建設DX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、大事な一要素である「統合データベースシステム」ことBIM。
このBIMソフトは、2021年現在、日本国内においていくつかの種類が販売されています。BIM導入を検討中で、「定番として使用されているBIMソフトの特徴が知りたい」「各BIMソフトのシェアや今後の動向はどうなのか」などの悩みを抱いている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、いわゆる「定番」のBIMソフトやその機能、BIMソフトの今後の動向について詳細に解説します。BIM導入に際して迷われている方は、ぜひ参考にしてみてください。
BIM(ビム)とは、「Building Information Modeling」を略したもので、建物のコンピューター上に3次元モデルを作成するための「統合データベースシステム」です。
このBIMを使用するには、専用BIMソフトを購入する必要があります。
BIMソフトには基本的な機能として、建物の3次元モデルの作成や閲覧、設計に必要な情報や部材の性能といった属性情報の付加などがあり、平面図や断面図を切り出すことも可能となります。
この3次元化した建物を作成できたり詳細な属性情報を付加できたりすることが、BIMソフト導入の大きなメリットです。
それでは2021年の日本において購入できるBIMソフトには、どのようなものがあるのでしょう。
代表的なBIMソフトは主に5種類。それぞれのソフトは、下記表に記載されているような違いがあります。
名称 | 概要 | 特徴 |
Revit | アメリカの会社が開発したBIMソフト | 建築分野だけでなく土木分野でも活用できる |
ArchiCAD | ハンガリーの会社が作成した世界初のBIMソフト | 3次元オブジェクトが充実しており、世界の建築業界のシェアが高い |
GLOOBE | 日本の会社が開発した日本発のBIMソフト | 日本の建築基準法や設計手法に対応している |
Vectorworks | アメリカの会社が開発した汎用CAD・BIMソフト | 2次元CADから3次元CAD、BIMまでこなせるワンストップな設計ツール |
Tekla Structures | フィンランドの会社が開発したソフト | 世界100カ国で導入実績があり、構造に特化しているソフト |
BIMソフト導入に際しては、企業の用途や状況にあったソフトを選ぶ必要があります。ここでは前項で紹介した、代表的なBIMソフト5つの特徴について具体的に解説します。
Revitはアメリカのオートデスク社が開発したBIMソフト。国内外で高いシェアを誇っています。
このソフトの特徴のひとつは設計から施工、管理まで幅広く対応しており、Revitのソフトだけで、すべての作業に関わるBIMデータ作成が可能なこと。具体的には、ビジュアライゼーション、設計、建築などに関わるBIMデータ作成などがこのソフトひとつで実現できます。
日本国内の設計事務所やゼネコンなどではRevitを導入しているケースが多いのが、その有用性の証と言えるのではないでしょうか。
また、「AutoCAD」などのオートデスク社製の製品との連携も特徴のひとつとして挙げられるでしょう。もし、現在オートデスク社の他製品を使用しているならば、Revitの導入をおすすめします。
Revitの製品プランと価格
名称 | Revit |
価格(税込) | ・1ヶ月 53,900円 ・1年間 427,900円 ・3年間 1,155,000円 |
無料試用版 | あり/30日間 |
開発元 | Autodesk, Inc. |
日本法人 | オートデスク株式会社 |
URL | https://www.autodesk.co.jp/products/revit/overview |
無料体験期間も設定されているため、Revitの体験版をダウンロードし利用してみてはいかがでしょう。
ArchiCADは、ハンガリーのGRAPHISOFT社が開発した世界初のBIMソフト。30年以上に渡ってBIMの使いやすさや機能性などを追求しつづけており、こちらも日本だけでなく世界中で高いシェアを誇っています。
ArchiCADの特徴としては、下記5つが挙げられます。この特徴によって世界中で多くのユーザーに愛用されています。
ArchiCADの製品プランと価格
名称 | ArchiCAD |
価格(税込) | ・ArchiCAD 24 924,000円 ・ArchiCAD 24 Solo 379,500円 |
無料試用版 | あり/30日間 |
開発元 | GRAPHISOFT SE |
日本法人 | グラフィソフトジャパン株式会社 |
URL | https://graphisoft.com/jp/buy-archicad/price |
ArchiCADには廉価版(ArchiCAD Solo)もあるため、導入コストが気になる向きには検討の価値は大いにアリといえるでしょう。
GLOOBE(グローブ)は、日本の企業である福井コンピュータアーキテクト株式会社が開発したBIMソフトです。
このソフトの特徴はなんといっても「日本製」であることに尽きます。
このように日本の規格に対応しているため、日本の建築基準法などに沿ったBIMデータを簡単に作成したい方には、GLOOBEはもっともおすすめのBIMソフトです。
GLOOBEの製品プランと価格
名称 | GLOOBE |
価格(税別) | GLOOBE Architect 基本 650,000円 追加オプション 100,000円~ |
無料試用版 | あり/30日間 |
開発元 | 福井コンピュータアーキテクト株式会社 |
URL | https://www.cadjapan.com/products/items/gloobe/price.html |
GLOOBEも30日間無料で使用できます。体験版でトライしてみてはいかがでしょう。
アメリカのVectorworksが開発した汎用CAD・BIMソフトです。
最大の特徴はコストパフォーマンスの良さ。Vectorworksはさまざまな種類の製品があり、値段も安価なものから高額なものまで幅広くラインナップされています。そのため、「BIMソフトは高額なので導入が難しい……」と感じている方には最適なソフトと言えるかもしれません。
また、2次元CADや3次元CAD、BIMまでワンストップでこなすことが可能で、設計からプレゼンまでこのソフトでできるのも魅力のひとつとして挙げられます。
Vectorworksの製品プランと価格
名称 | Vectorworks |
価格(税込) | ・Vectorworks 2021 スタンドアロン版 通常製品(永続ライセンス)335,500円~579,700円 ・Vectorworks サブスクリプション版 1年間 245,300円~306,350円 ・Vectorworks 2021 ネットワーク版 基本パッケージ(2ライセンス同梱) 671,000円 |
無料試用版 | あり/30日間 |
開発元 | Vectorworks, Inc. (Nemetschek Group) |
国内総販売元 | エーアンドエー株式会社 |
URL | https://www.aanda.co.jp/Vectorworks2021/price.html |
Vectorworksも30日間の体験期間が設定されています。ぜひダウンロードして試してみましょう。
Tekla StructuresはフィンランドにあるTekla社が開発したBIMソフト。世界100カ国以上で導入実績があります。
特徴としては、建物の建設から維持管理に必要なあらゆる構造データを含んだ正確かつ豊富な情報によって、建物の3次元モデルを作成できることです。
Tekla Structuresの製品プランと価格
名称 | Tekla Structures |
価格(税込) | サブスクリプション(1年間)897,000円 ※編集部注:HPに価格の記載がないため(株)トリンブル・ソリューションズ 東京ヘッドオフィスに電話取材にて確認 |
無料体験版 | なし |
開発元 | Tekla / Trimble Solutions Corporation |
日本法人 | 株式会社トリンブル・ソリューションズ |
URL | https://www.tekla.com/jp/products/tekla-structures |
ただ難点としては、これまで紹介したソフトのように体験版の設定がないこと。「一度試して使用感をたしかめたい」と考えている向きにはおすすめしかねるソフトです。
これまで紹介した各BIMソフトのシェアはいったいどうなっているのでしょう?
日経BPコンサルティングの「BIM活用実態調査レポート 2020年版」によれば、設計事務所で使われている各BIMソフトのシェアは……ArchiCADとRevitが二分している状況です(編集部注:複数回答ありなので合計は100%にはならない)。
順位 | 名称 | シェア |
1位 | ArchiCAD | 52.60% |
2位 | Revit | 41.20% |
3位 | Vectorworks | 17.50% |
4位 | GLOOBE | 14.90% |
引用:日経BPコンサルティング「BIM活用実態調査レポート 2020年版」
いっぽうで、ゼネコンで使用されているBIMソフトのシェアは以下の通り。Revitが上回っていますが、やはり二大勢力と言えるでしょう。
順位 | 名称 | シェア |
1位 | Revit | 65.00% |
2位 | ArchiCAD | 57.50% |
3位 | Vectorworks | 13.30% |
4位 | GLOOBE | 12.50% |
引用:日経BPコンサルティング「BIM活用実態調査レポート 2020年版」
上記からわかるようにBIMソフトのシェアはRevitやArchiCADがほとんどを占めています。おそらく、今後もこの傾向が続く可能性は高いでしょう。
ただし、日本製のGLOOBEに関しては、日本の規格や建築基準法にマッチしているため、BIM普及拡大につれてじわじわとシェアを伸ばしていくことも予想されます。
ただし、これらのBIMソフトを導入したとして、それを扱える人材は、現状のところ足りていません。約8割の企業が「BIM人材が不足している」と回答している状況なのです。
今後BIMソフト導入が拡大していくのにもかかわらず、そのBIMソフトを扱える肝心の人材は枯渇していく一方……BIM人材争奪戦がさらに激化していく可能性はきわめて高いと言えるでしょう。
まずはBIMソフトの特徴をよく理解し、自社の状況にもっとも適したソフトを選ぶこと。そしてそのソフトを扱える人材を確実に確保できる体制を構築すること。それこそがBIM導入の道筋であり、建設DXへ進むための第一歩ではないでしょうか。
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