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【ウェビナーレポート・後編】日建連 杉浦氏がやさしく教えるBIM/CIM導入成功のための人材活用術(2021/9/14開催)

編集部 2021年10月01日

前編では、BIM/CIMの最新の動向と普及状況、そしてBIM/CIM導入がもたらすメリットなどについてお話いただきました。引き続き後編をお届けします。

前編から読む


建設HR編集部(以下、編集部)

さて、BIM/CIM活用については、やはり人材・人財の話になってくると思うんですが、BIM/CIM人材は不足気味とも言われておりますし、最大限成果を出すための人材獲得・育成についての事例があればと。

杉浦伸哉氏(以下、杉浦)

はい、なるほどね。ここに3つ挙げましたけれど……。

資料p23

これもBIM/CIM推進委員会で公開されている資料ですが、例えばここにひとつのプロジェクトがあります。

建物の経営建物系はひとつのプロジェクトは1工事みたいなのが多いですけれど、インフラ系はどちらかというとちょっと幅広くて1プロジェクト複数工事、工事は分割で発注されるものが結構あるんです。

資料p24

実はこういった1プロジェクトだけれど複数で工事管理をしようとすると、管理者あるいは関わってくる人が非常に多岐にわたる。すると全体統括的にコントロールできる、それが見れる人、ツールを上手に活用できる人などがやはり必要になってくるんですよね。

これを「統合モデル」とインフラ系でもよく言ったりしますし、それはひとつのプロジェクトでの統合モデルなのか、1プロジェクトでの全体を把握する統合モデルなのか、使い方は別々ですが、こういった全体を把握できる能力、あるいはマネジメントできる力が、プロジェクトを進めていく時には非常に重要だと思います。

s09

それと先ほど言いましたように、「上手にモデルを作ってくれる人」もやっぱり必要。
なので、国土交通省の方で――タイトルが「教育」になっているから、なんだかすごく高尚に見えますけれどね――受注者も発注者も、実際はどういうことに気をつけるべきか、どういうことが理解できるか、どういうことをやらなければならないかというようなことを体系立ててまとめてくれている「教育要領(案)」というものがあります。

こういったものを少しみなさん見ていただいて、「自分はこの入門編はわかるぞ、でも初級編はちょっとまだ難しいところがあるかな」とか「中級編まではわかるけど、上級編は難しいな」など、こういった体系立てられている資料をもとに、みなさんにおかれましても、ちょっとお考えになっていただいたりするといいのではないかと思います。

資料p25

「単なるBIMモデラー」なのか「BIMを活用する人」なのか。これは先ほどから何回も言っていますし、言っておきたいんですけれど、どちらがいいとか悪いとかじゃなく、どちらも大事なんです。どちらもいないとうまく回らない。

ひとりで全部できる人なんて、本当にごく限られたわずかな人しかいませんからね。
プロジェクトをみんなでを回していく、あるいは育て上げていく、作っていくことで言うととどちらも必要なので、お互いがお互いのことをリスペクトしながら、自分たちでどこまでのことがわかるのか、わかるようにできるのかを、学んでいくことが非常に重要かなと思います。

本当は、自分たちの経験をそういった人材にちゃんと伝えていってみんなで育っていくのが最高にいいですよね。けれども、さすがにすべての会社で時間をかけてそれができますかというと、費用対効果も含めて非常に難しい。だからやはり外部の人材会社さんに協力いただくとか、そういった対応が必要になるかなと。

どれぐらいのコストと期間で、自分たちにとってベストなROIで会社として取り組むのかは、会社それぞれの考え方によって変わるとは思うので、こういった3つのポイントをバランスよく進めていくことが大事かと思います。

編集部

ありがとうございます。やはり、関係者みんなが作業とか管理とかだけではなく、広い視点で見ることは大事なのかなと思いましたが、さて、こちらを一言でまとめると。

杉浦

資料p27

やっぱりマネジメント能力が必須ですね。モデル作る方も管理する方も、あるいは活用する方も、マネジメントの力は最低限押さえておかなければならない能力だと思います。

「マネジメント能力」といっても、別に管理職みたいなことをするわけではない。広い意味で自分自身のマネジメント能力もそうですからね。自分を律する力とか、全体を見る力も、マネジメント能力。業界全体の人材がこうなっていくのがいいのかなあと思います。

編集部

はい、ありがとうございます。
では最後に人材の観点も含めつつ、導入・活用の成功事例などをちょっとご紹介いただけるとありがたいのですが……。

杉浦

いろいろなパターンがあるので、「人材」の観点でご紹介するのはちょっと難しいなと思ったので、「効果は何か」「生かすための方法は何か」など、そういった観点で。

資料p28

これも国土交通省が公開してるんですが…

資料p29

今までずっと説明させていただいたのはインフラ系の資料が中心ですが、国土交通省も建築分野、官庁営繕という部隊がありまして、行政側が使う建物を管理しているか担当している方々もいわゆる「建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」というものを立ち上げて、支援対象や補助率等、それから募集内容、スケジュールまであります。これってすごいなと思うんですけれど。「建築プロジェクトでこういうことを1回やってみましょう」的なことを言ってくれてるんですよね。

実は令和3年度のBIMモデル事業として採択されているのはこれだけありまして、

資料p30

例えば「継続事業」や令和3年度の「先導事業者型」などでこういった新たな取り組み、あるいは「こんな取り組みをすると建物を作っていくプロセスの中でBIMというツールがもっと効率よく使えるじゃないか」ということを考えていただいている事例もあったりします。この辺の資料はですね、冒頭の国土交通省のサイトにどんどん出ていますから、みなさんもぜひ参考にしていただきたいなと。

資料p31

ここに書かれている大和ハウスとフジタのやっている仕事のやり方や、スターツの「アセットマネジメントとしてはこういうことがやっぱり必要でしょう」とか、あるいは鹿島の「こういうデータをぐるぐる回しながら、そのデータを上手に使うことで、どれだけの効率が上がるのか」みたいな話とか、あとは日建設計コンストマネジメントと日本郵政とで一緒にやっている「マネジメントとしてはこういうところまでをやると施工中のマネジメントもできます」とかね。ぜひこういった事例を中心に確認いただければと思っています。

こちら、私もずっと見ていてすごく勉強になるなと思っていたんですけれど、一番のポイントは何かというと、やはり「BIM/CIMの効果」でさっき言ったように、BIMというのはプロセスなので、データを繋げてプロセスで仕事を回す、この観点が非常に重要なんです。

これが抜けてしまうと、「このフェーズでどんな効果がありました」「こっちのフェーズでどんな効果がありましたか?」ってブツ切れの効果を求めてしまいがちになるんですけれど。
ブツ切れ効果はありますけれども、全体最適という意味では、「データは繋げてプロセスで仕事を回す」、実はこれが一番重要なポイントです。これは建築も土木も関係ない。だから一番最初にご説明したISO19650というあの基準、もしくは考え方が重要だと言われてるんです。

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もうひとつは、この効果を最大に生かすためにプロセスを見つけること。
それをするためのプラットフォームも実はとても重要なので、ここの3つはすべて繋がっています。結局、そのプロセスを回して使っていく、基盤を上手に使いこなすことが、BIM/CIMを進めていく上では非常に重要。

資料p32

そして、これをモデルというカタチでどう見ていくか、あるいはマネジメントというカタチでどう見ていくかが非常に重要かなと思っています。

編集部

先ほどの採択事業ですが、これらの事例を見ていて、杉浦さんご自身も「この視点はなかった」とか「こういうプロセスの使い方があったのか」と気づかされることはあるんですか。

杉浦

すごく上手に資料もまとまっているし、やっていることはしっかりしているので、「なるほど」と感じることは多いんです。ただ建築については「オーナー」が信頼をした施工会社・設計会社さんに業務委託して、あるいは請負というカタチでお金を払って建物を作る――そんな状況ではあるので、そのオーナーさんの影響力次第ではありますが、全体プロセスとしてまとまりやすいと思うんですよね。

いっぽうでインフラって、今はいわゆる「デザイン&ビルド」で設計施工分離発注が原則で、その中心に発注者がいるんですよ。だから、どちらかというとBIM/CIMの効果というのは、発注者に一番メリットがある。

これはもう世界的にも結果として言われていて「67%はオーナーのメリット」だと。でも、こういったことを踏まえながらも、インフラ系であったとしても、みんなが同じ方向に向いて同じような意識でツールをちゃんと使っていく。データは繋げてプラットフォームの中でうまくプロセスを回せることがやっぱり重要なポイントだと思うんです。

だから建築の案件見ながらわれわれ土木の人間は「なるほど、こういうやり方もあるのか」って勉強し、土木のやり方を見ながら建築の方々も「なるほど、こういう苦しいところでもいけるのか」みたいな。そこをわかっていただくのはとても大事かなと思います。

編集部

なるほど。ではこの項目を最後に一言でまとめて……「一言にまとめて」ってお願いしてばかりなんですけれど。

杉浦

ここは「プロセスの改革」ですね、やっぱり。

資料p33

最初に私、ポイントとしては「プロセスの管理」というかマネジメントがとても大事なんですよって言いましたよね。

編集部

はい。

杉浦

これは大事なんですが、翻って、これを本当にうまく使おうとすると、今のプロセスにBIM/CIMというルールを落とし込んで使おうというのは、やはり一部無理があるんです。だから必ずしも今のプロセスを変えずにBIM/CIMも使うことでメリットあるところもあれば、大きなプロセスの見直しを含めて、「このBIM/CIMというツールがあるからこそ、このプロセスが最適なプロセスである」という考え方も大事だと思うんですよね。

どちらかというと前者の方は、「プロセスがあって、それにどうBIMを使っていこうか」って考え方。初期の段階はそれでいいと思うんですけれど、もう建築も土木もここまで「BIM/CIM」というキーワードが世の中で認知されてきて、携わっている人たちも少しずつながらも増えてきていてみなさんの意識が高まっているということになると、やはり「プロセス改革」が今後大事なポイントになるかなと思います。

編集部

なるほど、まさに後者の方はいわゆる「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ですね。手段じゃなく構造から変えるんだと。

杉浦

そうなんです。それがあるから、「ISO化」が世界の潮流として認められているという大きな流れがあると思います。

編集部

なるほど。ありがとうございます。ここまでお話伺ってきましたけれども、最後にまとめていただきました。はい、イラストとともに。

資料34

杉浦

全体的にご説明したのは、この5つの項目でしたが、最初に「プロセス管理が重要」ということと、紆余曲折あったけれど結局は「プロセス改革が必要」ですよねってところに繋がるのが一番重要なポイントかなと思って、今日はお話をさせていただきました。

編集部

ありがとうございました。

―中略―

編集部

それでは、質疑応答の時間でございます。

杉浦

ヒューマンリソシアさんに逆に質問なんですが、実際にBIM/CIMを使えるような人を育てられていると思うんですけど、建物系の図面とインフラ系の図面って、結構違うと思うんですよ。

その教育というか、人材を育てようとしている時、ヒューマンリソシアさん自身が難しいと感じるところもあるんじゃないですか。

編集部

当社のBIMオペレーター育成型派遣についてですね。どうですか、福田さん。

ヒューマンリソシアコンストラクション営業本部
福田

はい。おっしゃる通りで教育はなかなか難しいと感じることもあります。例えば各社様のBIM/CIMの使い方もそれぞれ違うので、そこに関してイチから全部当社で教育――というのは正直なかなか難しいんです。

なので、あくまでその当社側として教えられる部分までは教えて、あとは各社様ともう一緒になって育てていくようなカタチでやらせていただいている状況ですね。

杉浦

BIM/CIMを使えるようになるのは、重要なきっかけのひとつではあると思うんですけれど、建設会社や設計会社、コンサルタントさん以外のところで教育いただいて図面を読み込める、読み解ける人が増えてくると、ものすごく最初のスタートダッシュがしやすいですよね。

私も実際やって思いましたが、例えば、いわゆる建築/土木みたいなものではなくてね、地盤を整備して上に建物を作るとか、建物を作る周辺に環境整備を行うとかいった時に、建物と地形を融合していかなければいけないんですよ。

使い方にもよるんですけれど、融合する時、モデルの使い方はだいぶ変わってくると思うんですよね。いろんなやり方が。だからそういったものを統合・管理できるような考え方も大事かなと思います。

編集部

なるほど。あ、質問が入りましたね。杉浦さん、こちらいかがでしょうか。

杉浦

ええと、「欧米の現場では設計・施工のあいだに入って施工プロセスを管理するCADマネージャーと呼ばれる人がいますが……」。なるほど。いわゆるこれはBIMマネージャーですね。世界的に言うとBIMマネージャーと言われているんですが、こういった人たちが欧米では職種のひとつとして成り立っています。設計をする人、施工する人、オーナーサイドがいるんですけれど、そのど真ん中に入って、いわゆる全部マネジメントできる人。

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BIMマネージャーが海外ではひとつの職種として、仕事で対応している現状があるので、いずれ日本もそうなるんじゃないかなと思いますね。今はそれを建設コンサルタントもしくは設計会社の方々が担ったり、施工会社の人間が担ってみたりしてトライ・アンド・エラーしてますけれど、私は最終的に、コンサルの職種あるいは設計の職種、施工の職種と同じような職種のひとつになるんじゃないかなと思っています。

編集部

そういう意味ではBIMマネージャーが将来的にできる職種として見れば、今育成されている会社もいらっしゃるし、また私どものように人材紹介サービスもございますので、そういう方が転職をされることで人材流動性が生まれるかもしれませんね。

杉浦

それはあるかもしれませんね。もうひとりの方からのご質問、「人材サービス会社以外にBIM/CIMを外注する会社はあるか」。うん。これ明確にBIM/CIM外注をしてますって会社が、人材サービス会社以外にあるかっていうと、今はどうでしょうね。

例えば、BIM/CIMのツールを作っている会社、もしくはBIM/CIMのツール的なものを開発する会社。そういった会社って、ある意味で設計や施工のプロセスをよくご存知な方々が結構いらっしゃるので、逆にそういう人たちがこのプロセスの中で「BIM/CIMを使う業務を、一式全部引き受けます」としている会社も、まあ、あることはありますね。

ただ今言ったように、「どの目的でどういう方々に何をお願いするのか」によって、BIM/CIMの業務をお願いする、あるいは一緒にやっていただく会社というのは変わってくるかなと思います。

日本は最近でこそちょっと多くなりましたが、海外ほど人材流動性が激しくないんですよね。海外だと、去年まで発注者にいたんだけれど、今年からは施工会社とか、施工会社に去年までいたんですけど今年から発注者側です……みたいな、そういう人材の流動は、尋常じゃなくおこわれているんですよ。

編集部

はい。

杉浦

そうやって人材がぐるぐる回っている世界だと、その「目的に応じて何が重要なのか」を見極める力がどんどんつくんですけど、日本はまだちょっとそこまではなっていない。

今は他の人の仕事を見ながら聞きながら演じながら、「自分だったらここはこうする」というふうに自分の専門とする領域からちょっと外れたところまで仕事をするような感覚で物事を見たりしていると、ちょっとずつ幅が広がった人材になっていけるかもしれませんね。

編集部

はい、ありがとうございます。……まだまだお話をお伺いしたいところですが、ちょうどお時間となりました。本日のウェビナーはこちらで終了とさせていただきます。参加いただいたみなさま、ご静聴ありがとうございました。そして杉浦さん、本日はありがとうございました。