建設現場では近年、効率化や人手不足の解消を目的に「IT化」への期待が高まっています。
しかし、他業界と比べるとデジタル化の進展は遅く、依然として紙の図面や口頭での指示が中心となっている現場も少なくありません。
なぜ建設現場のIT化が進まないのでしょうか。
本記事では、建設現場におけるIT化が遅れている背景やその原因、そして解決に向けた課題をわかりやすく解説します。
- 【目次】
１．建設現場でIT化が遅れている5つの理由とは？ - ２．建設現場のIT化がもたらす5つの大きなメリット【建設DXの恩恵】
- ３．建設現場のIT化を成功させるための6つのステップ【実践ポイント】
- ４．【具体例】建設現場でのIT活用事例
- ５．まとめ
建設現場でIT化が遅れている5つの理由とは？
建設業界では、少子高齢化や人手不足といった課題を背景に、DX（デジタルトランスフォーメーション）への関心が高まっています。
しかし、実際の建設現場ではIT導入が思うように進まず、他業種と比べてもIT化が遅れているのが現状です。
その背景には、業界特有の慣習や環境、コスト構造など、複数の要因が複雑に関係しています。ここでは、建設現場でIT化が遅れている主な5つの理由を解説していくので、IT化を検討されている人は参考にしてみてください。
１．長年の慣習とアナログ文化が根付く現場
建設業界では、紙の図面や手書きの日報、口頭での指示といったアナログな手法が今も多く残っています。長年にわたって築かれてきた職人文化や、現場ごとに異なる独自ルールがIT導入を妨げる要因となるケースが多いです。
とくに「これまでこのやり方で問題なかった」という意識が根強く、新しいツールを導入する際の抵抗感が導入するうえでの課題といえるでしょう。
２．IT人材不足とスキルギャップの深刻さ
建設業界では、現場管理者や職人が中心で、ITスキルを持つ人材が少ないのが現状です。システム導入やデータ活用を推進できる人材が不足しており、ITツールを導入しても「使いこなせない」「操作が難しい」といった問題が生じやすいのが実情といえるでしょう。
また、若手のIT人材を確保するのも難しく、スキルギャップが拡大しています。
３．高額な初期投資と不透明な費用対効果
IT化を進めるには、ソフトウェア導入費や機器購入費、教育コストなど、一定の初期投資が必要です。中小規模の建設会社ではこの負担が重く、導入に踏み切れないケースが多く見られます。
また、建設現場の業務は案件ごとに異なるため、「どの程度効果があるのか」が見えにくく、費用対効果を判断しづらい点もIT化の障壁として考えられるでしょう。
４．建設現場特有の過酷な環境と通信インフラの課題
建設現場は屋外作業が中心で、粉塵や雨風、騒音など過酷な環境が日常的です。タブレットやセンサーなどのIT機器が壊れやすく、安定した通信環境を確保するのも難しい現場も少なくありません。
とくに山間部や地方の現場ではネットワークが不安定で、クラウドシステムの活用が難しいケースもあります。
５．既存システムとの連携性やセキュリティへの不安
建設会社によって使用している業務管理システムやCADソフトはバラバラで、他システムとの連携が難しいという課題があります。新しいITツールを導入しても、既存の仕組みとデータを連携できず、かえって業務が複雑化することもあるでしょう。
また、施工データや設計情報といった機密性の高い情報を扱うため、サイバーセキュリティ面での懸念から導入に慎重になる企業も多く見られます。
建設現場のIT化がもたらす5つの大きなメリット【建設DXの恩恵】
建設現場のIT化が進んでいない企業も多いですが、IT化がもたらすメリットはさまざまあります。うまく活用すれば、業務改善だけでなく、ヒューマンエラーの解消にもつながるでしょう。
ここでは、建設現場のIT化がもたらす5つの代表的なメリットについて解説します。
１．業務効率と生産性を飛躍的に向上
IT化によって、これまで手作業で行っていた工程管理・図面確認・進捗報告などがデジタル化され、作業の重複やミスを大幅に削減できます。クラウド上で情報共有が可能になれば、現場と本社、協力会社間の連携もスムーズにおこなえるでしょう。
これにより、現場作業のスピードが向上し、プロジェクト全体の生産性が大きく向上します。業務効率と生産性の向上が実現できれば、同業他社との競争優位性の確立にもつながるでしょう。
２．コストの大幅削減と無駄の排除
デジタルツールの導入は、資材や人員の無駄を減らす効果もあります。たとえば、BIM（3次元モデルで統合管理する仕組み）を活用すれば、施工前に構造や工程のシミュレーションが可能となり、設計ミスや資材ロスを未然に防ぐことが可能です。
また、ペーパーレス化による印刷費削減や、データ活用による正確な原価管理も実現でき、全体的なコスト削減につながります。
３．労働災害を防ぐ安全性の強化
建設現場では転倒・墜落・機械事故などの労働災害が発生する可能性があります。IT技術を活用すれば、IoTセンサーやドローンによる現場監視、ウェアラブルデバイスによる作業員の動作検知などが可能になり、労働災害の発生を未然に防ぐ体制が整えられるでしょう。
リアルタイムで安全管理をおこなうことで、事故防止の精度が高まり、より安全な職場環境の実現につながります。
４．人手不足解消と「働き方改革」への対応
IT化によって、現場業務の自動化やリモート管理が進めば、少ない人員でも効率的な運営が可能になります。ドローン測量や自動運転建機、AIによる工程最適化などの技術は、熟練作業者の負担を減らすと同時に、若手や未経験者でも活躍できる環境が整えられるでしょう。
結果として、人手不足の緩和や長時間労働の是正、「働き方改革」への対応にもつながります。最先端のIT技術を駆使し、働きやすい環境を整えれば、企業ブランドのイメージアップにもなるでしょう。
５．施工品質の向上と熟練技術の確実な継承
IT化は品質管理にも大きなメリットをもたらします。施工データをデジタルで一元管理することで、過去の事例やノウハウを共有しやすくなり、属人的だった技術や判断の標準化が可能です。
BIMや3Dスキャン技術を活用すれば、施工精度を高めながら、熟練技術者の知識を次世代に継承できます。これにより、品質のばらつきを抑え、安定した高品質な施工が実現できるでしょう。
建設現場のIT化を成功させるための6つのステップ【実践ポイント】
建設業のIT化は、ツールを導入すれば成功するわけではありません。現場の特性を理解し、経営層から現場作業員までが一体となって取り組む必要があります。
とくに、目的の明確化やツール選定、導入後の定着までをしっかりと計画しなければ、意味のあるITツールの導入が実現できない可能性があるのでしょう。
また、導入するツールや事業計画次第では、助成金や補助金が利用できるかもしれません。ただし、時期や自治体によっては、利用できないケースもあるため、事前確認が必要です。
ここでは、建設現場のIT化を成功に導くための6つのステップを、実践的なポイントとともに解説します。
１．IT化の目的と解決したい課題を明確にする
まず重要なのは、「なぜIT化するのか」という目的を明確にすることです。業務効率の改善、人手不足の解消、品質向上、安全管理の強化など、解決したい課題を具体的に洗い出します。
目的が曖昧なまま導入を進めると、ツール選定や運用の方向性がぶれやすく、結果的に定着しません。経営層と現場担当者が共通認識を持つことが成功の第一歩です。
２．小規模な導入から始め、段階的に拡大する
最初から全社的な導入を目指すと、費用負担や現場の混乱が大きくなり、失敗するリスクも高まります。
そのため、課題を明確にした後は、一部の現場や特定業務から小規模に導入し、効果を確認しながら段階的に拡大していくのが理想的です。成功事例を社内で共有すれば、他部署や他現場への展開もスムーズになります。
３．現場の声を吸い上げ、従業員を巻き込む重要性
IT化を進める際は、実際にツールを使う現場スタッフの意見を取り入れることが欠かせません。
現場に合わないシステムを導入すると、かえって作業効率が落ちるケースもあります。
導入前から現場の意見をヒアリングし、テスト導入をおこなえば、従業員の理解と協力を得ながらスムーズに浸透させられるでしょう。
４．自社に最適なITツールの選定と信頼できるパートナー選び
現場の声を実際にヒアリングし、自社の業務内容や現場環境に合ったツールを選ぶ必要があります。多機能すぎるシステムを導入しても使いこなせないことが多いため、「必要な機能に絞る」ことが重要です。
また、導入後もサポートしてくれる信頼できるベンダーやコンサルタントを選べば、トラブル時の対応や改善提案もスムーズにおこなえます。
当社では、RPA（WinActor）をはじめとしたITソリューションの導入・活用によるデジタル化を支援しています。
５．導入後の定着を促す教育・研修と継続的なサポート体制
IT化は導入して終わりではなく、「定着させること」が最大の課題です。従業員が安心して使えるように、操作研修やマニュアル整備をおこない、定期的なフォローアップ体制を整える必要があります。
また、システム更新や機能追加に対応できるよう、継続的に学べる環境を整備することで、長期的な運用が可能です。
当社は、教育事業をバックボーンにもつ総合人材サービス会社です。
RPAをはじめとしたさまざまなソリューションを提供するだけでなく、導入前の業務整理から、活用推進・運用支援、人材育成に至るまで、一貫して貴社に寄り添う伴走型の支援サービスを提供しています。
当社のDXサービスについての詳細はこちらをご覧ください。
６．導入効果を測定し、PDCAサイクルで改善を続ける
最後に、IT化の成果を可視化し、継続的に改善を重ねることも重要です。導入後は「業務時間の短縮」「ミスの減少」「コスト削減」などの指標を設定し、定期的に効果を測定しましょう。
改善点を抽出し、再び計画（Plan）・実行（Do）・評価（Check）・改善（Action）のサイクルを回すことで、IT化の精度と効果が持続的に高まります。
【具体例】建設現場でのIT活用事例
実際に、建設現場でIT技術が活用されている事例があります。生産性向上、業務改善など、さまざまなメリットがあるため、IT活用は建設現場での導入が急務となっているようです。
ここでは、実際の建設現場で導入が進む代表的なIT活用事例を4つ紹介し、その効果やポイントを解説します。
１．タブレット端末を活用した情報共有と施工管理
建設現場でもよく見られるIT技術活用のひとつが、タブレット端末の利用です。タブレット端末から、設計図面や施工手順書をクラウド上で共有することで、現場と事務所の情報伝達がリアルタイムでおこなえるようになりました。
これにより、紙図面の持ち運びや更新の手間が省け、図面の最新版を全員が即座に確認できます。また、写真付きの進捗報告やチェックリストの入力もその場で可能になり、報告作業の効率化やミスの削減につながっているケースが多いです。
２．ウェアラブル端末による作業員の安全管理と効率化
ヘルメットや腕時計型デバイスなどのウェアラブル端末を活用し、作業員の位置情報や体調データをリアルタイムで把握する取り組みも広がっています。たとえば、熱中症リスクの高い現場では、体温や心拍数を自動で測定し、異常があれば管理者にアラートを送るシステムが導入され、作業員のリスクを未然に回避するシステムが導入されているようです。
これにより、危険を未然に防ぐことができるほか、作業員の動線や作業時間の分析によって効率的な配置計画の立案も可能になります。
３．ドローン・自動運転建機による調査・測量と省力化
ドローンを使った空撮や3D測量は、従来の人力測量に比べて大幅な時間短縮とコスト削減を実現しています。高所や危険箇所の調査を安全に行えるほか、取得したデータをBIMや3D CADに連携させ、正確な施工計画の立案も可能です。
また、自動運転建機の導入により、重機操作を遠隔または自動で行う現場も増えており、熟練オペレーターの負担軽減や省人化の推進にもつながっています。
当社ではBIM／CIMエンジニアやITエンジニアを派遣し、現場のIT化の推進をサポートしています。
４．リモート技術（Web会議・遠隔臨場）を活用した業務効率化
近年は、現場と本社・発注者・協力会社をオンラインでつなぐ「遠隔臨場」や「Web会議」が一般化しています。
現場に出向かずとも映像やデータを共有しながら打ち合わせができるため、移動時間や交通費の削減に加え、迅速な意思決定が可能になりました。
とくにコロナ禍以降、国土交通省も遠隔臨場を推進しており、監督業務の効率化や検査の省力化が進んでいます。
まとめ：建設業のIT化で未来を切り拓く
建設現場のIT化は、業務効率化にとどまらず、「安全性の向上」「人手不足の解消」「働き方改革」「品質向上」など、業界全体の持続的な成長を支える鍵となります。
しかし、IT化を成功させるには、現場を理解しながらシステムを運用・サポートできる人材の存在が欠かせません。
ヒューマンリソシアでは、建設業の実務を理解した「事務＋ITサポート」人材をご提案することが可能です。ITツールの導入・運用支援からデータ管理、現場の業務効率化まで、貴社のIT推進を力強くサポートします。
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