今回は、公的統計データおよび当社の独自アンケート調査結果を使って、コロナ下における建設業のテレワーク導入の現状について紹介します。
本件のポイント
・2020年にテレワークの導入率は一気に上昇、建設業では56.3%に
・リモートワークでの生産性はITを使いこなすスキルの違いが影響か
・57.5%がアフターコロナでもテレワークを取り入れた働き方を希望している ホワイトペーパーダウンロード
総務省の「通信利用動向調査」よりテレワーク導入率の推移をみると、産業全体で2014年の12.3%から2019年には20.2%に上昇したにとどまっていましたが、2020年には47.5%にまで一気に上昇しています。建設業と製造業についてみても、いずれも2019年までは伸び悩んでいた導入率が2020年には一気に上昇していることが分かります。(図表①)。
【図表① テレワーク導入率の推移】
同じく総務省の「通信利用動向調査」からテレワークの導入目的について2019年と2020年を比較すると、「非常時(地震、台風、大雪、感染症の流行など)の事業継続に備えて」という回答が2019年の26.0%から2020年には68.3%に増加して最も多くなっています。一方、2019年には68.3%で最も多かった「業務の効率性(生産性)の向上」は2020年には29.7%に減少しており、新型コロナウイルス感染症拡大防止に必要であるという外圧から、一気にテレワークの導入率が上昇した要因ではないかと考えられます(図表②)。
【図表② テレワーク導入目的(複数回答)】
弊社の独自アンケート調査の結果から、建設技術職のテレワークの実施状況をみると、「平均して週1日程度がテレワーク」が9.2%、「平均して週2~3日がテレワーク」が21.8%、「平均して週4日以上がテレワーク」が12.3%となり、週1日以上テレワークを実施した人の合計は43.3%になりました。建設業全体の56.3%(2020年導入率)よりも13ポイント低くなっています(図表③)。
【図表③ 建設技術者におけるテレワークの実施状況(n=261)】
テレワークと生産性の関係性についての回答についてみると、「テレワークで生産性が上がった」と回答した人の比率は全体で10.1%、「テレワークで生産性が下がった」が25.6%であり、テレワークで生産性が下がったと認識した人のほうが多いという結果になっています(図表④)。ただし、「どちらともいえない」が64.3%と半数以上になっており、初めてのテレワークで判断ができなかったという人も多かったと思われます。
また、年齢層別にみると「テレワークで生産性が上がった」という回答の比率が最も高いのは30歳代の14.6%であり、40歳代は12.5%、50歳代は7.7%、60歳以上では0%と下がっていることから、ITを使いこなすスキルの違いも生産性に影響しているのではないかと推察されます。
【図表④ テレワークで生産性は上がったのか(n=261)】
「アフターコロナにおいても、テレワークを取り入れた働き方をしたいと思うか」という質問についてみると、全体で57.5%が「したいと思う」と回答しています(図表⑤)。年齢層別にみると、「したいと思う」という回答の比率が最も高いのは20歳代の66.7%、次いで30歳代の61.8%となっています。
【図表⑤ アフターコロナにおいても、テレワークを取り入れた働き方をしたいと思うか?(n=261)】
テレワーク導入率は2020年に一気に上昇して建設業では56.3%に達し、建設技術職についても導入率は43.3%となっています。建設業における導入目的として最も多いのは「非常時(地震、台風、大雪、感染症の流行など)の事業継続に備えて」(68.3%)であり、コロナ禍という外圧によってテレワークの導入が一気に進んだことがわかります。ただし、アンケート調査の結果ではテレワークで生産性が向上したと回答したのは建設技術職の10.1%であり、25.6%は生産性が下がったと回答していることから、コロナ禍への対応策としてテレワークを導入したが、そのメリットを十分には活用できていない状況です。
今後、テレワークを定着させるために重要な課題は、テレワークを活用して生産性の向上を実現できるように業務プロセス全体の再構築や仕事のやり方やワークスタイルの変革を進めていくことではないかと考えられます。
<独自アンケート調査の概要>調査タイトル:建設技術者の仕事への満足度と転職意識に関するアンケート
調査期間:2021年1月~2月
調査対象:当社(旧ヒューマンタッチ株式会社)に登録している建設技術者
調査手法:インターネットによるアンケート調査
アンケート回収数:261人