本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今月は、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」のデータより、2020年度における建設業の給与の動向について紹介します。 ホワイトペーパーダウンロード
今月のトピックス
コロナ下においても建設業の給与は微減にとどまる
産業分野別に2020年度の一般労働者の1人当たり月平均の現金給与額をみると、調査産業計で416,570円(前年度比増減率2.1%減)となり、新型コロナウイルス感染症拡大の打撃が鮮明に表れています(図表①)。給与額が減少するのは2011年度以来8年ぶりになります。最も減少率が高かったのは飲食サービス業等で前年度比9.1%減、次いで運輸業、郵便業が同6.4%減、生活関連サービス業が同4.5%減となっており、緊急事態宣言による外出自粛等の影響を受けやすい業種で大幅な減少となりました。建設業についてみると、給与額は433,010円(同0.7%減)と微減にとどまっており、給与額においても製造業の417,711円を上回る水準となっています。
【図表① 2020年度の1人当たり現金給与額(月平均)と前年度比増減率】出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」より作成
建設業の給与額の伸び率は飛びぬけて高い
建設業、製造業、調査産業計の給与額の推移について12年度を100とする指数でみると、建設業は大幅な上昇傾向が続き、2020年度には114に達しています。一方、製造業は2020年度で102、調査産業計は103にとどまっており、近年における建設業の給与額の上昇率は飛びぬけて高いことがわかります。4月の建設業の新規求人数は、前年同月比増減率18.3%増で5か月連続の増加となっており、今後も好調な堅調な市場環境を背景に給与も底堅く推移するのではないかと考えられます。
【図表② 2012年度の給与額を100とした指数】出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」より作成
建設業界の最新雇用関連データ
(2021年5月28日公表)
(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数
就業者数は498万人(前年同月比101.4%)、雇用者数は406万人(同101.2%)で、ともに増加
<建設業の就業者数と雇用者数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
公共職業安定所(以下:ハローワーク)における新規求人数は75,339人(前年同月比118.3%)と5カ月連続で増加
<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(2)建設技術職の雇用動向
建設技術者数は33万人(前年同月比86.8%)と3カ月連続で減少
<建設技術者数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
◆ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は前月まで14カ月連続で前年同月を下回っていたが、当月は前年同月と同じの5.49倍となった。
◆労働需給の先行指標となる新規求人倍率は前年同月を0.59ポイント上回って6.04倍となった。4カ月連続で前年同月を上回っており建設技術者の需給状況は再び厳しくなりそうである。
◆有効求人数は前年同月比113.6%となり4カ月連続で増加となった。新規求人数も同124.3%と同じく4カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が鮮明となっている。
◆充足率は前年同月より0.43ポイント低下して3.88%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いている。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)建設技能工の雇用動向
建設技能工数は317万人(前年同月比100.0%)と前年同月と同じ
<建設技能工数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
◆ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は5.10倍(対前年同月比0.02ポイント減)と低下に転じた。
◆労働需給の先行指標となる新規求人倍率は6.26倍(対前年同月比0.52ポイント増)となった。9カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工の需給動向は逼迫に向かっている。
◆有効求人数は前年同月比116.6%となり8カ月連続で前年同月を上回った。新規求人数も同115.7%と8カ月連続で前年同月を上回っており、企業の求人意欲は上昇傾向が続いている。
◆充足率は前年同月より0.24ポイント低下して6.92%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いている。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
2021年4月の雇用関連データのまとめ
(2021年5月28日公表)
(1)主要な雇用環境指標の推移
就業者数、雇用者数ともに13カ月ぶりに増加
就業者数は6,657万人(前年同月比29万人増)、雇用者数は5,945万人(同22万人増)となり、ともに13カ月ぶりに増加に転じた。就業率も13カ月ぶりに前年同月を上回り60.3%(同0.5ポイント増)となった。
完全失業率は2.8%に悪化、完全失業者数は209万人となり15カ月連続で増加
完全失業率(季節調整値)は前月より0.2ポイント上昇して2.8%となった。完全失業者数は15カ月連続で増加して、前年同月比20万人増の209万人となった。
【主要雇用環境指標の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
宿泊業・飲食サービス業で大幅な就業者数の減少が依然として続く
産業別に就業者数を見ると、宿泊業・飲食サービス業が対前年同月増減率5.4%減(20万人減)となり大幅な減少が続いている。一方、最も増加率が高かったのは情報通信業で同6.2%増(15万人増)となった。
【主要産業別の就業者数・雇用者数】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
非正規の職員・従業員が14カ月ぶりに増加に転じる
雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,568万人(前年同月比5万人増)と11カ月連続で増加した。一方、13カ月連続で減少していた非正規の職員・従業員数は前年同月比20万人増の2,039万人となり、14カ月ぶりに増加に転じた。
【雇用形態別雇用者数の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
最も完全失業率が上昇したのは25~34歳の男性で5.1%となる
男女別に完全失業率を見ると、男性は前月よりも0.4ポイント上昇して3.2%、女性は同0.1ポイント低下して2.3%となった。最も完全失業率が上昇したのは25~34歳男性で、前月よりも1.4ポイント上昇して5.1%となった。完全失業者数は男性が前年同月より15万人増加して129万人、女性が同5万人増加して80万人であった。
【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
勤め先や事業の都合による離職の大幅な増加が続く
完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が前年同月比10万人増の40万人となり、大幅な増加が続いている。自発的な離職は前年同月比で4万人増加して75万人となった。
【求職理由別完全失業者数の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移
有効求人倍率は前月より0.01ポイント低下して1.09倍となる
ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント低下して1.09倍となった。労働需給の先行指標である新規求人倍率は前月より0.17ポイント低下して1.82倍となった。正社員の有効求人倍率は前月より0.04ポイント上昇して0.88倍となった。
【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)職業別有効求人倍率の推移
ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は前年同月より0.25ポイント低下して1.58倍となった。21カ月連続の低下である。
有効求人倍率が上昇したのは生産工程の職業のみであり、前年同月比0.07ポイント上昇して1.43倍となった。建築・土木・測量技術者は前年と同じレベルに回復した。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の5.49倍、次いで建設・採掘の職業の5.10倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が依然として深刻である。
【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(除パート)の推移】
出典:厚生労働省:一般職業紹介状況より作成
【職業別有効求人倍率(除パート)の対前年同月比】
出典:厚生労働省:一般職業紹介状況より作成
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