一度見たら忘れられない、お台場の象徴
東京・お台場において、全国的にもっとも有名なビルと言っても過言ではないのがフジテレビFCGビル。格子状の構造体と、それと対照的な球体を組み合わせるという斬新な構成は、一度見たら忘れられないアピアランスだ。
お台場のビル群の中でひときわ存在感を放つ
最大の個性である直径32mの球体は、“はちたま”と呼ばれる球体展望台となっている。鈍い輝きを放つ外装パネルはチタン製で、金属加工メーカーの菊川工業が施工を担当した。湾岸地域でも腐食の心配がなく、軽くて丈夫なチタンが選ばれた。
球体展望台「はちたま」
しかし、チタンは高価な建材で、加工も難しい。長い歴史を持つ菊川工業としても2例目というぐらいノウハウがなかったそうだが、当時としては先進的な3次元CADで制作し、苦心の末に3200枚の板厚0.8㎜のパネルを貼り付けた。表面はダル仕上げで、7階の空中庭園で作業を行ったのち、鹿島建設によって半日以上かけて25階までジャッキアップされたという。
球体展望台「はちたま」を真下から見上げる
内装に目を向けると、720枚のR付き格子天井パネルは、50㎜のハニカムを1.0㎜のアルミ材でサンドイッチしている。同ビルのどの場所でも放送が成立するよう、展望台ながら音を拡散させる構造になっているのだ。
変わりゆくお台場で変わらないモノ
バブル期の残り香が漂うこのビルの設計は、東京都庁舎などと同じく、丹下健三によるもの。1996年の竣工から20年以上が経過しても、まったく旧さを感じさせることなく、変わりゆくお台場エリアを見つめている。
7階屋上庭園から見た「はちたま」
夜の闇に浮かぶ宇宙船のよう
記事初出:『建設の匠』2018年10月31日
アクセスマップ
データBOX
建物名 | フジテレビFCGビル |
発注者(事業主) | フジテレビジョン |
設計者 | 丹下健三・都市・建築設計研究所(現・丹下都市建築設計)、小堀鐸二研究所 |
施工者 | 鹿島建設株式会社 |
竣工 | 1996年6月 |
構造 | 鉄骨構造 |
所在地 | 東京都港区台場二丁目4番8号 |