【2021年12月】建設業界 人材市場動向月次レポート

本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今回は、少子高齢化が進展する中で建設業に就職する人の現状を把握するために、厚生労働省の「雇用動向調査」のデータから建設業における若年層(29歳以下)と高齢者層(65歳以上)の入職者数について分析しました。
※入職者:常用労働者のうち、調査対象期間中に事業所が新たに採用した者で、他企業からの出向者・出向復帰者を含み、同一企業内の他事業所からの転入者を除く

今月のトピックス

建設業に入職した若年層(29歳以下)は4.9%減少

29歳以下の若年層の入職者の増減率について、最新データである2020年と2015年を比較すると、全産業平均の増減率は、8.3%の減少となりました。
産業分野別にみると、入職者が増加しているのは「電気・ガス・熱供給・水道業(59.3%増)」「情報通信業(8.8%増)」「医療、福祉(5.9%増)」「学術研究、専門・技術サービス業(0.2%増)」の4分野だけであり、多くの産業分野で若年層の入職者が減少していることが分かります(図表①)。
最も減少率が高いのは「生活関連サービス業、娯楽業(49.4%減)」であり、次いで「不動産、物品賃貸業(37.9%減)」「製造業(18.7%減)」「金融業、保険業(18.1%減)」と続いています。
一方建設業は4.9%減と、全産業平均の8.3%減と比較して減少幅は小さくなりました。

【図表① 主要産業別の若年層(29歳以下)の入職者増減率(2020年と2015年の比較)】図表① 大学新卒者の就職後3年以内の離職率の推移出典:厚生労働省「雇用動向調査」より作成

高齢者層(65歳以上)の入職者は41.5%増加

65歳以上の高齢者層について2020年と2015年を比較すると、全産業平均は44.6%の増加となりました。産業分野別にみると、入職者が減少しているのは「情報通信業(80.0%減)」「宿泊業、飲食サービス業(37.9%減)」「製造業(7.6%減)」の3分野だけであり、若年層の傾向と異なり、多くの産業分野で高齢者層の入職者が増加しました(図表②)。
最も増加率が高いのは「生活関連サービス業、娯楽業(150.5%増)」、次いで「複合サービス業(133.3%増)」「運輸業、郵便業(118.3%増)」と続いています。
建設業の高齢者層の入職者は41.5%増となっており、全産業平均よりも増加率が低いことが分かります。

【図表② 主要産業別の高齢者層(65歳以上)の入職者増減率(2020年と2015年の比較)】図表② 高校新卒者の就職後3年以内の離職率の推移出典:厚生労働省「雇用動向調査」より作成

深刻な高齢化が進む建設業では、若年層獲得に向けたさらなる取り組みが重要

少子高齢化が進む中、建設業では、若年層就職者の減少率と高齢者層就職者の増加率が、ともに、他産業よりも比較的低く抑えられていることから、若年層と高齢者層に偏らない、バランスよい人材獲得ができているのではないかと推測されます。
一方で、他産業と比較して深刻な高齢化が進んでいる建設業界は、就業者の年齢層の再構成を進めていくことが重要です。そのためにも今後、さらに若年層の獲得に注力していくことがより重要になると考えられます。

2021年10月の建設業界の最新雇用関連データ

(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数

建設業の就業者数は487万人(前年同月比97.4%)、雇用者数は398万人(同97.5%)で、ともに前年同月比で6カ月連続減少しました。

<建設業の就業者数と雇用者数の推移>建設業の就業者数と雇用者数の推移出典:総務省「労働力調査」より作成

公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は77,746人(同102.4%)と前年同月比で11カ月連続増加しました。

<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(2)建設技術職の雇用動向

ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は6カ月連続で上昇し、前年同月を0.47ポイント上回る6.33倍になりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0.75ポイント上回る10.24倍となり、前年同月比で10カ月連続上昇しました。
有効求人数は前年同月比105.4%となり、10カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同105.9%と10カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が続いています。
充足率は前年同月より0.83ポイント低下して3.00%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)建設技能工の雇用動向

ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月を0.05ポイント上回る5.54倍となり、前年同月比で3カ月ぶりに増加に転じました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0.29ポイント上回る8.87倍となり、前年同月比で2カ月連続上昇しました。
有効求人数は前年同月比105.3%となり、14カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同102.4%と14カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工への求人意欲は上昇傾向が続いています。
新規求職者数は前年同月比99.0%となり、4カ月振りに減少に転じました。
充足率は前年同月より1.08ポイント低下して5.38%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

2021年10月の雇用関連データのまとめ

(1)主要な雇用環境指標の推移

就業者数は2カ月連続で減少

就業者数は6,659万人(前年同月比35万人減)と2カ月連続で減少しました。雇用者数は5,982万人(同16万人減)となり7カ月ぶりに減少に転じました。就業率は60.4%で同じく7カ月振りに前年同月を下回りました。

完全失業者数は前年同期比で4カ月連続減少

完全失業率(季節調整値)は前月より0.1ポイント低下して2.7%、完全失業者数は4カ月連続で減少して前年同月比32万人減の183万人となりました。

【主要雇用環境指標の推移】
主要雇用環境指標の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業で大幅な減少が続く

産業別に就業者数を見ると、最も増加率が高いのは先月に続いて情報通信業であり、前年同月9.9%増となりました。一方、最も減少率が高いのは前月に引き続いて宿泊業・飲食サービス業であり同10.7%減、次いで生活関連サービス業が同10.6%減となっています。

【主要産業別の就業者数・雇用者数】
主要産業別の就業者数・雇用者数出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

非正規の就業者数が3カ月連続で減少

雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,566万人(前年同月比31万人増)となり、17カ月連続で前年同月から増加しました。非正規の職員・従業員数は3カ月連続で減少して、同40万人減の2,071万人となりました。

【雇用形態別雇用者数の推移】
雇用形態別雇用者数の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

完全失業率は男性・女性ともに0.1ポイント改善

男女別に完全失業率を見ると、男性、女性ともに0.1ポイント改善しています。完全失業者数は、男性は前年同月よりも25万人減少、女性は8万人減少しています。年齢層別に完全失業率を見ると、最も改善したのは15歳から24歳の女性であり、前月よりも0.7ポイント改善して3.5%となっています。

【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で3カ月連続減少

完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が前年同月比14万人減の31万人と3カ月連続で減少しました。また、自発的な離職者についても前年同月よりも10万人減少して74万人となりました。

【求職理由別完全失業者数の推移】
求職理由別完全失業者数の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移

ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント低下して1.15倍となりました。労働需給の先行指標である新規求人倍率は低下に転じ、前月より0.02ポイント低い2.08倍になりました。正社員の有効求人倍率は前月より0.02ポイント低下して0.89倍でした。

【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)職業別有効求人倍率の推移

ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は、前年同月を0.17ポイント上回って1.83倍となり、4カ月連続で上昇しました。
有効求人倍率が最も上昇したのは、前月に続いて生産工程の職業で前年同月を0.68ポイント上回って1.79倍となりました。次いで保健師、助産師、看護師が同0.52ポイント上回って2.62倍、建設・土木・測量技術者が同0.47ポイント上回って6.33倍となりました。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の6.33倍、次いで建設・採掘の職業の5.54倍となっており、建設業関連専門職の人手不足が最も深刻な状況が続いています。

【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】
ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

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