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建設人事のお悩みに圧倒的熱量で寄りそうメディア

「常に他社の一歩先をゆく“新しい働き方”を作り出す」パシフィックコンサルタンツ社長・重永智之氏が考える未来への布石

編集部 2021年10月4日

建設業界はまだまだ長時間労働が多く、なおかつ男性中心の慣習から抜け切れていない。しかし時代は変化している。今後は性別や属性にかかわらず能力を持った人材を雇用し、大切に育成していかなければ業界の存続も難しい。その課題に気づいた人は増えているが、改善となると難しく感じることもあるのではないだろうか。

業界内ではすでに組織として働き方を見直し、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」の改善に取り組んでいる企業がある。その先駆者がパシフィックコンサルタンツだ。2010年から実践を始めて数々の成果をあげ、同業他社にも影響を与えてきた。建設コンサルタント業界では非常に珍しい存在といえる。今回、10年前から今までの変化と今後WLB改善に取り組む企業へのヒントを、同社代表取締役 社長執行役員の重永智之氏に聞いた。

01本インタビューはオンラインで2021年9月17日に実施しました

取材・執筆/丘村奈央子

WLBを実現しなければ、能力ある人に選ばれない

建設コンサルタント業界でWLB実現に取り組む企業にとって、パシフィックコンサルタンツの活動は大きな指針となっている。例えば現在多くの企業が採用している「ノー残業デー」。2011年に同社が実効性のある運用を始めて他社にも広がり、2013年には14社に呼びかけて「業界一斉ノー残業デー」を実施した。2019年からは「男性育休100%宣言」プロジェクトに賛同し、重永社長自らがメディアに登場して取得率向上と周知に努めている。

「この先いろんなライフステージの方が働ける選択肢を増やさないと、能力がある方々にうちの会社を選んでもらえなくなるという危機感があります。できるだけ多様な働き方に対応できる仕組みが必要です」

言葉には熱がこもる。業界を牽引するこれらの活動はどこから始まったのだろうか。

「2000年代後半に労使双方から長時間労働について問題提起がありました。じゃあ残業に対する意識改革をやっていこうと意見が一致して、2009年に株式会社ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんに講演会を頼んだのがきっかけです。社内講演会では小室さんから、『WLBを実現するには限られた時間で成果を出すシビアな働き方をしなければいけない。多くの企業は”当社の業界は特殊だから……”と言って長時間労働を正当化する』という話がありました。でもそのときはみんな『何を言っているんだ』という感覚だった

当時は現場で管理職だった重永社長も「そんなことやれるわけないだろう」という反発心が本音だったという。

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「その後コンサルティングをしてもらったんですが、社員はみんなコンサルタントなので、初めはやっぱり屁理屈ではないですが意見を言いたくなるんです。でも社内でモデルグループを作り、小室さんに中に入ってもらって具体的なプランを考え実施すると結果が見えてくる。結局、WLB実現は『生産性を高めましょう』ということなんですよ。モデルグループで成功事例が増えると最初は反対していた人たちも腹落ちします。私もそのひとりでした」

そして社内でWLB改善を進めるにとどまらず、建設コンサルタンツ協会にも働きかけを行った結果「建コン協会一斉ノー残業デー」が生まれ、現在も多数の同業他社とともに実施されているという。

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浸透を深めるためにはもうひとつポイントがあるという。

「今もそうなんですが、我々のような年上の人間はつい過去の成功体験に固執してしまう。でも改革を実践すれば残業が減って仕事が効率化するのは事実で、新しいツールの活用については若い人たちを見習ったほうがいい。もちろんベテランにはベテランの知見があります。お互いバランスをとるのが大切です」

10年間で劇的な変化、さらに「新しい働き方」を目指す

推進の結果、残業時間は2009年10月からの1年間で2割以上削減し、2017年には経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」にも選ばれた。男性育休取得率は2020年10月からの1年間で約6割、平均20日以上の利用があった。今後は取得率が高い部署に報奨金を出すことも検討している。

また、重永社長を含め、取締役の多くが中堅の女性社員の成長を支援するメンタリングのメンターを担った経験がある。さらに女性社員の増加に伴って、先輩女性社員が若手女性社員を1対1でサポートする「姉サポ」という制度も取り入れた。

「若手育成のためのコーチング制度は以前からありましたが、女性社員に対して男性上司がどう対応したらいいか分からないという声が上がりました。そこで女性同士で悩みを打ち明けられる仕組みとして用意したのが『姉サポ』です」

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産休・育休の取りやすさに加えて復帰後のサポートもあり、ここ数年で女性社員の離職率は半分程度(5.4%→3.0%)になったという。

「企業にしてみれば、5年10年手塩にかけて育ててきた社員が『すみません、子どもが生まれたので退職します』というのはつらい。一度退職を選択した社員に復職の手立てがあってもいい。多彩な社員のあらゆるケースに対応できるようにしたいんですよ」

社内では「働き方改革」という言葉を超え、さらにその先を目指して、昨年「新しい働き方推進部」を設置した。10月の組織変更では人事や総務と連携した組織として再編する。

「課題は分かったので次はどう実行するか。私たちが目指す『新しい働き方』では、①自律した働き方、②時間と場所を選べる働き方、③チームで成果を出す働き方という3つの柱を立てています」

①については社員のITリテラシー教育も範疇に入る。特にベテラン社員はITツールを使いこなせず、若手に頼ってしまいがちなため、フォローの機会を設ける。また、自ら考え行動する「自律型社員」に向けた取り組みとして、1on1を活用し、個人と組織の成長につなげる。

②については、居住地と配属地が離れていても勤務が可能かどうか遠隔勤務の試行を予定しているという。例えば東京に住みながら福岡への配属が可能になれば、転勤で家族が離れ離れになるような問題は解消される。

チームで成果を出すためには生産性の高いチームづくりが求められ、コミュニケーションの強化も大切だ。「チーム内で1on1の時間を定期的にとるほか、私自身もバーチャル空間サービス『oVice(オヴィス)』に入り、若手社員の話を直接聞くようにしています。結構率直で面白い意見が出てくるんです」

楽しそうに話す重永社長には、社員に対する期待がにじむ。10月以降はLGBTQについての専用相談窓口を設置するなど、多様性・グローバル化を意識した施策も進める。「誰ひとり取り残さないSDGs思考」を持ってパシフィックコンサルタンツは今も先端を走っている。

「遊び幅」を持ったアイデアで、システムを変えていく

これからはどんな社員と働きたいと考えているのだろうか。

「技術については、入った後で覚えられる時間がたくさんあります。それより自分から物事を考えられる力を重視します。自分でこれをやりたいと言ってチャレンジして、ダメだったらやり方を変えてみる。失敗はしてもいいんです。チャレンジングな精神を持った人に入っていただきたいと思っています」

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重永社長は「世の中は聖人君子ばかりではない、人間としての遊び幅が活かせるような会社にしたい」という。建設コンサルタントの仕事でもその幅を十分に発揮できる場が増えている。クライアントである官公庁や地方自治体も、社会インフラだけでなくソフトやシステム構築に対する柔軟な提案を求めはじめているからだ。

「私自身、現在の高速道路にあるスマートインターチェンジの最初の計画・設計に携わりました。社会インフラの中に自分の仕事が残る達成感というのは非常に大きなものです。建設コンサルタントは国や地方自治体が考える政策立案の手伝いをすることもあります。他社に先駆けてどんな新しい一歩を提案できるか挑戦する。そしてそれを実現する喜びをぜひ感じてほしいですね」

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自社の社員と未来の社員に向けて大いなる期待があり、「だから企業としてしっかり応えられる仕組みを作る」という一本の軸を常に感じるインタビューだった。たしかにWLBの改善を進めると一時的に生産性が下がることがある。しかしパシフィックコンサルタンツではそれを「長い目で見たらメリット」と捉えており、すでに生産性は上がっているという。今を継続するか、未来のために変革を進めるか。これまでとは違う物差しで組織を見直すときが来ている。

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