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独自分析

建設業関連6業種における2020年3月期決算と21年3月期予想から見る市場動向

編集部 2021年07月15日

本レポートのポイント
・6業種別主要上場企業各10社の2020年3月期通期の決算から見る建設市場動向をまとめた
・2020年3月期の決算は、6業種ともに好調な結果
・2021年3月期については、各業種ともに新型コロナウイルス感染症拡大による業績への影響が懸念されている ホワイトペーパーダウンロード

 

<総合工事業>
8社が増収となるも収益性は低下傾向、
新型コロナウイルス感染症の影響もあり
21年3月期は6社が減収減益予想

売上高は8社が前期を上回り、10社合計の売上高は前期を2.1%上回っています(図表①)。大林組とフジタ(単体)は過去最高の売上高となりました。しかし、営業利益、経常利益は6社が前期割れ、純利益についても7社が前期割れとなっており、10社合計では営業利益が前期比2.5%減、経常利益が同3.4%減、純利益が同6.9%減であり、収益性は低下傾向です。

2021年3月期の業績予想を見ると、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を織り込んだ数値を発表した7社のうち6社は大幅な減収減益予想になっており、厳しい経営環境が予測されています(図表②)。

【図表① 総合工事業主要10社の2020年3月期(連結)の実績】
01-3出所:各社の2020年3月期決算短信より作成

【図表② 総合工事業主要10社の2021年3月期(連結)の業績予想】
01b*「収益認識に関する会計基準」などを適用するため業績予想の対前期増減率を公表していない三井住友建設についても単純計算で対前期増減率を記載している

 

<⼟⽊⼯事業>
8社が増収増益となり好調な決算、
21年3月期についても比較的落ち込みは小さい

売上高は9社が前年を上回り、8社が増収増益となっています(図表③)。10社合計の売上高は前期比5.0%増、営業利益は同2.8%増、経常利益は同2.5%増、純利益は同14.0%増となっており、土木工事業界は非常に好調な決算となっています。

2021年3月期の業績予想については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を織り込まない予想を発表した4社(NIPPO、日本道路、東洋建設、ピーエス三菱)では売上高が前期を上回る予想となっています(図表④)。影響を織り込み済みの数値を発表した4社(大豊建設、川田テクノロジーズ、飛鳥建設、東亜道路工業)は前期割れの売上高予想となっていますが、総合工事業ほどの落ち込みにはなっていません。

売上の中心となる公共投資による土木工事が堅調に推移すると見られていることから、2021年3月期についても土木工事業の落ち込みは、他業種に比べ比較的小さくなるのではないかと考えられます。

【図表③ ⼟⽊⼯事業主要 10 社の 2021 年 3 ⽉期(連結)の実績】
02-3出所︓各社の 2021 年 3 ⽉期決算短信より作成

【図表④⼟⽊⼯事業主要10社の2021年3⽉期(連結)の業績予想】
02b

 

<電気設備⼯事業>
9社が増収、5社が増収増益となり好調な決算
2021年3月期については不透明要素が多い

売上高は9社が前年を上回り、5社が増収増益となっています(図表⑤)。10社合計の売上高は前期比11.2%増、営業利益は7.7%増、経常利益は6.4%増となっています。純利益は8.7%減となっていますが、これは協和エクシオ、ユアテック、中電工の3社で前期に特別損益として計上した経営統合に伴う負ののれん発生益によるものであり、売上高・収益性ともに電気工事業界は好調な決算であったと言えます。

2021年3月期の業績予想については8社が未定としており、新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与える影響について不透明要素が多いと考えられています(図表⑥)。業績予想を発表した電気通信設備工事大手2社では、コムシスホールディングスは売上高が前期比0.2%減、営業利益同2.4%減、純利益同1.9%減、協和エクシオは売上高が同0.1%増、営業利益同2.9%増、純利益同35.2%増としており、比較的堅調に業績は推移すると予想しています。

【図表⑤ 電気設備⼯事業主要 10 社の 2020 年 3 ⽉期(連結)の実績】
03-1出所︓各社の 2020年 3⽉期決算短信より作成

【図表⑥ 電気・通信設備⼯事業主要10社の 2021年3⽉期(連結)の業績予想】
03b

 

<管⼯事業>
6社が増収、5社が増収増益となり好調な決算
21年3月期については不透明要素が多い

売上高は6社が前年を上回り、5社が増収増益となっています(図表⑦)。10社合計の売上高は前期比2.2%増、営業利益は同12.1%増、経常利益は同9.6%増、純利益は同6.4%増となっており、管工事業界は好調な決算であったと言えます。

2021年3月期の業績予想については8社が未定としており、新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与える影響について不透明要素が多いと考えられています(図表⑧)。

業績予想を発表した三機工業は売上高が前期比3.7%減、営業利益同15.7%減、純利益同14.2%減、日比谷総合設備は売上高が同10.4%減、営業利益同45.8%減、純利益同57.6%減と減収減益の予想になっています。

【図表⑦ 管⼯事業主要 10 社の 2020 年3⽉期(連結)の実績】
04-1出所︓各社の 2020 年 3 ⽉期決算短信より作成

【図表⑧ 管⼯事業主要 10 社の 2021 年3⽉期(連結)の業績予想】
04b出所︓各社の 2020 年 3 ⽉期決算短信より作成

 

<プラント・エンジニアリング業>
7社が増収、6社が増収増益となり好調な決算
21年3月期については減収減益の予想

売上高は7社が前年を上回り、6社が増収増益となっています(図表⑦)。10社合計の売上高は前期比5.8%減となっていますが、前期はマイナスであった営業利益、経常利益、純利益がいずれもプラスに転じており、決算は改善傾向にあると思われます。

2021年3月期については、業績予想を発表した7社のうち4社が売上高は前期を上回るとしており、プラント・エンジニアリング業界では、新型コロナウイルス感染症の業績に与える影響はそれほど大きくないと見られているようです。

【図表⑨ プラント・エンジニアリング業主要10社の2020年3⽉期(連結)の実績】
05-1出所︓各社の2020年3⽉期決算短信より作成

【図表⑩ プラント・エンジニアリング主要10社の2021年3⽉期(連結)の業績予想】
05b出所︓各社の2020年3⽉期決算短信より作成

 

<住宅・不動産業>
7社が増収、4社が増収増益となり堅調な決算
2021年3月期については減収減益の予想

売上高は7社が前年を上回り、4社が増収増益となっています(図表⑨)。10社合計の売上高は前期比1.2%増、営業利益は同2.5%増、経常利益は同2.2%増、純利益は同2.0%増となっており、住宅・不動産業界は堅調な決算であったと言えます。

2021年3月期の業績予想を発表した6社はすべて減収減益の予想になっています(図表⑩)。大和ハウス工業、三菱地所、住友不動産の3社では売上高を二ケタの減収と予想しており、新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与えるマイナスの影響は大きくなりそうです。

【図表⑪ 住宅・不動産業主要 10 社の 2020 年3⽉期(連結)の実績】
06-1出所︓各社の 2020年 3 ⽉期決算短信より作成

【図表⑫ 住宅・不動産業主要10社の2021年3⽉期(連結)の業績予想】
06b出所︓各社の 2020年 3 ⽉期決算短信より作成

 


本レポートのまとめ

2020年3月期の決算は、景気回復を背景に民間設備投資が増加、政府の公共工事も堅調に推移したところに東京オリンピック・パラリンピックの特需も加わり6業種ともに好調な結果となりました。第4四半期(2020年1月~3月)における新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与えたダメージは限定的なものであり、各社の決算には大きな影響を与えませんでした。

しかし、2021年3月期については新型コロナウイルス感染症拡大が業績に与えるマイナスの影響が各業種ともに懸念されており、不透明感が漂っています。

2021年3月期の業績予想を見ると、総合工事業では6社が大幅な減収減益を予想しています。総合工事業の業績は電気工事業や管工事業にも大きな影響を与えることから、建設業界全体が厳しい経営環境になるのではないかと危惧されます。社会インフラの老朽化や多発する自然災害への対策が必要なことから、政府の建設投資は堅調に推移すると予想されています。そのため、土木建設業は比較的堅調な業績予想になっていますが、新型コロナウィルス感染症拡大の状況によっては政府の建設投資が削減されることも懸念され予断を許さない状況だと言えます。

 

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