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静岡新聞・静岡放送東京支社ビル×丹下健三 ―「建設HR」が後世に語り継ぎたい名建築【5】

作成者: 編集部|2021年10月14日

銀座にはメタボリズムの樹がある

西新宿にアバンギャルドな繭(モード学園コクーンタワー)があるなら、銀座にはメタボリズムの樹がある。

メタボリズムの樹

静岡新聞・静岡放送東京支社ビルは、1967(昭和42)年竣工のオフィスビルだ。丹下健三が設計した「メタボリズム」の代表的建築として、広くその名を知られている。

コア部分から突き出した、いや、くっついた? オフィスフロア

竹橋駅前に建つパレスサイドビルと同じような円筒形のコア部分が目を惹く。この「コミュニケーション・シャフト」はまるで樹の“幹”のようであり、さらにその幹からにょきにょきと生えている"枝”あるいは“葉”。鉄筋コンクリート造の幹部分(コア)にはエレベーターや階段などが備わり、鉄骨造の枝部分はオフィスだ。基本思想は中銀カプセルタワーと同じもの。メタボリズムならでは、である。

パレスサイドビル(設計:日建設計/施工:大林組・竹中工務店)

これがシルバーのアルミパネルにでも覆われていれば、いかにも昭和SF的建築に映っただろう。それが、茶色の外装色によって、筆者にはなにがどうやっても“樹”にしか見えない。しかも銀座と新橋の境界近くにあるため、「ここから先は銀座ですよ」と観光客に案内する目印の樹に見えるのだ。むかし、街道をゆく旅人の目印として植えられていた大樹のように。

新橋と銀座の境界に立つ一本の樹のような静岡新聞・静岡放送東京支社ビル

銀座に植えられたメタボリズムの樹は、その後、銀座の街に広がっていく計画もあったようだけれど、あいにくこの一本だけで終わってしまった。しかしビルの魅力が損なわれることはもちろんなく、いまもオフィスとしてしっかり稼動中である。

入口だけ見れば意外と普通のビル

このビルの撮影中、一眼レフで同ビルを撮影していた観光客とおぼしき白人女性に「このビルはとても素晴らしいわね」(たぶんこんな感じの英語で)と話しかけられたので、「Yes, Good Building!」と笑顔で返した。ニッポンは令和へと移り変わったけれど、昭和のビルだってこんなに素敵なんですよ、という誇らしさを込めて。いうまでもないが、筆者は昭和生まれである。昭和建築バンザイ!

JR新橋駅からも見られる“メタボリズムの樹”。時間がなければ駅ホーム端からどうぞ(ただし東海道線ホームからは近すぎて見にくい)。

記事初出:『建設の匠』2019年4月3日

アクセスマップ

データBOX

建物名 静岡新聞・静岡放送東京支社ビル
発注者(事業主) 株式会社静岡新聞社
設計者 丹下都市建築設計
構造設計者 青木繁研究室
設備設計者 株式会社森村協同設計事務所
施工者 大成建設株式会社
竣工 1967年10月
構造 鉄筋鉄骨コンクリート造