本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今月は、厚生労働省の「一般職業紹介状況」のデータより、2020年度における建設技術者の雇用環境の動向についてご紹介します。 ホワイトペーパーダウンロード
今月のトピックス
2020年度、建築・土木・測量技術者の
有効求人数は減少、有効求人倍率も低下
建築・土木・測量技術者(常用・パート除く)の2020年度(2020年4月~2021年3月)の1カ月あたりの平均有効求人数は前年度の57,826人から55,505人に減少、有効求人倍率も同6.65倍から5.87倍へと大幅に低下しました(図表①)。2016年度以降、建築・土木・測量技術者の有効求人数は増加が続き、有効求人倍率についても上昇し続けてきましたが、2020年度については、東京オリンピック・パラリンピック関連需要がピークアウトしたことに加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、企業の建築・土木・測量技術者に対する求人意欲は若干低下しています。
【図表① 建築・土木・測量技術者の有効求人数・有効求人倍率の推移】出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
新型コロナウイルス感染症拡大が建築・土木・測量技術者の
需要に与えた影響は比較的小さい
有効求人数の対前年増減率を専門的・技術的職業総計と比較して見ると、2020年度については専門的・技術的職業総計の有効求人数は対前年比▲14.5%と大幅な減少になっていますが、建築・土木・測量技術者は同▲4.0%の減少にとどまっています(図表②)。
2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で専門的・技術的職業についても雇用環境は大幅に悪化していますが、建築・土木・測量技術者についてはその影響は限定的であり、比較的雇用環境は堅調であったと考えられます。
【図表② 有効求人数の対前年増減率の比較】出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
建設業界の最新雇用関連データ
(2021年4月30日総務省・厚生労働省公表)
(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数
建設業の就業者数は499万人(前年同月比97.5%)、雇用者数は405万人(同97.6%)で、ともに減少した。
<建設業の就業者数と雇用者数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は79,275人(同116.5%)と4カ月連続で増加した。
<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(2)建設技術職の雇用動向
建設技術者数は38万人(同92.7%)と2カ月連続で減少した。
<建設技術者数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月よりも0.09ポイント低い6.02倍となった。前年同月を下回ったのは14カ月連続。
有効求人数は前年同月比110.5%となり3カ月連続で増加。新規求人数も同110.5%と3カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は回復傾向となっている。
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)建設技能工の雇用動向
建設技能工数は318万人(同97.2%)と2カ月連続で減少した。
<建設技能工数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月比0.11ポイント上昇して5.33倍となり、2カ月連続で上昇した。
有効求人数は前年同月比117.6%となり、7カ月連続で前年同月を上回った。新規求人数も同119.4%と6カ月連続で前年同月を上回っている。
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
2021年3月の雇用関連データのまとめ
(2021年4月30日公表)
(1)主要な雇用環境指標の推移
就業者数、雇用者数ともに12カ月連続で前年同月割れ
就業者数は6,649万人(前年同月比51万人減)、雇用者数は5,967万人(同42万人減)となり、ともに12カ月連続で前年同月を下回った。就業率も12カ月連続で前年同月を下回り60.2%となった。
完全失業率は前月より0.3ポイント低下して2.6%となる
完全失業率(季節調整値)は前月より0.3ポイント低下して2.6%となった。完全失業者数は14カ月連続で増加して、前年同月比12万人増の188万人となった。
【主要雇用環境指標の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
宿泊業・飲食サービス業で大幅な就業者数の減少が続く
産業別に就業者数を見ると、宿泊業・飲食サービス業が前年同月増減率▲10.0%(▲40万人)となり大幅な減少が続いている。最も増加率が高かったのは情報通信業で、同+10.5%(+24万人)となった。
【主要産業別の就業者数・雇用者数】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
非正規の職員・従業員が13カ月連続で大幅に減少
雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,560万人(同54万人増)と10カ月連続で増加した。一方、非正規の職員・従業員数は前年同月比96万人減の2,054万人となり、13カ月連続で大幅な減少となった。
【雇用形態別雇用者数の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
男性の完全失業率は2.8%(前月比▲0.3ポイント)、女性は2.4%(同▲0.4ポイント)
男女別に完全失業率を見ると、男性は前月よりも0.3ポイント低下して2.8%、女性は同0.4ポイント低下して2.4%となった。最も完全失業率が低下したのは45~54歳男性で、前月よりも0.7ポイント低下して2.3%となった。完全失業者数は男性が前年同月より7万人増加して114万人、女性が同5万人増加して74万人であった。
【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
勤め先や事業の都合による離職の大幅な増加が続く
完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が前年同月比10万人増の33万人となり、大幅な増加が続いている。一方、自発的な離職は前年同月比で1万人減少して70万人となった。
【求職理由別完全失業者数の推移】
出典:総務省統計局 労働力調査より作成
(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移
有効求人倍率は前月より0.01ポイント低下して1.10倍となる
ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント上昇して1.10倍となった。有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月より0.11ポイント上昇して1.99倍となった。正社員の有効求人倍率は前月より0.02ポイント上昇して0.84倍となった。
【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)職業別有効求人倍率の推移
ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は20カ月連続の低下となる1.77倍(前年同月比▲0.29ポイント)となった。
建設・採掘の職業のみ有効求人倍率が前年同月比+0.11ポイントとなり2カ月連続で上昇した。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の6.02倍、次いで建設・採掘の職業の5.33倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が依然として深刻である。
【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(除パート)の推移】
出典:厚生労働省:一般職業紹介状況より作成
【職業別有効求人倍率(除パート)の対前年同月比】
出典:厚生労働省:一般職業紹介状況より作成
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