本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今月は、2021年の上半期(1月~6月)の建設技術者、建設技能工の需給動向についてまとめました。 ホワイトペーパーダウンロード
2021年上半期における建設技術者の月別の有効求人倍率の推移をみると、コロナ禍前の2019年と比較するとすべての月で下回っていますが、コロナ禍が始まっていた2020年と比較すると5月、6月は上回っており、徐々に上昇傾向となっています(図表①)。次に新規求人数の推移をみると、すべての月で2020年を上回り、2月と5月以外は2019年も上回っています。このように2021年上半期における建設技術者への需要はコロナ禍前の2019年と比較しても高い状況になっており、今後については人材需給がさらに逼迫化することも考えられます。
【図表① 建設技術者の有効求人倍率の推移】
【図表② 建設技術者の新規求人数の推移】
建設技能工についてみると、有効求人倍率は5月、6月と2020年を上回り上昇傾向にあります。6月の有効求人倍率は5.37倍と2019年の5.43倍に迫る勢いとなっています(図表③)。新規求人数は5月以外のすべての月で2020年、2019年ともに上回っており、建設技能工の人材需給は建設技術者以上に逼迫化することが推測されます(図表④)。
【図表③ 建設技能工の有効求人倍率の推移】
【図表④ 建設技能工の新規求人数の推移】
建設業の就業者数は465万人(前年同月比98.3%)、雇用者数は382万人(同98.5%)で、ともに2カ月連続で減少しました。
<建設業の就業者数と雇用者数の推移>
公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は81,586人(同106.4%)と7カ月連続で増加しました。
<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>
ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は前年同月を0.2ポイント上回る5.76倍となり、2カ月連続上昇しました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を1.51ポイント上回って10.37倍となり、6カ月連続で前年同月を上回っており建設技術者の需給状況は再び厳しくなってきています。
有効求人数は前年同月比112.9%となり、6カ月連続で増加しました。新規求人数も同106.2%と6カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が鮮明となっています。
充足率は前年同月より0.25ポイント低下して3.56%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています 。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>
ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は前年同月を0.10ポイント上回る5.37倍となり、2カ月連続の上昇となりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は前年同月比1.24ポイント上昇して8.75倍となりました。11カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工の需給動向は逼迫に向かっていると考えられます。
有効求人数は前年同月比109.7%となり10カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同108.6%と同じく10カ月連続で前年同月を上回っており、企業の建設技能工への求人意欲は上昇傾向が鮮明となっています。
充足率は前年同月より0.87ポイント低下して5.99%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成
<建設・採掘の職業の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>
就業者数は6,692万人(前年同月比22万人増)、雇用者数は5,980万人(同51万人増)となり、ともに3カ月連続で増加しました。就業率は60.6%で同じく3カ月連続で前年同月を上回りました。
完全失業率(季節調整値)は前月より0.1ポイント低下して2.9%となり、完全失業者数は17カ月連続で増加して、前年同月比11万人増の206万人となりました。
【主要雇用環境指標の推移】
産業別に就業者数を見ると、最も増加率が高かったのは情報通信業であり、前年同月比11.3ポイント上昇して256万人となりました。次いで卸売業・小売業が同4.8ポイント上昇して1,071万人となりました。一方、最も減少率が高かったのは教育学習支援業であり、同6.4ポイント減少して338万人となりました。
【主要産業別の就業者数・雇用者数】
雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,576万人(前年同月比15万人増)となり13カ月連続で増加しました。非正規の職員・従業員数は同31万人増の2,075万人となり、3カ月連続で増加しました。
【雇用形態別雇用者数の推移】
年齢層別・男女別に完全失業者数と完全失業率をみると、最も完全失業率が上昇したのは55歳~64歳の女性で前月より0.5ポイント上昇、次いで45歳~54歳の女性が同0.4ポイント上昇しました。一方、完全失業率が最も低下したのは55歳~64歳の男性で同0.6ポイント低下、次いで45歳~54歳の男性が0.4ポイント低下しました。
【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が前年同月比2万人減の39万人となり、2020年1月以来17カ月ぶりに減少に転じました。
【求職理由別完全失業者数の推移】
ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は、前月より0.04ポイント上昇して1.13倍でした。労働需給の先行指標である新規求人倍率は、前月より0.01ポイント低下して2.08倍になりました。正社員の有効求人倍率は、前月より0.04ポイント上昇して0.94倍でした。
【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は、前年同月より0.02ポイント低下して1.68倍になり、23カ月連続の低下となりました
有効求人倍率が上昇したのは、生産工程の職業(前年同月比0.50ポイント増)、医療技術者(同0.39ポイント増)、建築・土木・測量技術者(同0.20ポイント増)、建設・採掘の仕事(同0.11ポイント増)、輸送・機械運転の職業(同0.10ポイント増)、サービスの職業(同0.05ポイント増)の6職種でした。
最も有効求人倍率が高いのは、建築・土木・測量技術者の5.76倍、次いで建設・採掘の職業の5.37倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が依然として深刻な状況が続いています。
【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】
【職業別有効求人倍率(パート除く)の対前年同月比】