れを単なる人材確保ではなく、人材育成の一環として位置付けています。
受け入れ前に日本語や建設技術の研修を実施するほか、入社後も生活面のサポートや定期的な面談を行い、安心して働ける環境を作り上げました。また、資格取得支援やキャリアアップ制度を整備することで、長期的に活躍できる人材の育成を目指しています。このような取り組みにより、外国人材の定着率向上につなげています。
外国人材の受け入れ体制ができれば、人材不足の改善にも大きくつながるでしょう。研修体制も一緒に充実させれば、人材レベルの向上にも期待できます。
(参照元:https://www.konoike.net/sustainability/people/diversity/)
建設現場の人手不足を解消する「建設DX」とICT・省人化の導入
ある総合建設会社では、人手不足への対応として、ICTやデジタル技術を積極的に導入しています。
ドローンを活用した測量や3次元データによる施工管理、AIを用いた画像解析などを組み合わせることで、これまで人手を要していた業務を効率化しました。また、クラウドを活用した情報共有や遠隔臨場にも対応し、現場と事務所間の移動や書類作成の負担を軽減しています。これにより、限られた人員でも高品質な施工を実現できる体制づくりを進めています。
これからもデジタル化は進んでいくと考えられるため、より効率的な業務改善が期待できるでしょう。
(参照元:https://www.shimz.co.jp/digital-strategy/)
IT サポートスタッフ派遣サービス(若年層無期派遣)の活用
ある大手ゼネコンでは、建設現場のデジタル化や労働力不足解消のため、IT サポートを行う外部人材の活用を行っています。現場にツールを導入したが、現状の業務で手一杯で、操作方法を覚える時間がなく、現場に浸透しないといった課題に対し、事務作業+IT サポートを行う外部人材を活用することで、社員の方の業務負担軽減と建設DXを進めています。
当社の提供するIT サポートスタッフ派遣サービス(若年層無期派遣)では、当社のスタッフが現場のデジタル化支援だけではなく、図面修正や安全書類・議事録・見積作成などの事務作業を行い、社員の方をノンコア業務から解放し、本来の仕事に集中できる環境づくりの一環を担っています。業界についての研修やOAスキル研修も当社で行い、即戦力となる人材のご提案を行っています。ITサポートスタッフを現場に配置することで、現場の業務改善だけではなく、DX部門や情報システム部門と現場の架け橋となり、全社的なIT化、DX推進の一助となっています。
(5)まとめ:建設業の人手不足解消は「採用・環境・デジタル」の三本柱で

建設業界の人手不足は、少子高齢化や若年層の入職者減少、働き方の変化など、複数の要因が重なって生じている構造的な課題です。そのため、採用活動を強化するだけでは根本的な解決は難しく、「採用」「労働環境の改善」「デジタル化」の三本柱をバランスよく進めることが重要です。
実際に、多くの建設会社では処遇改善や週休2日制の推進による人材確保、外国人材の受け入れ、建設DXやICT施工の導入による省人化・生産性向上など、多角的な取り組みを進めています。また、国土交通省も働き方改革やCCUSの普及、i-Construction 2.0などを通じて、業界全体の生産性向上を後押ししています。
今後も建設需要が見込まれる一方で、人材不足は継続すると想定できるでしょう。企業が持続的に成長していくためには、人材を「増やす」取り組みと、限られた人員でも効率よく現場を運営できる仕組みづくりを並行して進めることが欠かせません。自社の課題に合わせて採用戦略や働き方改革、DXを積極的に取り入れ、人手不足に強い組織づくりを目指しましょう。
紙の資料のデータ化は外注、建設現場でのITサポートは派遣活用、専門職は人材紹介で確保するといったように、自社の課題に合わせて複数の手段を組み合わせている企業では、建設DXや業務効率化が進んでいる印象です。
当社では人材派遣・人材紹介・業務受託を行っていますので、お気軽にご相談ください。
【出典】
出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」
出典:国土交通省「建設労働需給調査結果(令和8年5月調査)」
出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務) 」
出典:国土交通省「建設業法、入契法の改正について」
出典:国土交通省「建設キャリアアップシステム(CCUS)」
出典:大林組「人材マネジメントの取り組み」
出典:KONOIKE「ダイバーシティ」
出典:清水建設「シミズのDX 「超建設」によるデジタルゼネコンの進化|清水建設」
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