【2021年7月】建設業界 人材市場動向月次レポート

本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今月は、厚生労働省の「労働経済動向調査」の最新データから建設業における人手不足感の現状についてみてみます。

今月のトピックス

最も人手不足感が高いのは建設業

2021年5月調査における産業別の正社員等労働者の過不足状況判断DI(不足と回答した事業所の割合から過剰と回答した事業所の割合を差し引いた値)をみると、最も高いのが建設業の49ポイント、次いで医療・福祉の46ポイント、郵便業・運輸業の38ポイントとなっており、建設業は特に人手不足感が高いことがわかります(図表①)。一方、最も過不足状況判断DIが低いのは、コロナ禍の影響を大きく受けている宿泊業・飲食サービス業の9ポイントとなっています。

【図表① 2021年5月における産業別の正社員等労働者の過不足状況判断DI】

出典:厚生労働省「労働経済動向調査」より作成

コロナ下においても建設技術者の人手不足感は高まる

建設業における建設技術者および建設技能工の過不足状況判断DIの推移についてみると、2020年2月から8月は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、ともに大きく低下しましたが、その後は上昇傾向が続いています。建設技術者については、2020年8月の44ポイントから2021年5月には59ポイントに上昇しており、コロナ禍が収束しない中においても人手不足感は高まっています。建設技能工については2021年5月に若干低下しましたが、49ポイントと高水準です。今後はコロナ禍の収束後に向けて、建設技術者および建設技能工の人材需要はさらに高まるのではないかと考えられます。

【図表② 建設技術者・建設技能工の過不足状況判断DIの推移】

出典:厚生労働省「労働経済動向調査」より作成

2021年5月の建設業界の最新雇用関連データ

(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数

就業者数は484万人(前年同月比99.6%)、雇用者数は394万人(同98.3%)で、ともに減少しました。

<建設業の就業者数と雇用者数の推移>

出典:総務省「労働力調査」より作成

公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は66,490人(同107.3%)と6カ月連続で増加しました。

<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(2)建設技術職の雇用動向

建設技術者数は30万人(同100.0%)で前年同月と同じでした。

<建設技術者数の推移>

出典:総務省「労働力調査」より作成

◆ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は、15カ月ぶりに上昇に転じ、前年同月を0.08ポイント上回る5.50倍になりました。
◆労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0.83ポイント上回って9.13倍になり、5カ月連続で前年同月を上回っており建設技術者の需給状況は再び厳しくなってきています。
◆有効求人数は前年同月比114.9%となり、5カ月連続で増加しました。新規求人数も同110.3%と5カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が鮮明となっています。
◆充足率は前年同月より0.26ポイント上昇して3.92%となったものの、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>


出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)建設技能工の雇用動向

建設技能工数は308万人(前年同月比96.9%)と減少しました。

<建設技能工数の推移>

出典:総務省「労働力調査」より作成

ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月比0.02ポイント上昇して5.18倍になりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は7.75倍(対前年同月比+0.41ポイント)で、10カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工の需給動向は逼迫に向かっていると考えられます。
有効求人数は前年同月比113.9%となり、9カ月連続で前年同月を上回った。新規求人数も同105.0%と9カ月連続で前年同月を上回っており、企業の求人意欲は上昇傾向が続いている。
充足率は前年同月より0.32ポイント上昇して6.90%となったものの、ハローワークで建設技能工を採用することが困難な状況は続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

<建設・採掘の職業の雇用関連指標の前年同月比(常用・除くパート)>

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

2021年5月の雇用関連データのまとめ

(1)主要な雇用環境指標の推移

就業者数、雇用者数ともに2カ月連続で増加

就業者数は6,667万人(前年同月比11万人増)、雇用者数は5,950万人(同30万人増)となり、ともに2カ月連続で増加しました。就業率は60.3%で同じく2カ月連続で前年同月を上回りました。

完全失業率は3カ月連続で悪化して3.0%となる

完全失業率(季節調整値)は前月より0.2ポイント上昇して3.0%となり、完全失業者数は16カ月連続で増加して、前年同月比33万人増の211万人となりました。

【主要雇用環境指標の推移】

出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

医療・福祉が前年同月比6.1%増で最も増加率が高くなった

産業別に就業者数を見ると、最も減少率が高いのは金融業・保険業であり、前年同月増減率7.7%減(13万人減)でした。一方、最も増加率が高かったのは医療・福祉で同6.1%増(51万人増)でした。前月まで大幅な減少が続いていた宿泊業・飲食サービス業は同2.1%減にとどまりました。

【主要産業別の就業者数・雇用者数】

出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

正規、非正規ともに雇用者数は増加

雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,556万人(前年同月比22万人増)となり、12カ月連続で増加しました。非正規の職員・従業員数は同16万人増の2,061万人となり、2カ月連続で増加しました。

【雇用形態別雇用者数の推移】

出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

最も完全失業率が上昇したのは25~34歳の女性で、前月より0.5ポイント上昇して3.5%となる

男女別に完全失業率を見ると、男性は前月と同じで3.2%でしたが、女性は0.4ポイント上昇して2.7%になりました。最も完全失業率が上昇したのは25~34歳女性で、前月よりも0.5ポイント上昇して3.5%になりました。完全失業者数は男性が前年同月より6万人増加して125万人、女性が同8万人増加して87万人でした。

【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】

出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

勤め先や事業の都合による離職の大幅な増加が続く

完全失業者数を求職理由別に見ると、「勤め先や事業の都合による離職」が前年同月比8万人増の43万人となり、大幅な増加が続いています。「新たに求職」のみが減少し、同3万人減の51万人となりました。

【求職理由別完全失業者数の推移】

出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移

有効求人倍率は横ばいで1.09倍

ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じで1.09倍でした。労働需給の先行指標である新規求人倍率は前月より0.27ポイント上昇して2.09倍になりました。正社員の有効求人倍率は前月より0.02ポイント上昇して0.90倍でした。

【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)職業別有効求人倍率の推移

ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は前年同月より0.14ポイント低下して1.59倍になり、22カ月連続の低下となりました。
有効求人倍率が上昇したのは生産工程の仕事(前年同月比0.28ポイント増)、医療技術者(同0.17ポイント増)、建築・土木・測量技術者(同0.08ポイント増)、建設・採掘の仕事(同0.02ポイント増)でした。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の5.50倍、次いで建設・採掘の職業の5.18倍となっており、建設業関連の専門職の人手不足が依然として深刻な状況が続いています。

【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

【職業別有効求人倍率(パート除く)の対前年同月比】

出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

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