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2024年を迎える前に。建設業界の働き方改革は「現場の成功事例」から学べ

編集部 2021年12月6日
2024年を迎える前に。建設業界の働き方改革は「現場の成功事例」から学べ

2016年、当時の第3次安倍第2次改造内閣が「一億総活躍社会実現」を提唱し、働き方改革担当大臣が誕生。やがて「働き方改革実現推進室」が創設され、その2年後に成立した「働き方改革関連法」以来、日本では働き方改革が進められてきました。

法改正によって産業界の労働時間は上限規制されるようになりましたが、中小企業は1年の猶予を与えられ、さらに建設業は2024年までの猶予を与えられました。

時は2021年末。その猶予期間もじわじわと終わりに近づいています。

建設業界の働き方改革(とりわけ長時間労働削減)は待ったなし。しかしそこにはさまざまな課題が待ち受けています。どのようにその課題を乗り越えていけばいいのか――それは成功事例に学ぶのが一番です。

そんな折、働き方改革のコンサルタントとして知られるワーク・ライフバランス社(以下、WLB社)が「働き方改革 建設業界オンライン勉強会~2024年までに現場で売上向上と残業削減を達成する働き方改革とは~」と題して人事・働き方改革推進担当者・経営者に向けたウェビナーを開催。その内容をレポートします。

「働き方改革に特効薬はない」の真意とは

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まず登壇したのは、国土交通省大臣官房技術調査課で事業評価・保全企画官を務める藤浪武志氏。2007年に国交省に入省し、外務省でSDGs関連の業務に従事したのち、国交省で働き方改革官を併任しています。

藤浪氏は「建設業をとりまく環境変化と働き方改革について」と題し、日本を取り巻く状況(急速に減少する生産年齢人口やコロナ禍による働き方の変化)、建設産業の現状(高齢化が進んでいること)などをフックに、建設業における働き方改革、インフラ分野のDX推進について紹介。

「新3K」の実現に向けて、国土交通省直轄工事での週休2日の取り組みや適切な工期設定指針などを紹介。印象的だったのは、最後に徳島県による下記動画を「ぜひ観てほしい」と紹介したことです。藤浪氏は「建設業の魅力を高めていきたい」という熱い想いを語っていました。

続いて成功事例の紹介です。

鹿島建設の事例

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登壇した鹿島建設東京土木支店の阿部泰典氏は、東京外環自動車道中央ジャンクションの構造物構築現場で2021年4月から所長をつとめているそう。

しかし、経験豊富やベテラン年上社員とJV若手社員、協力会社などで構成された30名程度の現場で、「周囲に助けてもらえるだろうか、自分の言うことを聞いてもらえるだろうか」と風通しがあまり良くはなく、不安げな空気が漂っていたといいます。

鹿島建設Webサイト

そんな折、阿部氏が社内でおこなわれたWLB社の働き方改革セミナーに参加し、出会ったキーワードが「心理的安全性」でした。阿部氏は現場の雰囲気を良くしてコミュニケーションを活発化し、何でも相談できるような雰囲気をつくろうと決めたのです。

そこでまずおこなったことは、「ご意見吸い上げワーク(ふせん会議)」。若手社員や職長を対象に否定的な意見はナシというお約束で「どんな職場が良い職場だろう?」とじっくり話し合ったのだとか。

他にも「グッジョブカード」「テーマを決めたご意見ボード」「現場スローガンの策定」「実施工への改善取り組み」など雰囲気を良くする取り組みによって、現場の雰囲気やコミュニケーション面は明らかに良くなり、調整や相談の機会が増えたことで安全面や施工において好影響があったとのこと。「ひとりではなく、推進者とタッグを組んで進めることが重要」と阿部氏は締めました。

新菱冷熱工業の事例

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続いて登壇したのは新菱冷熱工業 首都圏事業部の加藤生一氏。設備施工管理に長年従事してきた「仕事大好き人間」の加藤氏が、2017年から参画した「働き方さわやかProject」を振り返りました。

新菱冷熱工業 働き方改革「働き方さわやかProject」

長時間労働問題の解決と担い手確保のため、最重要経営課題としてスタートした当Project。「業界全体での課題解決も必要だが、まずは自分たちでできることから働き方を見直す活動」という位置づけだったそう。

2016年にスタートして以来、「フェーズ5」に入った働き方さわやかProjectのスタートは、WLB社が提唱する「カエル会議」でした。

その他、業務の見える化や管理職の意識改革に向けた活動、ICTを活用した現場業務の効率化などに取り組んだ結果、2020年度の平均残業時間はマイナス9.3パーセント(2015年度比)、有給休暇取得率はプラス28.9ポイント(同)に。「(長時間労働の解決なんて)そもそも無理だ、できるはずがない」という雰囲気は、いまや「有給休暇を取得しやすく、早く帰りやすい」雰囲気へと変わったといいます。

「新しいものはどんどん採り入れる。ダメだったらすぐあきらめる」「働き方改革に特効薬はない」「TTP(徹底的にパクる)、二番煎じ大歓迎」など実経験に基づいたフレーズを連発する加藤氏。今年度は「働き方改革“チャレンジ45”」と銘打ち、「月45時間を6か月以上」等に取り組むとのこと。

「とは言ってもね……」と、働き方改革の酸いも甘いも嚙み分けてきた加藤氏は、現状や今後の課題を語りました。


働き方改革で売上・営業利益が約7倍に⁉

信幸プロテックの事例

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最後に登壇したのは、岩手県に拠点を構える信幸プロテックの経営管理部・村松直子氏。

信幸プロテック/岩手県×小さな会社×働き方改革=♪

空調・給排水・照明、産業設備の点検・修理・施工などをおこなう信幸プロテックは、「岩手県働き方改革推進モデル企業」に選定された2017年から、働き方改革の取り組みを本格的に開始。具体的には次の6点に取り組みました。

【信幸プロテック初年度の取り組み】

  1. スキルマップ・手順書作成
  2. 現場同行
  3. スキルアップ勉強会
  4. プロ宣言
  5. ライフビジョンシート
  6. がんばるタイム

業務を棚卸したところ依頼受付業務や見積書・請求書登録作業、経理伝票入力作業など「減らしたい業務にもっとも時間を費やしていた」ことに気づいた(!)そうで、さっそくIT化にも着手。結果的に、累計で27日/年の時間を削減することに成功したそうです。

その後は工事部など全社的な取り組みを開始。工事部では平均利益率が17パーセントアップ※1、労災ゼロ日数も913日継続※2したんだとか。
※1 取り組み開始直後の3か月間と直近3か月の比較
※2 2020年までの数字

おかげで取り組み前比で時間外労働は50パーセント減少し、売上・営業利益は約7倍の伸び。各メディアに取り上げられるようになったのも、2021年に新社屋への移転を果たしたのも、「働き方改革のおかげ」といって過言ではないでしょう……。

村松氏は最後に、取り組みのポイントと気づきをこうまとめました。

【信幸プロテックの働き方改革のポイント】

  1. 小さく始める、成功体験をつくる
  2. 部門ごとの事情に合わせて活動を始める(お仕着せのルールはいらない)
  3. 制度やルールから入らない、後追いでいい
  4. スタッフ主体で決められる余地を多くして、自分事にさせる
  5. 社外と積極的に情報交換

全社で取り組む際に、「ひとつの施策」にこだわって推し進めるのではなく、工事部門やサービス部門など部門ごとの実情に即した施策内容を自由に検討してもらい、それを進めたことが成功のカギでは、と感じました。

2024年に向けて取り組む働き方改革のポイント

各社の取り組み内容発表が熱を帯びたものだったがゆえ、最後のパネルディスカッションの時間がなくなってしまったのですが、WLB社コンサルタントの浜田紗織氏は「2024年に向けて取り組む働き方改革のポイント」として以下の5点を挙げました。

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【2024年に向けて取り組む働き方改革のポイント】

  1. 業界内で比較して安心しない
  2. 必ず2021年度中にスタートを
  3. 「帰れ帰れ」の大号令を出さない
  4. 大逆転の一手はないものと心得る
  5. 現場が主役

ローマは一日にして成らず、働き方改革も一日にして成らず。地道に、しかし真摯に取り組んでいる企業の成功事例を学ぶことからはじめてみてはいかがでしょう。

 

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