本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今回は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査の最新データから建設業における給与額の実態を年齢層別、職種別に分析します。 ホワイトペーパーダウンロード
今月のトピックス
建設業の年間給与額はすべての年齢層で製造業を上回る
2020年の平均年間給与額を建設業と製造業で比較すると、建設業は540万3千円、製造業は491万7千円となっており、建設業が製造業よりも約10%高くなっています(図表①)。年齢層別にみると、すべての年齢層で建設業が製造業を上回っています。最も平均年間給与額が多くなるのは建設業、製造業ともに50~54歳であり、建設業は650万9千円、製造業は613万7千円になっています。
55歳から64歳といった定年年齢前後の給与額をみると、製造業では55~59歳の613万1千円から60~64歳には401万9千円と約35%減少しますが、建設業では同648万4千円から同516万9千円と減少幅は約20%にとどまっており、建設業は製造業よりも給与額の落ち込みが小さいという特徴が見られます。
【図表① 2020年における年齢層別の平均年間給与額の建設業と製造業の比較】出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成
建築技術者の平均年間給与額は619万8千円
主要な技術職について2020年の平均年間給与額をみると、最も平均年間給与額が高いのはシステムコンサルタント・設計者で690万円でした。次いで輸送用機器技術者が662万円、建築技術者で619万8千円と続いています(図表②)。土木技術者は568万2千円、測量技術者は463万1千円と建築技術者よりも平均年間給与額は低くなっています。
【図表② 主要な技術職の2020年での平均年間給与額の比較】※電気・電子・電気通信技術者は通信ネットワーク技術者を除く
出典:出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成
2021年8月の建設業界の最新雇用関連データ
(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数
建設業の就業者数は485万人(前年同月比97.6%)、雇用者数は387万人(同97.0%)で、前年同期比でともに4カ月連続で減少しました。
<建設業の就業者数と雇用者数の推移>出典:総務省「労働力調査」より作成
公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は65,650人(前年同月比105.7%)と前年同期比で9カ月連続で増加しました。
<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(2)建設技術職の雇用動向
ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は前年同月比で4カ月連続で上昇し、前年同月を0.43ポイント上回る6.21倍になりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、8カ月連続で前年同月を上回って9.53倍となりましたが、上昇率は0.03ポイント増と前月(1.64ポイント増)よりも小幅になっています。
有効求人数は前年同月比106.0%となり、8カ月連続で増加しました。新規求人数も同104.8%と8カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が鮮明となっています。
充足率は前年同月より0.41ポイント低下して3.17%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)建設技能工の雇用動向
ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月を0.07ポイント下回る5.28倍となり、3カ月ぶりに低下に転じました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を1.04ポイント下回る6.99倍となり、2カ月連続で低下しました。
有効求人数は前年同月比106.9%となり、12カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同106.0%と12カ月連続で前年同月を上回っており、企業の求人意欲は上昇傾向が続いています。
新規求職者数は前年同月比121.8%となり、二桁の増加になっています。
充足率は前年同月より1.12ポイント低下の5.79%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
2021年8月の雇用関連データのまとめ
(1)主要な雇用環境指標の推移
就業者数は6,693万人(前年同月比17万人増)、雇用者数は5,970万人(同24万人増)となり、ともに前年同月比で5カ月連続で増加しました。就業率は60.6%で同じく5カ月連続で前年同月を上回りました。
完全失業率(季節調整値)は前月と同じく2.8%、完全失業者数は2カ月連続で減少して前年同月比13万人減の193万人となりました。
【主要雇用環境指標の推移】
出典:総務省統計局「労働力調査」より作成
最も増加率が高いのは学術研究、専門・技術サービス業
産業別に就業者数を見ると、最も増加率が高いのは前月に引き続いて学術研究専門・技術サービス業であり、前年同月増減率14.5%増で33万人の増加となりました。一方、最も減少したのは宿泊業・飲食サービス業であり、前年同月増減率6.4%減で25万人の減少となりました。
【主要産業別の就業者数・雇用者数】
出典:総務省統計局「労働力調査」より作成
非正規の就業者数が4カ月ぶりに減少に転じる
雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,582万人(前年同月比47万人増)となり、前年同月比で15カ月連続で増加しました。非正規の職員・従業員数は4カ月ぶりに減少に転じて、同10万人減の2,060万人となりました。
【雇用形態別雇用者数の推移】
出典:総務省統計局「労働力調査」より作成
女性の完全失業者が前年同月よりも12万人減少
男女別に完全失業率を見ると、男性は前月と同じで3.1%でしたが、女性は0.1ポイント改善して2.5%になりました。完全失業者数は、男性は前年同月よりも1万人減少、女性は同12万人減少しています。年齢層別に完全失業率を見ると、最も悪化したのは15歳から24歳の女性であり、前月よりも0.6ポイント悪化して4.0%となっています、次いで悪化したのは、35歳から44歳の女性が同0.5ポイント悪化して2.7%、35歳から44歳の男性が同0.4ポイント悪化して3.0%となっています。
【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
出典:総務省統計局「労働力調査」より作成
勤め先や事業の都合による離職が4万人減少
完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が、前年同月比4万人減の35万人と減少に転じました。一方、自発的な離職者は同2万人増の77万人となっています。
【求職理由別完全失業者数の推移】
出典:総務省統計局「労働力調査」より作成
(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移
ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント低下して1.14倍となりました。労働需給の先行指標である新規求人倍率は前月より0.01ポイント低下して1.97倍と、3カ月連続で低下しました。正社員の有効求人倍率は前月より0.02ポイント低下して0.92倍でした。
【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
(3)職業別有効求人倍率の推移
ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は前年同月を0.14ポイント上回って1.78倍となり、2カ月連続で上昇しました。
有効求人倍率が最も上昇したのは前月に続いて生産工程の職業で、前年同月を0.68ポイント上回って1.69倍となりました。次いで医療技術者が同0.49ポイント上回って2.84倍、建設・土木・測量技術者が同0.43ポイント上回って6.21倍となりました。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の6.21倍、次いで建設・採掘の職業の5.28倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が最も深刻な状況が続いています。
【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
【職業別有効求人倍率(パート除く)の対前年同月比】
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
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