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建設業の人手不足の現状と原因、実行すべき具体的な対策

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建設業界では、深刻な人手不足が長年の課題となっています。高齢化による熟練人材の引退や若年層の入職減少に加え、2024年から本格化した時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)により、人材確保と現場運営の難易度は一層高まっているのが現状です。
その結果、工期遅延や受注機会の損失、現場負担の増大といった経営リスクを抱える企業も少なくありません。本記事では、建設業における人手不足の最新の現状と主な原因を整理したうえで、今すぐ実行すべき具体的な対策を分かりやすく解説します。

(1)深刻化する建設業の人手不足の現状

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建設業界では、慢性的な人手不足が年々深刻化しています。技能者の高齢化が進む一方で、若年層の入職は伸び悩み、現場を支えてきた熟練人材の大量離職が目前に迫っているのが危険視されている状態です。
さらに、時間外労働の上限規制が適用され、一人あたりの労働時間に頼った従来の現場運営は限界を迎えつつあります。その結果、工期の長期化や受注制限、現場負担の増大などの課題が山積みとなっているのが現状です。
建設業の人手不足による課題について、どのような状況なのか詳しく解説します。

 

1.データで見る危機的状況:「総数減少」と「高齢化」の二重苦

建設業界の人手不足は、「労働力が足りない」だけではなく、就業者数の長期的な減少と極端な高齢化という二つの構造的な課題が浮き彫りになります。これらは、業界の将来が危うくなり、今後の技術継承や生産性改善を進めるうえで避けて通れない現実です。
ここでは、最新統計をもとに「総数減少」と「高齢化」の危機的な状況について、詳しく解説します。


  〇ピーク時から約3割減:就業者数の激減(1997年比)

建設業の就業者数は、1997年の約685万人をピークに長期的に減少しています。国勢調査や労働力調査など複数の統計を集計した資料によれば、ピーク時比で約30%近く減少しています。
これは労働力の縮小を示すだけでなく、現場での実務を担う人数が大幅に減っている構造的な人手不足を意味するため、建設業の将来が懸念される内容となっています。


  〇「29歳以下」は1割強:極端な高齢化が進む年齢構成

建設業の年齢構成は、他産業と比較しても高齢化が著しく進んでいます。国交省の統計などを基にした集計では、55歳以上の従事者が35.5%を占める一方で、29歳以下の若年層はわずか12%程度にとどまっていると、データでまとめられています。
これは、技能や知識の世代継承という面でも深刻な課題です。今後、さらに高齢化が進むと予想されるため、若年層の就業者獲得が重要視されています。

 

2.他産業への人材流出:高い離職率と「選ばれない」現実

建設業では、若年層の入職率が他産業に比べても低く、加えて離職の傾向が続いています。建設業に対する正社員不足の実態調査でも、多くの企業が「人手不足」を訴えているのが現状です。
これにより、他産業に比べても建設業が労働者に「選ばれにくい」状況が続き、人材の流出・循環の悪さが人手不足を一段と深刻化させています。

  

(2)建設業の人手不足の原因

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建設業の人手不足は、景気変動や一時的な採用難だけで生じている問題ではありません。就業者数の減少や高齢化といった構造的な要因に加え、長時間労働や休日の少なさ、賃金水準への不満、業界イメージの固定化など、複数の課題が考えられます。さらに、若年層の価値観の変化や他産業との人材獲得競争の激化も、人材が定着しにくい状況を生み出していると想定されるでしょう。
ここでは、建設業で人手不足が慢性化している背景を整理し、現場や経営にどのような影響を与えているのかを分かりやすく解説します。

 

1.構造的な低賃金:根深い「重層下請構造」の弊害

建設業の人手不足を深刻化させている要因の一つに、賃金水準の伸び悩みがあります。これは「給料が低い」という単純な問題ではなく、発注から現場までお金の流れが分断されやすい重層的な下請け構造が、労働コストの増加を抑えている可能性があるようです。
こうした構造は、労働者の処遇改善を阻み、若年層や技術者の定着を妨げる要因の一つとされています。ここでは、下請構造がどのように賃金に影響しているのかを具体的に解説していきましょう。


   〇利益が現場まで届かない仕組み

建設業界では、元請け→下請け→さらなる下請けという重層的な取引構造が一般的です。この構造では、元請けが受注した工事金額からまず元請けの利益が差し引かれ、残った額が下請けへと支払われます。
さらにその下でも同様に利益が積み上げられるため、労働者への賃金原資として回る金額が相対的に抑えられる傾向があるようです。こうした利益の「途中抜き」の構造が、現場で働く職人や技能労働者の賃金改善の妨げになっている可能性があります。
重層下請構造を根本的に解決しない限り、現場の低賃金問題が解決されるのは難しいでしょう。


  〇全産業平均を下回る給与水準と「週休2日」の壁

建設業の賃金水準は、全産業平均と比較して必ずしも大きく優れているわけではありません。国土交通省などの指標では、建設業の年収は全産業平均を下回る傾向にあり、その伸び率も緩やかです。
たとえば、賃金構造基本統計調査にもとづいた国交省推計では、全産業の平均年収(約494万円)に対して建設業の平均年収は約466万円程度にとどまるとの推計があります。

また、建設業は他産業と比べて「週休2日」といった働き方が普及しにくく、休日数が少ないのも賃金・労働条件の魅力を下げる要因です。長時間労働に見合うだけの賃金や待遇が得られないという認識は、若年層の就業意欲や定着率を低下させる一因にもなっています。


2.時代に取り残された「3K」イメージと若者離れ

建設業界は長年にわたり「3K(きつい・汚い・危険)」といった印象を持っている人もいるといわれています。この3Kの考え方があると、若者離れを加速させる可能性があるでしょう。

また、企業側・従業員側双方の調査でも、3Kイメージが人手不足の最大要因に挙げられており、待遇や働き方改革の必要性が高まっているようです。ここでは、3Kイメージがどのように若年層の就業意欲に影響しているか、具体的な構造を見ていきます。

  〇「きつい・汚い・危険」+「給料が安い」

建設業が抱えるイメージとして、従来の「3K(きつい・汚い・危険)」に加えて、現代では「給料が安い」「休暇が少ない」といった要素も結びつけられがちです。これらは若い世代にとって働きたい職業と認識されにくい背景になっています。
国土交通省が推進する「新3K」では、賃金改善や休日取得の拡充、将来の希望形成が重要とされ、従来の3Kイメージ払拭の鍵です。

さらに、業界関係者の調査では、経営者・従業員の双方が人手不足の最大要因として「建設業界の3Kイメージ」を挙げており、それが採用・定着の阻害要因となっている可能性があります。
若者が仕事を選ぶ際に重視する条件として給与や働き方の柔軟性が上位にある現代において、これらのイメージは採用競争力を低下させる可能性があるでしょう。


  〇キャリアパスの不透明さと将来不安

建設業界では、現場作業が中心となる一方で、明確なキャリアパスの提示が十分でないと感じられるケースがあります。全体の構造として「どのようにスキルアップし、将来どのようなキャリアを描けるのか」が伝わりにくい現状があり、若年層にとって「長く働き続けることのメリット」が見えにくいという問題があるようです。

この点は、現場技能者としての成長だけでなく、将来的な管理職・専門技術職への道筋や待遇改善と結びつきます。そのため、若者の不安感を軽減するのが、人材確保・定着につながる重要な要素となるでしょう。

対策として、建設業界は近年、技能評価制度(例:建設キャリアアップシステム)や教育・研修の強化を通じてキャリア形成支援を進めていますが、これらを対外的に訴求していくのが、今後は重要となってくるでしょう。

 

3.人材供給の「質」と「量」の限界

導入した施策は実施して終わりではなく、効果検証を行いながら改善していくことが不可欠です。作業時間の削減量、工期短縮の有無、ミスの減少など、目標に対して成果が出ているかを評価し、改善点を見直します。

PDCAを継続して回していくことで、業務効率化が一過性の取り組みではなく、組織の文化として定着し、より高い生産性が実現できるでしょう。

  〇団塊世代引退による「技術継承」の断絶(質の低下)

建設業の就業者の高齢化は他産業と比べても顕著で、業界全体の人材構成に大きな影響を及ぼしています。国土交通省などの統計によると、建設業従事者のうち55歳以上が35.5%を占める一方、29歳以下は12%に留まるというデータが公表されました。

このような年齢構成は、熟練技能者が短期間で大量に退職しやすい状況を示しており、若手が十分に存在しないため技術の世代継承が進みにくくなっています。熟練工による経験的なノウハウや安全管理能力などは、現場の安全性・品質に直結する重要な資産ですが、これらが円滑に受け継がれないことは質の低下につながりかねません。

技能の継承は時間を要するだけでなく、教育・訓練体系の整備も必要であり、この構造的なギャップが人手不足の核心的な課題となっています。


  〇頼みの綱である「外国人材」確保の難航(量の不足)

もう一つの供給面の柱として、外国人労働者の活用が注目されています。実際、日本の建設業で働く外国人材は年々増加しており、2024年時点では17.8万人と前年比で22.7%増と大幅に伸びました。

しかし、これは建設業全体の就業者数に占める割合が3.73%にとどまっているという現実も反映しています。また、厚生労働省の「外国人雇用実態調査」でも、建設業に従事する外国人は約15.2万人で前年から増加しているものの、依然として全体の人手不足を補うには十分とはいえません。

外国人材確保には、言語・文化・生活環境の調整、在留資格や受け入れ制度の制約、他産業との獲得競争といった多くのハードルが存在します。とくに技能実習や特定技能といった在留制度は一定の数の受け入れを可能にしているものの、専門的な技術者や長期的なキャリア形成が進みにくいといった課題も多いです。

こうした制約が、量的な人材供給の増加を制限する要因となっています。


 

(3)人手不足のリスクと影響

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建設業における人手不足は、施工品質の低下や安全リスクの増大、工期遅延による信頼低下など、企業経営そのものに影響する深刻なリスクを引き起こします。さらに、人手が足りない状況での無理な現場運営は、既存従業員の負担増加や離職を招き、人手不足をさらに加速させる悪循環に陥りがちです。

ここでは、建設業における人手不足が企業や社会にどのような影響を及ぼすのかを整理し、見過ごされがちなリスクについても詳しく解説します。


1.「2024年問題」と「2030年問題」のダブルパンチ

建設業における人手不足は、施工品質の低下や安全リスクの増大、工期遅延による信頼低下など、企業経営そのものに影響する深刻なリスクを引き起こします。さらに、人手が足りない状況での無理な現場運営は、既存従業員の負担増加や離職を招き、人手不足をさらに加速させる悪循環に陥りがちです。

ここでは、建設業における人手不足が企業や社会にどのような影響を及ぼすのかを整理し、見過ごされがちなリスクについても詳しく解説します。

建設業界を取り巻く環境には、短期的な労働条件規制の強化(2024年問題)と、中長期的な人口動態変化による担い手供給の崩壊リスク(2030年問題)という二つの大きな問題がかかわってきます。

これらは「人手不足」の延長ではなく、労働時間や働き方に関する制度対応と、熟練者の引退・若手不足という構造的な変化が重なって引き起こされる問題です。

ここでは、建設業の現場と経営に影響を及ぼすこれらの問題について解説します。

  〇残業規制による「施工余力」の強制的な縮小(2024/2025年)

2024年4月から、建設業でも一般産業と同様に時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。これは、これまで長時間労働に依存していた現場運営にとって大きな制度転換です。

具体的には、原則として時間外労働を月45時間・年360時間以内に制限する枠組みが導入され、例外的に合意された特別条項でも年720時間までが上限となっています。これに対応できていない企業が多く、現場の施工余力や人員運用の変更を迫られている状況です。

時間外労働の制限は、施工計画や収益性に影響するだけでなく、従来の「長時間労働でカバーする」やり方が通用しなくなります。業界全体で対応が急がれているものの、猶予期間終了後の本格適用は現場への負担が大きくなると想定されるでしょう。

   〇団塊世代の大量引退による技術継承の断絶(2030年)

中長期的には、人口構造の変化が建設業の担い手供給に深刻な影響を与えます。現在の建設業就業者の35.5%が55歳以上であり、29歳以下はわずか12%にとどまるという年齢構成は、若手が少なくベテランに依存する現状を示しました。

2030年ごろには、団塊の世代を中心とする大量引退が進み、熟練技術者の退職が相次ぐと予想されます。これにより、熟練技能や現場マネジメント能力といった「質」の高い人材が不足し、技術継承の断絶や現場力の低下が心配です。

さらに、独自試算では2030年までに建設技術者が約4.5万人、技能工が約17.9万人不足する可能性があるとの見方もあり、量的な担い手不足も顕在化しつつあります。

 

2.企業経営を圧迫する「負のスパイラル」

人手不足が深刻化する建設業では、労働力不足→コスト増→収益悪化→経営リスクの拡大という循環が企業を圧迫するケースがあります。人件費や外注費の高騰が利益率を押し下げ、施工能力が限界に達すると受注機会の損失が生じ、資金繰りが悪化するといった「負のスパイラル」が問題視されているようです。

これらのリスクは、中小企業を中心に倒産や経営破綻につながる可能性が高まっており、単なる一時的な課題ではなく、構造的な経営リスクとして認識されつつあります。ここでは、建設業が直面する主要な経営リスクを具体的に解説します。

   〇人件費・外注費の高騰による利益率の低下

建設業では職人や現場監督などの人材確保が困難になるにつれて、人件費が上昇しています。帝国データバンクの調査では、2024年の建設業の現金給与総額が前年同月比で約10%上昇したと発表されました。

全産業平均を大きく上回る伸びとなっており、人件費高騰が経営を圧迫していると指摘されています。また、人材不足感は建設業全体で69.8%と高水準で推移しているとデータを公表しました。

こうした状況下では、原材料費に加え労働コストの増加が利益率を圧迫し、価格転嫁が困難な下請業者や中小企業では採算割れ案件が増加するリスクが高まっています。

   〇施工能力の限界と「機会損失」の拡大

人手不足は施工能力の限界を引き起こし、工期遅延や受注抑制といった形で機会損失につながる可能性があります。現場で必要な人員が確保できないと、元請け企業は一定以上の工事を受注できないケースがあり、本来得られるはずの収益機会を逃してしまうかもしれません。

これにより、短期的な売上だけでなく、顧客からの信頼低下や今後の受注競争力低下といった長期的な影響も懸念されます。人手不足が倒産要因の一つとなる可能性もあり、施工能力低下が企業経営に影響を与える可能性も少なくありません。

   〇資金繰りの悪化と「黒字倒産」のリスク

利益率の悪化や受注機会の損失は、企業の資金繰りにも深刻な影響をもたらします。帝国データバンクの調査では、建設業の倒産件数が4年連続で増加しており、2025年上半期だけで986件もの倒産が発生するなど、資金繰り悪化により事業継続を断念する企業が増えました。

また、2024年の「人手不足倒産」は過去最多を更新し、その多くが募集難や人件費高騰を背景としています。建設業が抱える経営課題は、赤字経営だけでなく、黒字でも資金繰りが回らなくなる「黒字倒産」の可能性も出てきました。

実際に、「人手不足による外注費の高騰で資金繰りが改善できなかった」とされる倒産事例も報告されています。

 

3.生活基盤への脅威

人口減少や労働力不足が進むなか、建設業の担い手不足は業界だけの問題ではなく、私たちの日常生活の安心・安全にも影響するリスクとなっています。実際、高度経済成長期に整備された道路・橋梁・河川・上下水道などの社会インフラは築後50年以上を経過し、老朽化が急速に進んでいるといわれているようです。

維持・更新や災害対応を担う人手が不足すれば、生活基盤そのものが脆弱化するおそれがあります。ここでは、人手不足がインフラ維持管理や災害復旧に与える影響を具体的なデータとともに解説します。

  〇インフラ老朽化対策の遅れと維持管理の危機

日本の社会インフラの多くは、高度経済成長期に集中して整備され、その寿命が近づきつつあります。国交省などの推計では、2040年ごろまでに道路・橋梁・トンネル・港湾施設などの多くが築後50年を超える見込みであると公表されました。たとえば、道路や橋については2030年ごろまでに維持管理需要が増大すると見込まれており、老朽化したインフラを放置すれば交通網や物流インフラの機能低下を招きかねません。

しかし、建設業の人手不足が深刻化するなか、定期点検・修繕・更新の現場で人材確保が困難な状況が生まれており、維持管理対応そのものが遅れる可能性があります。インフラの劣化が進むなかで、十分な技術者や施工者が確保できないと、社会の基盤機能そのものを弱体化させるかもしれません。

   〇災害時の復旧対応力の低下

日本は地震・台風・豪雨など自然災害が多発する国です。こうした災害時に重要なのが、迅速なインフラ復旧対応能力ですが、人手不足はこの能力そのものを損なう可能性があります。

建設業の正社員不足や技能者不足がインフラ対応力を低下させるなか、たとえば上下水道や道路の損傷に対する点検・修理が遅れると、生活や経済活動に直結する支障が長期化するリスクがあるでしょう。

老朽化データと合わせて考えると、復旧のための現場作業員・技術者が不足している状況は、災害後のインフラ回復力を弱める可能性が高まっています。

人手不足は単なる人材不足ではなく、生活の安全・安心を支えるインフラ機能の弱体化として表れる可能性があるのです。

(4)現場で実行できる具体的な建設業の人手不足対策

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建設業の人手不足は、制度改革や業界全体の課題として語られがちですが、現場レベルで今すぐ実行できる対策を積み重ねるのも重要です。採用環境や人口動態を短期間で変えるのは難しいですが、働き方・業務の進め方・人材の活かし方を見直せば、人手不足の影響を抑える余地はあります。

ここでは、建設現場や中小建設会社でも取り組みやすい視点に絞り、即効性と実行性の高い人手不足対策を具体的に解説します。

【対策1】DXによる生産性向上と省人化

建設業の人手不足対策として、デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上と省人化は現場の負担を大きく軽減する有効な手段です。デジタルツールの導入だけでなく、業務プロセスそのものを見直し、ドローンやロボットなどの先端技術を活用して作業効率を高める必要があります。

実際に、数日かかっていた業務が数時間で完了するケースも報告されており、建設DXは人手不足を補完するだけでなく、安全性・品質・働き方改革にも寄与する改革として注目されています。


   〇建設DXの推進(ドローン・ロボット活用)

建設現場では、ドローンやロボットの活用によって、従来は人手で行っていた作業の効率化や省力化が進んでいます。たとえば、ドローンを飛行させて広範囲の測量や進捗状況の撮影を行い、これまで複数名で何日も要していた調査作業を短時間で完了できる事例も増えているようです。

また、現場で資材運搬や重機操作をロボットで一部自動化する取り組みも進んでおり、人の作業負担を軽減しつつ生産性を向上させる効果が報告されています。

海外の事例では、ロボット導入により従来の数倍の効率化を実現したという声もあるなど、先進技術を活用した省人化は今後の標準的な現場のあり方として期待されています。


   〇施工管理アプリ・ICTツールの導入

施工管理の現場では、スマートフォンやタブレットを使った施工管理アプリやICTツールの導入が進んでいます。これらは、図面や工程情報、進捗データをデジタルで一元管理し、関係者間でリアルタイムに共有できるため、伝達ミスや書類作成の手間を大幅に削減が可能です。

こうしたICTツールは、国交省が推進する「i-Construction」やその進化版「i-Construction 2.0」といった取り組みの中でも重要視されており、施工データのデジタル化・活用が現場の生産性向上と働き方改革の両面に貢献するとされています。

実際に導入例では、3Dデータを活用してこれまで数日かかっていた計画作業を数時間で完了できるようになったケースなどもあるようです。建設現場のデジタル化が、省人化と品質向上の両立に役立っています。

 

【対策2】「選ばれる会社」になるための労働環境改善

建設業が「選ばれる会社」になるためには、求人を出すだけではなく、働く人が長く安心して働ける環境を整備する必要があります。とくに労働時間・休日制度、賃金・待遇、福利厚生などの改善は、入職希望者や在職者の満足度・定着率を高めるうえで大きな効果が期待できるでしょう。

近年の働き方改革や法規制の変化も後押しとなり、実際の現場でも週休2日制や処遇改善に取り組む企業が増えてきています。ここでは、労働環境改善によって人手不足の流れを変える具体策を解説します。


  〇週休2日制の導入と長時間労働の是正

建設業界では、従来から他産業に比べて労働時間が長く休日が少ないという特徴がありました。厚生労働省の統計によると、建設業の2022年の1か月平均総実労働時間は163.5時間と、全産業平均(136.1時間)を約27時間上回っています。

また、建設業で「完全な週休2日制(4週8休)」を実現している割合は、19.5%にとどまり、多くの現場が週休2日未満の状態が続いています。

このため、国土交通省や業界団体は週休2日制の推進を進めており、週休2日工事の拡大や休日取得にかかる費用計上の支援などが実施されました。

週休2日制の導入は、従業員のワーク・ライフ・バランス改善や健康確保につながり、離職率低下や採用力の強化によい影響を与えると期待されています。また、休日や労働時間が整備されれば、建設業のイメージ改善にもつながり、他産業との競争力向上にも効果が期待できるでしょう。


   〇処遇改善(賃上げ)と福利厚生の充実

賃金や福利厚生の充実は、働き手にとって重要な要素であり、処遇改善による魅力アップは人材確保のきっかけになります。実際に建設業では賃金引上げが実施されるケースが増えており、2024年の春季労使交渉でも複数の企業がベースアップや若年層の賃金引き上げを行っているようです。

複数の大手建設会社では総合職の月額ベースアップや若年層の給与引き上げが行われており、全体で賃金を約5%程度引き上げる動きが報告されています。

賃金アップに加えて、福利厚生面の充実(例えば社会保険や休暇制度の整備、健康管理支援、家族手当など)の強化も、従業員の安心感を高めるうえで効果的です。

待遇面が改善されれば、離職率の低下・中途採用者の応募増加・企業ブランド価値の向上が期待でき、人手不足対策としての効果が期待できます。

 

【対策3】戦略的な人材確保と定着支援

建設業の人手不足を解消するには、人材の「確保」と「定着」を戦略的に進めるのが不可欠です。即戦力や未経験者を対象とした採用チャネルの多様化、技能や経験を可視化・評価する仕組みの活用、資格取得支援などを整えれば、入職希望者だけでなく在職者の定着・モチベーション向上にもつながります。

ここでは、建設現場・企業が実行しやすい人材戦略のポイントを解説します。


   〇即戦力・未経験層への多角的な中途採用

人材不足を補うためにも建設業では、経験者だけでなく未経験層や異業種からの転職者を採用するなどして、人材を確保する対策が必要です。建設労働者育成支援事業などでは、離職者・新卒者・未就職者を対象とした職業訓練が全国で実施されており、基礎知識・技能の習得や資格取得を含む一連の支援が提供されています。
このような訓練を経て入職する人材は、従来の求人市場にいない層を建設業界に引き込みやすいです。

また、企業側が積極的に未経験者に門戸を開けば、現場で即戦力として育てる採用パターンを確立できます。たとえば、教育・研修を充実させた採用プログラムを提示すれば、応募者の増加や選考通過率の向上につながるなどの効果が期待できるでしょう。


   〇建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用による評価の見える化

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者一人ひとりの保有資格・講習履歴・就業実績などを登録・蓄積し、評価につなげる仕組みです。システムに登録された情報をもとに能力が評価されるため、処遇改善やキャリアパス提示に役立ちます。
CCUSは技能レベルに応じた評価や処遇の改善を図り、若い世代に将来のキャリアパスを見える化する方法としてもおすすめの制度でもあります。これにより、技能者は自らの市場価値や成長の道筋を把握しやすくなり、定着率の向上やモチベーションアップにつながるかもしれません。


   〇資格取得支援

資格取得支援は、従業員のスキルアップとキャリア形成を後押しし、本人の市場価値と業務遂行能力を高めるための重要な施策です。多くの建設会社や業界団体では、資格取得のための講習・試験費用を会社が支援する制度や、社内での勉強会・講習会を提供する取り組みがあります。
これにより、従業員は資格取得にかかる費用や負担を抑えつつスキルアップでき、企業は現場力の強化につなげられるでしょう。

また、国や自治体レベルでも、資格取得支援を目的とした助成金制度が用意されており、企業が従業員の資格取得支援を行う際の経済的負担を軽減できます。こうした制度を積極的に活用すれば、人材育成と定着支援の両面で効果が期待できるでしょう。

 

【対策4】コア業務に集中するための「BPO(外注)活用」

人手不足が続く建設業において、社内の限られた人材を最大限に活かすには、ノンコア業務を外部に委託する「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の活用が有効です。

BPOは人件費削減だけでなく、専門性の高い外部リソースを活用できるので、業務品質向上に期待できます。また、現場担当者の負担が軽減できるため、施工・管理などのコア業務に集中できる環境に整えるきっかけにもなるでしょう。ここでは、BPO活用の具体例を紹介します。


   〇BIM・図面作成のアウトソーシング

BIM(Building Information Modeling)や施工図といった設計・図面作成業務は、高度な専門スキルが求められる一方で、社内で対応するには人材・時間・コストの負担が大きい分野です。

最近では、建設企業向けにBIM/CIMアウトソーシングサービスが提供されており、設計モデル作成から施工前工程シミュレーション・ファミリ作成まで幅広い業務を外部委託できるようになっています。

これにより、社内で専門人材を抱えなくても高度な設計支援が受けられ、社内スタッフは施工管理・顧客対応といったコア業務に注力できます。また、外注によって設計コストや内部リソースの消耗を抑えつつ、品質管理・納期管理の負担を軽減する効果も期待できるでしょう。
当社でもBIM外注サービスを展開しており、意匠・施工・設備分野でサービスを提供しています。

   〇施工管理の負担を減らす「議事録・書類作成代行」

施工管理の現場では、施工計画書や安全書類、各種報告書といった書類作成が多く、現場担当者の時間を圧迫しがちです。このような定型的な文書・事務作業は、BPOとして外部の専門スタッフに委託する方法で、業務効率化が図れます。

当社では音声・映像データを送るだけで指定フォーマットでの議事録が完成する議事録代行サービスを展開しており、多くの企業様からご好評をいただいています。

また、施工計画書や安全書類の作成支援機能を備えたBPOツールも登場しており、必要な書類の取込み→自動作成→出力という一連の流れを効率化すれば、負担も軽減できるでしょう。

   〇バックオフィス業務の外注化

請求書発行、給与計算、データ入力、資料整理などの定型的な事務作業を外部に委託すれば、社内スタッフの負担を削減し、人材不足による業務遅延や過重労働のリスクが低減できるでしょう。
外注化により、担当者が事務処理ばかりに追われず、労務管理や人材育成などのコア業務に時間を割けるようになります。

 

【対策5】柔軟な組織を作る「人材派遣の活用」

人手不足の建設業では、自社だけで全ての人材を抱えるのではなく、必要な時に必要な人材を外部から柔軟に確保する「人材派遣の活用」が有効です。派遣スタッフを戦力として組み込めば、繁忙期の急な人手不足や専門性の高い業務への対応が容易になるでしょう。

とくに即戦力となる技術者や施工管理スタッフは、派遣によって短期間で確保できるケースが増えており、現場の負担軽減にもつながっています。ここでは、建設業向け派遣活用の具体例を紹介します。


   〇即戦力となる「外国人エンジニア派遣」の活用

建設業界では、専門性の高い技術者や施工管理技士などの即戦力が不足しがちです。このため、外国人エンジニア派遣サービスを活用する動きが広がっています。
外国人エンジニア派遣は、専門知識・スキルを持った人材を柔軟に確保する手段であり、専門職の不足を補完しながら現場力の底上げにつながる対策として注目されています。
当社の外国籍エンジニア派遣は、エンジニアを正社員雇用して派遣しており、土木分野やIT分野を専攻した人材をご紹介しています。専門知識・経験がある人材をご提案しているため、即戦力として各企業で活躍しています。


   〇繁閑の波に対応する施工管理技士・事務派遣

建設プロジェクトは季節や受注状況によって繁忙期と閑散期の波があり、社員だけでは繁忙期の対応が困難なケースが少なくありません。こうしたリズムに対応するため、施工管理技士や現場事務スタッフの派遣活用が効果的です。
人材派遣サービスを提供する事業者に登録されたスタッフから、必要な時だけ経験者を派遣すれば、突発的な人手不足や繁忙期の負担を軽減できます。
派遣を活用すれば、固定人件費を抑制しながら人材の過不足を調整でき、会社全体の労働力需給バランスを柔軟に保てます。
当社はオフィスワークだけではなく、CADオペレーターやITエンジニアなど幅広い職種の人材のご提案をおこなっています。


(5)まとめ

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建設業の人手不足は、就業者数の減少や高齢化の進行、2024年・2030年問題といった構造的要因により、年々深刻さを増しています。低賃金や長時間労働、3Kイメージによる若者離れも重なり、人材確保が難しい状況です。

このままでは施工能力の低下や利益率悪化、インフラ維持への影響といったリスクが避けられません。こうした課題に対しては、DXによる生産性向上、労働環境の改善による定着率向上、戦略的な採用・育成、BPOや人材派遣の活用など、現場で実行できる対策を組み合わせるのが重要です。

自社の実情に合った施策を継続的に進めるのが、人手不足時代を乗り越える今後の鍵となるでしょう。

当社は人材派遣だけではなく、人材紹介や業務受託、DXツール販売などご要望に合わせたご提案が可能です。
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