建設業のAI活用事例|削減効果と自社への当てはめ方
建設業では、資料作成や社内情報の検索から、設計支援、施工状況の把握まで、さまざまな業務でAIが活用されています。自社への導入を検討するときは、他社が使っているツールや削減率に加え、「どの作業を、どのような条件で効率化したのか」を確認することが大切です。
本記事では、建設業のAI活用事例を業務のフェーズに沿って紹介します。そのうえで、事例に示された効果の読み方と、自社で対象業務を選び、導入を進める手順を解説します。
建設業でAI活用が進む背景

建設業では、人手不足への対応と、生産性向上に向けた業務の見直しが求められています。複数の作業が同時に進む建設現場では、施工に加えて進捗管理や写真整理、日報作成なども発生します。人手不足が深刻な現場ほど、限られた人員で品質と安全を確保できるよう、作業の進め方を見直すことが重要です。
国土交通省の資料によると、建設業の就業者数は2024年平均で477万人でした。ピークだった1997年平均の685万人から、約30%減少しています。就業者の高齢化も進んでおり、技術を次の世代に引き継ぐとともに、少ない人数でも業務を継続できる体制づくりが課題です。[1]
また、働き方改革の一環として、2024年4月からは建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。時間外労働は原則として月45時間・年360時間が上限となり、残業時間を増やすことで業務量に対応するにも限界があります。[2]
国土交通省は「i-Construction 2.0」で、建設生産プロセスのオートメーション化を推進しています。デジタル技術を活用し、少ない人数でも安全に働ける、生産性の高い建設現場の実現を目指す取り組みです。[17]
こうした状況のなかで、繰り返し発生する作業を効率化する手段としてAIが注目されています。書類の下書きや情報の検索、記録の整理などを支援できれば、担当者が判断や調整に使える時間を確保しやすくなります。
AI導入のメリットを考える際は、次の3点に分けると、自社で目指す成果が明確になります。
- 業務効率化: 繰り返し発生する入力や検索を補助し、担当者が技術的な判断や顧客対応に集中できる時間を増やす。
- 品質の安定: 標準の書式や確認項目に沿って下書き・照合を行い、人による確認と組み合わせて、
担当者が替わっても必要な品質水準を保つ。 - 技術継承 : ベテランが残した技術資料や過去の対応例を探しやすくし、若手が実務を学ぶ際の参考情報として活用する。
技術継承を目的とする場合も、AIの回答を熟練者が確認できる体制を組み合わせることが大切です。社内ノウハウを参照する仕組みや安全管理での使い方は、後述の事例で紹介します。
資料作成・情報収集・集計分析・チェックでの活用
自社の業務と照らし合わせやすいように、日常的な事務・管理業務での活用場面を4つに整理します。現場とバックオフィスの業務フローに沿って、どの処理をAIで補助するかを考えます。
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活用場面 |
対象となる作業の例 |
人が確認する主な内容
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|---|---|---|
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資料作成 |
提案資料、報告書、議事録などの下書き |
事実関係、数値、提出先の要件 |
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情報収集 |
社内文書や過去の案件資料からの情報検索 |
参照元、情報の更新日、今回の案件への適合性 |
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集計分析 |
入札情報やアンケート結果などの整理・分析 |
集計条件、計算結果、分析の妥当性 |
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チェック |
書類の記載内容の照合、確認が必要な箇所の抽出 |
検出結果の正否、見落としの有無 |
これは、対象業務を探すための分類です。生成AIだけで全工程を処理できるとは限らず、文字を読み取るAI-OCRや、集計・照合用のソフトなどを組み合わせる場合もあります。設計案の生成や画像による点検も、建設業におけるAI活用のひとつです。
ChatGPTなどの汎用AIを使う場面では、文書の要約や企画書のドラフト作成が候補になります。社内向けの利用環境を整えた事例として、鹿島建設は専用の対話型AI「Kajima ChatAI」を紹介しており、用途には企画書作成、議事録、英語・中国語の翻訳などが挙げられています。[16]
建設業界のAI活用はどこまで進んでいるか
AIの活用状況を見るときは、企業としての活用を調べたのか、従業員個人の利用を調べたのかを区別する必要があります。
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調査 |
調査対象・確認していること |
建設業に関する結果
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|---|---|---|
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帝国データバンク 「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」 |
企業が生成AIを業務で活用しているかを調査し、業種別に集計 |
建設では26.4%が活用していると回答 |
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インフォマート 「建設業のDXとAI活用に関する実態調査」(2026年公表) |
建設業に従事する会社員1,040人に、生成AIの利用状況を調査 |
33.1%が利用していると回答 |
出典:帝国データバンク、インフォマート。[3][4]
調査対象や設問が異なるため、この2つの割合を単純に比較したり、平均して業界全体の活用率としたりすることはできません。
企業規模による違いもあります。帝国データバンクの全業種を対象とした集計では、生成AIの活用率は大企業46.5%、中小企業32.4%、小規模企業28.0%でした。これは建設業だけの数値ではありませんが、導入事例を読む際に、企業規模や運用体制の違いにも目を向けるきっかけになります。[3]
建設業のAI活用事例を業務フェーズ別に見る
事例を自社の業務に当てはめるには、まず業務の流れを整理すると、活用を検討する箇所を見つけやすくなります。ここでは、入札・提案、調査・設計・計画、施工・納品の3つに分けます。
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業務フェーズ |
活用を検討できる業務の例 |
|---|---|
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入札・提案 |
提案資料の下書き、過去の実績や技術資料の検索、入札情報の整理 |
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調査・設計・計画 |
既存建物の調査、外観デザイン案の検討、構造設計、参考資料の収集 |
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施工・納品 |
施工状況の記録、点検・検査の支援、危険予知活動、報告書や議事録の作成 |
同じ作業が複数のフェーズにまたがることもあります。たとえば、社内資料の検索や議事録作成は、提案段階でも施工段階でも発生します。フェーズの分類を目安にしながら、実際に担当者が行っている作業まで具体化して考えましょう。
入札・提案:資料の下書きと社内情報の検索
入札や提案の準備では、過去の実績を探し、案件の条件に合わせて資料をまとめる作業が発生します。AIの活用を検討できるのは、こうした情報収集や下書きの工程です。
安藤ハザマは、書類のたたき台作成や資料の要約などに文章生成AIを利用したうえで、専門知識や自社ノウハウに関する回答精度を課題として挙げています。そこで、施工計画書や技術文書などの社内情報を参照できる生成AIを開発し、2024年に社内運用の開始を公表しました。回答の根拠となる文書を示す機能も備えています。[5]
この取り組みは、提案資料の作成支援を検討する際にも参考になります。たとえば、過去の類似案件を探して必要な情報を整理する工程をAIに補助させ、担当者が今回の条件に合っているかを確認する使い方が考えられます。
自社で試す際は、文章の作成時間だけでなく、元資料を探す時間や、出力内容を確認・修正する時間も含めて効果を測ります。
調査・設計・計画:設計検討や建物調査の支援
1.設計案の検討と構造設計
設計業務では、複数の案を比較したり、過去の設計結果を参照したりする工程にAIが活用されています。
大林組が2022年に公表した「AiCorb」は、スケッチや3次元モデルから建物の外観デザイン案を生成する技術です。同社は、顧客の要望を視覚的な案として示すことで、設計初期のイメージのすり合わせにかかる時間と手間を大幅に減らせると説明しています。同発表には、削減時間や削減率の具体的な数値は示されていません。[6]
竹中工務店は、20年以上蓄積した構造設計結果を学習した「構造設計AIシステム」を開発し、2023年に全面導入を公表しました。類似する建物の探索や部材断面の推定などを通じて、構造設計の検討を支援する仕組みです。同発表では計算作業の時間削減が説明されていますが、削減幅の数値は示されていません。[7]
こうした事例では、「案をつくる」「類似事例を探す」「計算する」のうち、どの工程が支援されるのかに注目します。自社の設計業務で時間がかかっている工程と照らし合わせることで、検討する技術を絞り込めます。
2.画像解析による既存建物の外壁調査
既存建物の調査では、撮影した画像をAIで解析する使い方があります。
竹中工務店が2021年に実用化を公表した「スマートタイルセイバー」は、ドローンで撮影した赤外線画像から、外壁タイルの浮きを判定するシステムです。高層マンションの外壁調査への適用が紹介されており、調査の省人化や高所作業の負担軽減につながる仕組みとして説明されています。[8]
自社で同様の技術を検討するときは、対象となる建物や撮影条件、AIが判定できる範囲を確認します。撮影の準備や判定後の確認まで含めて、従来の調査方法との違いを見ることが必要です。
施工・納品:施工状況の記録と確認作業の支援
施工管理では、現場の状況を記録し、予定と実績を照らし合わせる作業にAIが使われています。
清水建設は2026年、カメラ映像から施工状況を判定する「AI施工管理システム」を公表しました。山留め杭工事の実証実験では、重機などの建設機械の配置や配管の接続状態を捉え、削孔やH鋼挿入などの作業段階を推定しています。工程管理ソフトやBIM/CIMツールと連携し、記録・巡回業務や工程変更時の負担を軽減する取り組みです。同社は今後の検討事項として、四足歩行ロボットなどによる移動撮影・データ収集も挙げています。[9]
蓄積した施工実績を予定と比較し、工程の遅れに応じた計画の見直しや資機材手配に使うことも想定されています。自社への応用を考える際は、工程の最適化に必要なデータが何か、担当者がどの判断に使うかを具体化するとよいでしょう。[9]
安全管理の分野では、鹿島建設の「鹿島セーフナビ(K-SAFE)」があります。同社が保有する約5,000件と、厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載された約64,000件の災害事例をAIで解析し、類似作業で起きた災害の傾向を提示する仕組みです。作業前の危険予知活動で、注意すべきリスクや対策を検討するための情報提供に使われます。[15]
こうした安全管理への活用では、管理者がAIの示した過去事例と当日の作業条件を照らし合わせ、必要な対策を決める運用が重要です。人員や機械の配置、作業環境が異なる場合もあるため、現場での確認と組み合わせて使います。
点検・検査でも画像解析が検討されています。NTTコムウェアと清水建設は2019年、鉄筋継手の外観画像を使うAI検査の実証実験を発表しました。この発表は実証開始に関するもので、判定精度や作業時間、操作性を検証する計画が示されています。導入後の削減実績とは区別して読む必要があります。[10]
現場での効果を考える際は、AIの解析にかかる時間だけでなく、カメラの設置、撮影、データの送信、結果の確認に必要な作業も確認します。これらを含めて、現場担当者の負担がどれだけ変わるかを判断します。
AI-OCRで帳票の入力・確認を効率化する
紙の帳票や手書き書類を扱う業務では、AI-OCRによる文字の読み取りが活用候補になります。読み取った情報をデータとして扱うことができれば、転記や照合作業の一部を効率化できます。
ただし、文字を読み取ることと、書類の内容が正しいかを判断することは別の工程です。AI-OCRで読み取った結果に、入力ルールに基づく照合や人による確認を組み合わせ、業務として使える状態に整えます。
AIに任せる処理と、人が確認する範囲を決める
導入時には、次のように作業を分けておくと、役割が明確になります。
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工程 |
主な作業
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|---|---|
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読み取り |
AI-OCRで帳票から文字や数値を抽出する |
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一次チェック |
別途設定した照合ルールやシステムで、空欄・形式の違い・不一致などを検出する |
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確認・修正 |
担当者が読み取り結果や検出箇所を確認し、必要な修正を行う |
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最終確認 |
業務上の重要度に応じて、担当者が成果物を確認する |
AIが指摘した箇所だけを確認すれば十分とは限りません。見落としの影響が大きい項目は全件確認するなど、確認方法をあらかじめ決めておきます。
また、点検写真から異常を見つける処理や、図面の寸法・部材を照合する処理には、文字の読み取りとは異なる仕組みが必要になる場合があります。「AI-OCRで何を読み取り、どのシステムで何を確認するのか」を具体化することが大切です。
削減効果は、書類の種類と作業範囲をそろえて読む
AI-OCRの効果は、対象書類や処理する工程によって異なります。参考として、異なる業種の2つの事例を見てみましょう。
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事例 |
公表された時間の変化 |
読む際の注意点
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|---|---|---|
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産業廃棄物処理業者の紙マニフェスト入力 |
1件57秒から50.2秒へ短縮 |
学術論文に掲載された計測事例。画像化や確認・修正を含む入力時間で、非定型の入力には手作業が残る |
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広島銀行の住宅ローン仮審査申込書の入力 |
1件25分から8分へ短縮 |
AI insideが公表した導入事例。 |
出典:環境科学会誌、AI inside。[11][12]
前者は産業廃棄物処理業者、後者は銀行での事例です。書類の種類、確認項目、自動化した範囲が異なるため、削減率の大小だけで比較することはできません。
自社で試す際は、実際に使っている書類を選び、読み取り、確認、修正、転記までの合計時間を測ります。様式がそろっていて、処理件数の多い書類は、効果を検証する候補になります。
議事録作成を効率化するAI活用と外注の選び方
議事録作成には、録音の聞き返し、発言内容の整理、専門用語や決定事項の確認など、複数の作業が伴います。効率化を考える際は、どの作業に時間がかかっているのかを確認しましょう。

AIを使って文字起こしや要約を補助する
音声認識と生成AIを組み合わせると、文字起こしや要約の下書きを支援できます。担当者は、専門用語、発言者、数値、決定事項などを確認し、納品・共有できる形に整えます。
外国語が含まれる会議では、対応言語や翻訳機能の有無に加え、建設用語、数量、担当者名が正しく伝わるかも確認します。決定事項や作業指示については、原文や音声と照合できる担当者を決めておくと、確認手順が明確になります。
ラーゲイトは、AI議事録に関する資料で、1会議あたり約2時間の工数削減という試算を公表しています。これは一定の作業時間を前提とした試算であり、建設業での実測結果を示すものではありません。[13]
自社での効果は、会議の長さ、音声の状態、専門用語の多さ、求める議事録の形式によって変わります。AIの出力後にどれだけ確認・修正が必要かまで含めて評価します。
社内での作成・修正が負担になる場合は、代行も検討する
議事録作成に人手を割けない場合は、外部の担当者に作成を任せる方法もあります。比較する際は、社内に残る確認作業、納品形式、納期、費用を確認します。
ヒューマンリソシアの議事録代行サービスでは、会議の音声・動画データをもとに、建設業界の経験者が議事録を作成します。専門用語への対応や指定形式での納品についても対応しています。[14]
AIツールの利用と作成代行は、社内に残る作業の範囲が異なります。自社で作成する場合の負担と、外部に任せた場合の費用・確認作業を比べ、業務に合った方法を選びましょう。
建設業でAI導入を検討するときの3つの判断軸
他社の事例を参考に導入を検討するときは、「対象業務と精度」「削減効果と費用」「確認体制と情報管理」の3つを確認します。
1.対象業務に合っていて、必要な精度を満たせるか
まず、自社のどの作業を支援したいのかを明確にします。同じ資料作成でも、文章の下書きと、専門的な根拠を示す資料の作成では、求める機能や確認事項が異なります。
過去の案件や社内ルールを踏まえた回答が必要なら、その情報をAIが参照できる仕組みも検討します。安藤ハザマの事例のように、自社の文書を参照できるようにする取り組みは、その一例です。[5]
社内文書を参照させる場合は、最新版の図面や改訂後のルールが対象になっているか、古い文書と区別できるかも確認します。最適な手段は、求める回答の専門性、社内データの状態、運用を担える体制によって変わります。
対象とする書類やデータを使って試し、正確さに加えて、担当者が確認・修正する負担も確かめます。
2.削減効果が、導入・運用にかかる費用に見合うか
事例に数字が示されている場合は、まず実測値か試算値かを確認します。そのうえで、導入企業、提供企業、研究機関など、誰がどのような方法で公表したものかを確かめます。提供企業が公表した数字であっても実測値の場合もあるため、数値の性質と情報の出所は分けて読みます。
費用は、初期設定や開発費だけでなく、利用料、データ整備、操作の習得、確認・修正、保守に必要な負担まで含めて見積もります。公表事例に記載がない項目は、提供企業に確認します。
削減できた時間は、人件費単価を掛けることで金額に換算できます。ただし、この金額がそのまま支出の減少になるとは限りません。担当者が他の業務に使える時間が増える効果と、実際に削減できる費用を分けて考えます。
経営面では、生まれた余力をどう使うかも検討します。自社の強みを生かした提案や新たなビジネスの企画に充てるなら、提案件数、受注率、案件ごとの収益などを確認します。残業代や外注費といったコストの変化も合わせて測ることで、時間短縮がどのような経済的な効果につながったかを評価できます。
3.確認体制と情報管理のルールを整えられるか
AIの出力を誰が確認し、誤りが見つかった場合にどう修正するかを決めます。ツールの操作担当と、内容の妥当性を判断する担当が異なる場合は、それぞれの役割を明確にしておきます。
情報セキュリティの面では、個人情報を含む顧客データや未公開の図面などを扱えるか、データがどこに保存されるか、学習に利用されるかを確認します。情報漏洩のリスクを抑えるため、利用するサービスの条件に合わせて、入力可能な情報、アクセス権限、保存期間、社内での利用手順を定めます。
建設業のAI導入で失敗しないための注意点
AI導入では、対象業務の選び方に加え、導入後の運用と検証の進め方が重要です。次の3つを確認しておきましょう。
ツール導入後の運用担当を決める
ツールを導入しても、データの準備や出力の確認を担う人が決まっていなければ、利用が定着しにくくなります。
操作を教える担当、内容を確認する担当、問題が起きたときの相談先を決めます。社内で担うのが難しい作業は、外部支援や業務委託を組み合わせる方法も検討できます。
既存システムとの連携や自社向けの調整が必要な場合は、IT部門やエンジニアも交えて役割を決めます。現場担当者が業務上の要件を伝え、技術担当者がデータの接続や設定、保守を支える体制にすると、導入後の対応先が明確になります。
負担の大きい業務から、改善の目的を決める
使いたいツールだけを先に決めると、解決したい課題よりも、そのツールが処理しやすい作業を優先してしまうことがあります。「提案資料を探す時間を減らしたい」「帳票の転記を減らしたい」など、改善したい作業と目的を先に明確にします。そのうえで、AI、既存システムの改善、外注などを比較します。
一部の業務で検証してから展開する
書類の様式や確認方法は、部署や現場によって異なります。ある部署で使えた方法が、別の部署でも同じように機能するとは限りません。まずは対象を絞って試し、効果と運用上の問題を確認します。展開先で必要になるデータや手順の違いも整理したうえで、利用範囲を広げます。
建設業でAI導入を進める3つのステップ

ステップ1:業務を洗い出し、試す対象を選ぶ
入札・提案、調査・設計・計画、施工・納品の各フェーズで、時間がかかっている作業を洗い出します。候補は、次の5項目で整理すると比較しやすくなります。
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確認項目 |
書き出す内容
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|---|---|
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作業内容 |
何を入力し、どのような処理をして、何を作成するか |
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工数・頻度 |
1件あたりの作業時間と、月間の処理件数 |
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担当人数・役割 |
作業者と確認者、それぞれの担当範囲 |
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導入のしやすさ |
書類の様式、データの状態、既存システムとの接続など |
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主要業務への影響 |
その作業によって、判断・調整・顧客対応などの時間がどれだけ圧迫されているか |
負担が大きいことに加え、対象を限定でき、結果を確認しやすい業務を最初の候補にします。たとえば、特定の様式の帳票入力や、定例会議の議事録作成などです。
ステップ2:評価方法を決め、小さく試す
試す前に、現在の作業時間、確認・修正にかかる時間、誤りの発生状況を記録します。そのうえで、対象の書類や会議、利用する担当者、検証期間を決めます。
評価する指標は、作業時間だけに偏らないようにします。たとえば、帳票入力なら「1件あたりの合計時間」「読み取り結果の修正件数」「重要項目の見落とし」を確認します。
試験導入のコツは、対象件数や書類の難易度などの条件をそろえて、従来の方法と比較することです。AIに指示するプロンプトや出力形式も記録しておくと、うまくいった条件を他の担当者へ共有しやすくなります。
専門用語や例外的な処理が含まれるデータも試し、通常の業務で必要な品質を保てるかを確かめます。
ステップ3:効果と費用を評価し、展開範囲を決める
導入前後で同じ作業範囲を比較し、準備や確認・修正を含めて、時間がどれだけ変わったかを測ります。
計算例として、月100件の作業があり、1件あたりの合計時間が30分から20分に短縮したと仮定すると、月の削減時間は約16.7時間((30分 - 20分) × 100件 / 月)です。実際の評価では、自社で測った時間と処理件数を使って算出します。
その結果を利用料や運用負担と照らし合わせ、継続するか、対象を広げるかを判断します。期待した効果が出なかった場合は、対象業務、データの整備方法、確認手順を見直し、必要に応じて別の手段を検討します。
建設業のAI活用についてよくある質問
費用はどう判断すればよいですか。
初期費用と継続費用を分け、データ整備や確認・修正にかかる社内工数も含めて見積もります。金額が公開されていない場合は、対象業務、処理件数、利用人数などを伝えて見積もりを依頼します。削減効果は、他社事例の数字をそのまま使わず、自社で試した結果から見込みます。
どの業務から始めればよいですか。
繰り返し発生し、作業時間が把握でき、処理結果を確認しやすい業務が候補になります。書類の下書き、社内情報の検索、定型帳票の入力などから、自社で負担の大きいものを選びます。
現場で使ってもらうには、何が必要ですか。
操作方法に加え、どの作業がどれだけ楽になるのかを担当者と共有します。実際に使う人に検証へ参加してもらい、準備や修正の負担も確認しましょう。利用開始後の相談先と、出力内容を確認する担当を決めておくことも必要です。
まとめ|AI活用事例を、自社の業務改善につなげる
建設業のAI活用は、資料作成や情報検索、設計支援、施工状況の把握など、幅広い業務に広がっています。他社の事例を読む際は、自社で負担になっている作業と、事例で効率化された工程が対応しているかを確認しましょう。
導入を検討するうえでは、必要な精度、確認にかかる工数、導入・運用費用まで含めて評価することが重要です。まずは対象を絞って試し、自社の条件で効果を確かめたうえで、利用範囲を広げていきます。
ヒューマンリソシアでは、建設業向けの人材派遣や議事録作成代行、BIM業務の外注など、業務に応じた支援を提供しています。対象業務や必要な支援については、お問い合わせ窓口からご相談ください。
出典
- 国土交通省資料(九州地方整備局掲載)。総務省「労働力調査」を基にした建設業就業者数・年齢構成の資料。
- 厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」。
- 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」(2026年5月14日公表)。
- インフォマート「建設業のDXとAI活用に関する実態調査」(2026年公表)。
- 安藤ハザマ「建設分野に特化した生成AIの社内運用を開始」(2024年1月11日)。
- 大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化する『AiCorb®』を開発」(2022年3月22日)。
- 竹中工務店「構造設計をクリエイティブに『構造設計AIシステム』を開発」(2023年9月19日)。
- 竹中工務店「ドローン撮影の赤外線画像から、AIが建物の外壁タイルの浮きを自動判定するシステム『スマートタイルセイバー』を開発し実用化」(2021年6月8日)。
- 清水建設「建設現場のAXを加速させる『AI施工管理システム』を構築」(2026年5月20日)。
- NTTコムウェア「AIを活用した工事検査の効率化及び品質向上」(2019年11月21日)。
- 秋山浩之ほか「AI-OCRとRPAを活用した紙マニフェストの入力作業効率化に関する計測事例」『環境科学会誌』35巻5号、310–314頁(2022年)。
- AI inside「広島銀行がDX Suite導入により、住宅ローン仮審査申込書のデータ入力業務を効率化」(2025年6月25日)。
- Ragate「【506名調査】生成AI議事録の活用率は28.1%、1会議あたり約2時間の工数削減が可能に」(2026年3月6日)。
- ヒューマンリソシア「建設業向け議事録代行サービス」。
- 鹿島建設「建設工事の危険予知活動にAIを導入」(2021年10月14日)。
- 鹿島建設『KAJIMAダイジェスト』2023年10月号「当社グループ専用対話型AI『Kajima ChatAI』」。
- 国土交通省「i-Construction 2.0」(2024年4月)。
著者:ヒューマンリソシア編集チーム
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