本レポートのポイント
・2021年度の公共事業関係費の予算はコロナ禍の中でも堅調であり、前年度並みを確保
・防災・減災、国土強靭化及び将来を見据えたインフラ老朽化対策のために大きな予算を確保
・新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、民間の建設投資は大幅に減少することが危惧されるが、政府建設投資については前年度並みをキープできると考えられる ホワイトペーパーダウンロード
一般会計における国土交通省の公共事業関係費の予算額の推移をみると、2015年度以降は横ばいであり、ほぼ前年度並み予算を確保しています(図表①)。また、臨時特別の措置による公共事業関係費、補正予算による公共事業関係費を加えた実質的な公共事業関係費をみても、2021年度は第3次補正予算で1兆9,342億円が積み増され、総額で7兆1,929億円となり、前年度よりも695億円増加しています(図表②)。公共事業関係費はコロナ禍でも落ち込むことなく堅調に推移していると言えます。
【図表① 一般会計における国土交通省の公共事業関係費の予算額の推移】
【図表② 臨時特別の措置、補正予算を加えた公共事業関係費の予算額の推移】
第3次補正予算で、防災・減災、国土強靭化等や将来を見据えたインフラ老朽化対策にどのくらいの予算が確保されたかについて見ると、あらゆる関係者により流域全体で行う「流域治水」の推進に3,826億円、集中豪雨や火山噴火等に対応した総合的な土砂災害対策の推進に440億円、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進に1,485億円、密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進に19億円、地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援に4,246億円、将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進に1,283億円が投入されており、総額は1兆1,299億円になります(図表③)。
予算概算要求では、公共事業に関連する「緊要な経費」に係る要望内容として、「激甚化・頻発化する自然災害等に鑑み、3か年緊急対策として講じられてきたこれまでの実績を踏まえ、今後中長期的に達成すべき安全度の水準を見据えて、これまでの実績を上回る必要かつ十分な規模となるよう、予算編成過程で検討する」とされていましたが、その方針通りに第3次補正予算によって防災・減災、国土強靭化等やインフラ老朽化対策に大きな予算が確保されていることがわかります。
【図表③ 主な項目の要求額と予算案額の概要】
防災・減災及び老朽化した社会インフラ対策については、国にとっての喫緊の重要課題であるという認識にぶれはなく、コロナ対策で財政が逼迫する中でも2021年度の公共事業関係費については補正予算を含めて前年度を若干上回る予算が確保されました。
2021年度の建設市場については、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う民間設備投資や住宅投資の落ち込みから、民間の建設投資は大幅に減少することが危惧されますが、公共事業を中心とした政府建設投資については、前年度並みをキープして建設市場を底支えするのではないかと思われます。