本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今回は、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」の最新データから、建設業における大学・高校新卒者の離職率の実態を分析します。 ホワイトペーパーダウンロード
大学新卒者の就職後3年以内の離職率について過去10年の推移を調査したところ、建設業では、2014年卒業の30.5%をピークに、15年卒業(28.9%)、16年卒業(27.8%)と離職率が低下しています。17年卒業は29.5%に上昇しますが、18年卒業は28.0%に低下しました(図表①)。一方で、製造業及び全産業平均は、18年卒業以外では建設業のように明確な低下傾向はみられませんでした。なお、18年卒は、就職後3年目に新型コロナウイルス感染症が拡大しており、離職率の改善にも影響していると考えられます。
【図表① 大学新卒者の就職後3年以内の離職率の推移】
高校新卒者の同離職率は、建設業では12年卒業で50.0%に達し、2人に1人が就職後3年以内に離職する状況でした(図表②)。しかし、その後は改善傾向が続き、18年には42.7%まで離職率は低下しています。
一方、製造業及び全産業平均では、多少の増減はありますが、ほぼ横ばいの状況が続いています。
【図表② 高校新卒者の就職後3年以内の離職率の推移】
これらのデータから、建設業の大学および高校の新卒者の就職後3年以内の離職率は、徐々に改善傾向であることが読み取れます。このことからも、深刻な人手不足を背景に、建設企業各社が新卒社員の定着率向上に注力していることが推察されます。
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」の最新データである、2018年3月の大学新卒者の就職後3年以内の離職率は、建設業では28.0%でした。全産業平均の31.2%よりは低いものの、製造業の19.0%よりも9ポイント高くなっています。一方、高校新卒者の同離職率は、建設業では42.7%と、製造業の27.2%、全産業平均の36.9%ともに上回りました(図表③)。
徐々に改善傾向がみえる、建設業の大学および高校の新卒者の同離職率ですが、深刻な人手不足を軽減するためにも、他産業と比較してより高い同離職率が続いている、高校新卒者の定着率改善への取り組みが重要であると推察されます。
【図表③ 2018年3月の大学・高校新卒者の就職後3年以内の離職率】
建設業の就業者数は495万人(前年同月比98.2%)、雇用者数は405万人(同99.5%)と、ともに前年同期比で5カ月連続減少しました。
<建設業の就業者数と雇用者数の推移>
公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は82,131人(同105.7%)と、前年同期比で10カ月連続増加しました。
<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>
ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は5カ月連続で上昇し、前年同月を0.55ポイント上回る6.25倍になりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を1.06ポイント上回って10.98倍となり、9カ月連続で前年同月を上回りました。前月(0.03ポイント増)よりも大幅な上昇率になりました。
有効求人数は前年同月比105.9%となり、9カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同105.1%と9カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が続いています。
充足率は前年同月より0.54ポイント低下して3.16%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月を0.05ポイント下回る5.32倍となり、前年同月比で2カ月連続低下しました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0.16ポイント上回る9.41倍となり、上昇に転じました。
有効求人数は前年同月比106.2%となり、13カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同107.1%と13カ月連続で前年同月を上回り、建設技能工への求人意欲は上昇傾向が続いています。
新規求職者数は前年同月比105.3%となり、3カ月連続で前年同月を上回りました。
充足率は前年同月より0.62ポイント低下して5.25%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
就業者数は6,679万人(前年同月比10万人減)と前年同月比で6カ月ぶりに減少に転じました。雇用者数は5,975万人(同14万人増)となり、6カ月連続で前年同月を上回りました。また就業率も60.5%(同0.2%増)と同じく6カ月連続で前年同月を上回りました。
完全失業率(季節調整値)は前月と同じく2.8%、完全失業者数は3カ月連続で減少して前年同月比18万人減の192万人となりました。
【主要雇用環境指標の推移】
産業別に就業者数を見ると、最も増加率が高いのは情報通信業であり、前年同月比8.4%増で20万人の増加となりました。一方、最も減少率が高いのは、生活関連サービス業・娯楽業であり、同11.0%減で27万人の減少となりました。
【主要産業別の就業者数・雇用者数】
雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,579万人(前年同月比50万人増)となり、16カ月連続で前年同月から増加しました。非正規の職員・従業員数は同2カ月連続で減少して、同20万人減の2,059万人となりました。
【雇用形態別雇用者数の推移】
男女別に完全失業率を見ると、男性は前月より0.2ポイント改善して2.9%でしたが、女性は0.1ポイント悪化して2.6%になりました。完全失業者数は、男性は前年同月よりも12万人減少、女性は6万人減少しています。年齢層別に完全失業率を見ると、最も改善したのは35歳から44歳の男性であり、前月よりも0.6ポイント改善して2.4%となっています。
【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が、前年同月比3万人減の37万人と2カ月連続で減少しました。また、自発的な離職者についても前年同月よりも5万人減少して74万人となりました。
【求職理由別完全失業者数の推移】
ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.02ポイント上昇して1.16倍となりました。労働需給の先行指標である新規求人倍率は4カ月ぶりに上昇に転じ、前月より0.13ポイント高い2.10倍になりました。正社員の有効求人倍率は前月より0.01ポイント低下して0.91倍でした。
【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は、前年同月を0.17ポイント上回って1.81倍となり、3カ月連続で上昇しました。
有効求人倍率が最も上昇したのは、前月に続いて生産工程の職業で前年同月を0.68ポイント上回って1.74倍となりました。次いで医療技術者が同0.46ポイント上回って2.89倍、建設・土木・測量技術者が同0.55ポイント上回って6.25倍となりました。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の6.25倍、次いで建設・採掘の職業の5.32倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が最も深刻な状況が続いています。
【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】