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独自分析

建設業関連6業種における2022年3月期決算のまとめ

編集部 2022年06月30日

本レポートのポイント
・土木工事業を除く5業種が増収となる一方、純利益は4業種が減益になった
・総合工事業と土木工事業は営業利益、経常利益、純利益が前年同期比二桁減と収益面で苦戦
・管工事業と住宅・不動産業の主要10社合計は、増収増益と好調

 

<総合工事業>
7社が減益となり収益面で厳しい決算に

増収増益となったのは鹿島建設と長谷工コーポレーションの2社のみであり、7社が減益(赤字化含む)となり収益面では厳しい決算となりました(図表①)。大林組は大規模工事複数件において工事損失引当金を計上したことで(決算短信より)大幅に収益性が悪化しました。一方、鹿島建設は海外関係会社における開発事業が大きく伸長したことで(決算短信より)利益が底上げされました。前期実績がないインフロニア・ホールディングスを除く主要9社合計をみると、売上高は前期比4.9%増となりましたが、営業利益は同32.3%減、経常利益は同27.4%減、純利益は同26.5%減となっており、業界全体としても収益の悪化が目立つ決算となりました。このような収益性低迷の背景には、受注競争が厳しくなったために受注時の採算が悪化したことや建設資材高騰があると考えられます。

【図表① 総合工事業上場主要10社の2022年3月期決算(連結)の実績】HR_202206_001
出所:各社の決算短信より作成※インフロニア・ホールディングスは2021年10月1日に共同株式移転により設立されたため、前期実績はありません
※合計、合計の前期比はインフロニア・ホールディングスを除く9社で算出

 

<23年3月期業績予想>
8社が増収増益を予想、収益面でも回復が期待される

8社が増収増益の業績予想となっており、好調な業績が期待されています。10社合計をみると、売上高は前期比12.5%増、営業利益は同24.1%増、経常利益は同15.1%増、純利益は同13.5%増となっており、22年3月期決算で収益が大幅に落ち込んだ反動もあり、収益面においても回復すると予想されています。ただし、ゼネコン大手の鹿島建設と大成建設は減益の予想となっています。鹿島建設では、資機材価格の上昇などのリスク要因を利益面で見込む(決算短信より)、大成建設では、厳しい価格競争や更なる原材料・燃料価格の上昇等のリスク要因に留意する必要がある(決算短信より)としており、収益が下振れするリスクには注意することが必要だと考えられます。

【図表② 総合工事業上場主要10社の2023年3月期(連結)の業績予想】HR_202206_015
出所:各社の決算短信より作成

 

<⼟⽊⼯事業>
5社が減収減益の厳しい決算結果に

6社が減益、5社で減収減益となる厳しい決算結果となりました(図表③)。道路舗装を主力とする3社(日本道路、東亜道路工業、世紀東急工業)では、原油価格や資材価格高騰の影響などにより収益性が大幅に低下しています。増収増益となったのは基礎・地盤改良工事等を中心に展開するライト工業と海上土木を本業とする東亜建設工業の2社でした。「収益認識に関する会計基準」を適用するため対前期増減率は発表していない川田テクノロジーズを除く9社合計をみると、売上高は前期比0.6%減、営業利益は同14.1%減、経常利益は14.3%減、純利益は13.9%減となっており、業界全体としても減収減益の厳しい決算結果となっています。

【図表③ 土木工事業上場主要10社の2022年3月期(連結)の実績】HR_202206_003
出所:各社の決算短信より作成※川田テクノロジーズは2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」を適用するため対前期増減率は発表していません(合計および合計の前期比増減率は川田テクノロジーズを除く9社で算出しています)

 

<23年3月期業績予想>
10社すべてが増収予想も利益面では7社が減益予想となり、収益性の悪化が続く

10社すべてが増収を予想しています。国土強靱化政策など引き続き社会資本整備は堅調に推移すると想定されており、売上高は順調に伸びると見込まれています(図表④)。一方、純利益については7社が前期割れと予想しています。10社合計をみると、売上高は前期比6.2%増ですが、営業利益は同4.0%減、経常利益は同6.7%減、純利益は同8.2%減となっており、収益面では厳しい状況が続くと見込まれています。

【図表④ ⼟⽊⼯事業上場主要10社の2023年3⽉期(連結)の業績予想】HR_202206_004
出所:各社の決算短信より作成

 

<電気・電気通信設備⼯事業>
5社が減益と、収益面ではやや苦戦

7社が増収となり売上高は堅調に伸びています(図表⑤)。一方、利益については5社が減益となっており、やや苦戦しています。増収増益となったのは、エクシオグループ、ミライトホールディングス、ユアテックの3社でした。エクシオグループとミライトホールディングの主要事業である通信設備工事では、無線基地局工事の市場が堅調に推移しており好業績を支えています。ユアテックでは、再生可能エネルギー関連工事や配電線工事が増加したことに加え、 ベトナムの大手設備会社を子会社化したことにより売上高が前期比二桁の増加となっています(決算短信より)。10社の合計をみると(売上高のみ関電工を除く9社)、売上高は前期比2.0%増、営業利益は同0.8%減、経常利益は同0.5%増、純利益は同3.0%減となっており、業界全体としても収益面でやや厳しい決算となっています。

【図表⑤ 電気・電気通信設備工事業上場主要10社の2022年3月期(連結)の実績】HR_202206_005
出所:各社の決算短信より作成

※関電工は2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」を適用するため売上高の対前期増減率は発表していません。(売上高の合計および合計の前期比増減率は関電工を除く9社で算出しています)

 

<23年3月期業績予想>
10社すべてが増収予想の一方、収益については5社が減益を見込む

10社すべてが増収を予想しており、売上高は順調に拡大すると見込まれていますが、純利益は5社が減益予想となっており、収益面ではやや厳しい見込みとなっています(図表⑥)。10社合計をみると、売上高は前期比6.8%増と好調な業績が見込まれていますが、営業利益は同2.5%減、経常利益は同4.5%減、純利益は同4.2%減となっており、収益面では22年3月期に続いてやや厳しい展開が予想されています。

【図表⑥ 電気・通信設備⼯事業上場主要10社の 2023年3⽉期(連結)の業績予想】HR_202206_006
出所:各社の決算短信より作成

 

<管⼯事業>
8社が増収、5社が増収増益と好調な決算に

8社が増収、5社が増収増益となりました(図表⑦)。業界トップの高砂熱学工業は前期が大幅な減収減益であった反動もあり、前期比で二桁増の増収増益となりました。日比谷総合設備は一部大型工事での施工効率化及び原価低減施策の実施等により(決算短信より)、営業利益率が前期比41.7%増と大幅な増加となりました。10社合計をみると、売上高は前期比3.9%増、営業利益は同7.3%増、経常利益は同8.0%増、純利益は8.6%増となっており、業界全体としても増収増益の好調な決算になっています。

【図表⑦ 管⼯事業上場主要 10 社の2022年3月期(連結)の実績】HR_202206_007
出所:各社の決算短信より作成

 

<23年3月期業績予想>
売上は堅調であるが、6社が減益を予想しており収益面ではやや厳しい予想となる

企業の設備投資や大規模県の再開発等は堅調に推移すると見込まれていることを背景に、8社が増収を予想しています。一方、純利益については6社が減益の予想となっており、収益面では厳しい予想をしている会社が多くなっています(図表⑧)。10社合計をみると、売上高は前期比4.2%増ですが、営業利益が同2.8%減、経常利益が同4.2%減、純利益が3.8%減となっており、業界全体としても収益性は低下すると見込まれます。

【図表⑧ 管⼯事業上場主要 10 社の 2023 年3⽉期(連結)の業績予想】HR_202206_008
出所:各社の決算短信より作成

<プラント・エンジニアリング業>
日揮と千代田化工建設が計上した特別損失を除くと収益面でも堅調な決算

業界トップの日揮がオーストラリアの液化天然ガスプラント建設を巡る係争費用等で575億円の特別損失を計上したことにより(決算短信より)、純利益が355億51百万円の赤字となりました。また、業界第2位の千代田化工建設は液化天然ガスプロジェクト関連の特別損失を203億74百万円計上したことにより(決算短信より)、純利益が126億29百万円の赤字となりました。東洋エンジニアリング、富士古河E&C、田辺工業の3社は増収増益となりました(図表⑨)。主要10社合計では売上高が前期比0.8%増、営業利益は同7.3%増、経常利益は同10.7%増、純利益が87.5%減となっており、日揮と千代田化工建設の多額の純損失を除くと収益面でも好調な決算だったと言えそうです。

【図表⑨ プラント・エンジニアリング業上場主要10社の2022年3月期(連結)の実績】HR_202206_009
出所:各社の決算短信より作成

 

<23年3月期業績予想>
10社すべてが増収を予想、収益面でも好調な業績が見込まれる

10社すべてが増収を予想しています(図表⑩)。業界トップの日揮は売上高が前期比40.1%増で黒字化、第2位の千代田化工建設も売上高が同60.7%増で黒字化の予想となっており、大幅な業績回復が見込まれています。10社合計をみると、売上高が前期比23.2%増、営業利益が同10.9%増、経常利益が同6.1%増、純利益が同1013.9%増(増減率が1000%を超えるため「‐」と記載しています)となっており、非常に好調な業績が見込まれています。

【図表⑩ プラント・エンジニアリング上場主要10社の2023年3⽉期(連結)の業績予想】HR_202206_016
出所:各社の決算短信より作成

 

<住宅・不動産業>
6社が増収増益の好調な決算結果に

6社が増収増益となる好調な決算となりました(図表⑪)。飯田グループホールディングスは売上高が前期比4.8%減で前期割れとなりましたが、純利益は同24.1%増と二桁の増加になっています。積水化学工業のみが減益となっていますが、その要因は米国の連結子会社について減損損失を計上したことによるもの(決算短信より)であり、営業利益は前期比32.1%増と本業での収益性は向上しています。10社合計をみると、売上高は前期比5.8%増、営業利益は同16.0%増、経常利益は同19.5%増、純利益は同16.9%増となりました。21年度の新設住宅着工戸数は前年度比6.7%増となっており(住宅着工統計より)、好調な住宅市場を背景に業界としても非常に好調な決算結果になっています。

【図表⑪ 住宅・不動産業上場主要 10 社の 2022年3月期(連結)の実績】HR_202206_011

出所:各社の決算短信より作成

※タカラレーベンは2022年3月期より「収益認識に関する会計基準」を適用するため対前期増減率は発表していません。(合計および合計の前期比増減率はタカラレーベンを除く9社で算出しています)

 

<23年3月期業績予想>
8社が増収増益と好調な業績を予想

8社が増収増益の業績予想となっており、好調な業績が続くと予想されています(図表⑫)。10社合計をみると、売上高は前期比4.9%増、営業利益は同2.4%増、経常利益は同0.8%増、純利益は同4.9%増となっており、業界としても売上、収益ともに好調な決算が予想されています。国内の住宅市場は人口減少を背景に将来的には縮小に向かうと考えられますが、低金利体制の継続、住宅ローン減税の再延長等の政府による住宅取得支援策等を背景に、当面の需要は底堅いという見方がされているようです。

【図表⑫ 住宅・不動産業上場主要10社の2023年3⽉期(連結)の業績予想】HR_202206_012
出所:各社の決算短信より作成

 

<本レポートのまとめ>

2022年3月期決算は、総合工事業と土木工事業は収益面で苦戦の一方、

管工事業と住宅・不動産業が好調

6業種主要10社合計(総合工事業、土木工事業、電気・通信設備工事業の売上高、住宅・不動産業は9社)の2022年3月期決算実績の前期比増減率をみると、総合工事業と土木工事業は営業利益、経常利益、純利益がすべて二桁の減少になっており、収益面では非常に厳しい決算になりました(図表⑬)。特に総合工事業は営業利益が前期比32.3%減と大幅に減少しており、本業における収益性の低下が懸念されます。電気・通信設備業はやや収益面で苦戦するもほぼ前期並みの堅実な決算、管工事業は増収増益の好調な決算になりました。プラント・エンジニアリング業は純利益が大幅な前期割れになっていますが、これは多額の特別損失計上によるものであり、経常利益レベルでは収益性は前期を上回っています。最も好調な決算であったのは住宅・不動産業であり、営業利益、経常利益、純利益すべてが二桁増となりました。

【図表⑬ 2022年3月期決算実績の主要10社合計前期比増減率】HR_202206_013

 

2023年3月期業績予想では、総合工事業の業績が大幅に改善すると見込まれる

6業種の主要10社合計の2023年業績予想の前期比増減率をみると、総合工事業が2022年3月期の大幅な減益の反動もあり、売上高、利益ともに大幅に改善すると見込まれています(図表⑭)。一方、土木工事業、電気・通信設備工事業、管工事業は収益面で前期割れの厳しい見込みとなっています。プラント・エンジニアリング業は大幅な増収増益、住宅・不動産業も22年3月期に続いて増収増益の堅調な決算が続くと見込まれています。

【図表⑭ 2023年3月期業績予想の主要10社合計前期比増減率】HR_202206_014