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萩原雅紀のダムライターコラム【18】水量の多い河川のダムはどこだ?「総流入量ダービー」開催!

編集部 2021年09月28日

ダムは数字でできている

僕たちは高さ(堤高)、幅(堤頂長)、大きさ(堤体積)などの数字を見て、ダムの規模を想像したり比較したりすることができる。数字をもとに自分なりに個性を見つけたりすることもあるだろう。

01ダムは数字でできている

ダムを運用する際の基準もすべて数字だ。こちらはリアルタイムで変化する興味深さがある。ある流入量を超えたら洪水調節を始める。下流の水量が基準を下回りそうなときは補給。貯水位が何メートルのとき、ゲートを何センチ開けたら毎秒何立方メートル放流される。

ダムにまつわるさまざまな数字があり、それぞれに意味があって、すべて同じダムはないから、個性的で興味深いのだと思う。

記事初出:『建設の匠』2020年6月26日

 

多量の水を受け止めるダムをねぎらいたい

昨年の夏、総貯水容量を堤体積で割って、堤体1立方メートルあたりの貯水量を算出、いわゆる「堤体の貯水効率」でダムを比べるという記事を書いた。

新提案!「堤体の効率」で比べる最強ダム決定戦!

総貯水容量も堤体積もそのダム独自のもので、数字が変わることはないので、新規ダムが建設されない限り結果は固定である。

今回は、変動する数字を使ってダムを比べてみたい。そこで、上流からダムに流れ込んでくる水の量、つまり「流入量」を見てみることにした。1年間の流入量の合計、つまり「年間総流入量」を計算し、単純にどのダムが(設置されている川が)水量が多いのか、という比較である。

どのくらい貯めたか、洪水を防いだか、などは関係なく、ひたすら水量の多い川に造られたダムを「ごくろうさま」、とねぎらいたいのだ。

01水量が多いと放流設備も多く操作も大変そうだ

そこで、水量の多そうな川のなるべく下流の方に造られている、国土交通省か水資源機構のダムをいくつかピックアップした。なぜこの2つの組織かと言うと、過去のリアルタイムデータを保存、公開しているから。というか、それ以外の電力会社や自治体のダムは過去データをほとんど見ることができないのだ。無理は承知でお願いしますが、公開してもらえませんか

01秋葉ダムなんてそうとう上位に食い込みそうだけど過去データが見れない

総流入量ダービー出走ダム紹介

今回出走するのは以下のダムたち。ダム名、河川名の後の数字は計画最大放流量と流域面積を表示してみた。

計画最大放流量とはダムが洪水調節を行いながら放流する最大の量のこと。この放流を行なっても流入量が勝り、ダムの最高水位をこえる予測が出たときは異常洪水時防災操作、いわゆる「緊急放流」を行うことになる。つまり大雨のときはそのくらいの水が来るぞ、というポテンシャルを表している。

流域面積とはそのダムの上流にある流域、つまり降った雨や雪が流れ込んでくる土地の面積のこと。流域面積が大きいほど下流の流量が大きい、というのはひとつの傾向として絶対にあるだろう。

【1】滝里ダム(北海道)/石狩川水系空知川/毎秒2400立方メートル/1662平方キロメートル

北海道最大であり、日本三大河川にも数えられる石狩川水系で最大の支流、空知川に設置されている。流域面積は1662平方キロメートルと意外にもかなり大きい。一般水力では北海道最大となる発電所を備えるなど、流量の多さに期待がかかる。上流は富良野市がある盆地を通り、さらに遡ると金山ダムがある。

01大雨の後で濁った水を放流している滝里ダム

【2】宇奈月ダム(富山県)/黒部川水系黒部川/毎秒6200立方メートル/617.5平方キロメートル

日本有数の急流河川。ダムの資料館などに、欧米と比べていかに日本の川が急かという川の断面図がよくあるけど、

01こういうやつ(イメージです)

あの図の左の方にほぼ垂直の線として描かれているのがこの川だ。ヨハネス・デ・レーケ先生が「これは川ではない、滝だ!」と言うレベルのやつである。豪雪地帯でもあり、高落差&大水量を目当てに古くから水力発電開発が行われ、上流にはあの黒部ダムが控える。今回ノミネートした中では流域面積は大きくはないが、大河川と比較してどうなのか。

01過酷な黒部川で唯一の治水ダム

【3】丸山ダム(岐阜県)/木曽川水系木曽川/毎秒4800立方メートル/2409平方キロメートル

長野県から岐阜県、愛知県そして三重県に流れて伊勢湾に注ぐ中部地方を代表する河川、木曽川の本流中流部をせき止める堤高約100mの巨大ダム。流域面積が2400平方キロメートル以上と広大なうえ、上流に豪雪地帯を抱え水量が多いことから水力発電の適地として大正時代から開発された河川だけに、流入量もそうとう期待できるのではないか。

01クレストゲート全門放流している姿もよく見る

【4】天ヶ瀬ダム(京都府)/淀川水系宇治川/毎秒840立方メートル/4200平方キロメートル

西日本屈指の大河川である淀川の本流に設置された唯一のダム。何と言っても上流に日本最大の湖である琵琶湖が控え、流域面積はダントツの4200平方キロメートル、木曽川の丸山ダムの倍である。計画最大放流量はこの中では少ないが、これは琵琶湖の調節能力の大きさだろう。総流入量は間違いなく毎年トップ3に入る実力は持っていると思われる。

01放流するために生まれてきたダム

【5】池田ダム(徳島県)/吉野川水系吉野川/毎秒11100立方メートル/1904平方キロメートル

利根川(坂東太郎)、筑後川(筑紫次郎)と並んで四国三郎の異名を持ち、日本三大暴れ川のひとつに数えられる吉野川。その中流と下流の境に位置し、計画最大放流量が毎秒1万立方メートルを超える過酷な環境で治水と利水の最後の砦を務めている。上流では同じ水資源機構の早明浦ダムをはじめ、銅山川の3ダムなどが声援を送る。

01毎秒1万トンという流量を見られるかも

【6】鶴田ダム(鹿児島県)/川内川水系川内川/毎秒2400立方メートル/805平方キロメートル

洪水調節と発電のみの目的で建設された堤高110mを超える国土交通省直轄ダム、という意味を考えてほしい。川内川は昔から洪水被害に悩まされてきた。また、急流かつ水量の豊富な川を探していた電源開発が目をつけたのもこの川だった。過去には鉄壁の調節容量を余裕で使い切るほどの洪水が発生。台風の常襲地帯でもあり、たいへんな爆発力を秘めた流域である。

01さらなる洪水と戦うため改造まで受けた鶴田ダム

以上の各ダムについて、昨年(2019年)の1月1日から12月31日までの流入量を計算し、1年間にどのくらいの量が上流から流れてくるのかを見てみたい。

算出方法&競ダム予想

算出方法は、国土交通省の水文水質データベース内のダム統計情報から各ダムのデータを参照。毎日、1時間ごとに毎秒平均流入量が記録されているので、それを単純に60倍して毎分平均流入量を出し、さらに60倍して毎時平均流入量を計算。すべて足して1年間の総流入量を弾き出した。

01毎秒平均流入量を足して年間総流入量を出しました

……計算、これで合ってますよね……? ここまで書いてこんなこと言うのもアレですが、正直、数学は苦手なのでこの方法で正しいのか、いまいち自信がない。

あと、ここで出した数字は毎秒平均を計算で膨らませて毎分、毎時、毎日と出した数字を足したもので、ダムがリアルタイムで記録している正確なデータではない、ということにご留意いただきたい。

結果はどうなるだろう。各ダムのパラメータを見ながら予想してみよう。

最有力は、流域面積が圧倒的に大きい天ヶ瀬ダムではないだろうか。琵琶湖を経由して、滋賀県内に降った雨のほとんどが流れて来るのだ。また、すぐ上流で治水目的のみのダムが計画されている大戸川という支流も流れ込んでくる。1番人気は間違いないだろう。

 

対抗馬として挙げるなら池田ダムだ。西日本を代表する暴れ川である吉野川のクローザーを務め、毎秒1万立方メートルを超える計画最大放流量はまさにケタ違いである。上流の早明浦ダムは「四国のいのち」と呼ばれ、四国4県に水を供給するまさに命綱。台風の通り道でもあり「ハマればデカい」流域である。

 

木曽川の丸山ダムも有力候補のひとつに間違いない。流域面積は広く、上流は長野県の山間部に入り豪雪地帯に利水目的の巨大ダムが林立、中流部は発電ダムが連なる。雨がそこそこ降れば丸山ダムを始め流域のダムがクレストゲート全門から放流しているイメージがある。

滝里ダム、宇奈月ダム、鶴田ダムも頭数合わせというような立場ではなく、台風の直撃が2~3あればあっという間に先頭に躍り出るポテンシャルを秘めているはずだ。

さて、各ダムの流入量を表計算ソフトに突っ込んだところ一瞬で計算が終わり、結果を見比べてみた。

総流入量ダービー・レース結果

順位 ダム名 2019年総流入量
第1位 丸山ダム 43億4576万立方メートル
第2位 池田ダム 34億7197万立方メートル
第3位 天ヶ瀬ダム 27億6915万立方メートル
第4位 宇奈月ダム 17億6955万立方メートル
第5位 鶴田ダム 15億4441万立方メートル
第6位 滝里ダム 15億3900万立方メートル

2019年の総流入量1位は木曽川の丸山ダムだった。何と2位の池田ダムに10億立方メートル、3位の天ヶ瀬ダムに16億立方メートルもの大差をつける独走劇。過去数年分を遡って調べてみても、ほぼ毎年50億立方メートル弱の年間総流入量があるようで、これは実力的に飛び抜けていた、という結果だったかも知れない。

2位の池田ダムも毎年30億立方メートル台の数字を安定して叩き出していた。雪解け水のほとんど期待できない四国でこの数字は驚異的と言える。それだけ大雨時の流量がものすごいことになるのだ。

意外だったのは3位の天ヶ瀬ダム。過去には丸山ダムに迫る40億立方メートル近い年間総流入量を記録したこともあり、ポテンシャルは十分だったがこの年はもうひとつ降雨に恵まれなかったのかも知れない。琵琶湖から天ヶ瀬ダムを経由せず下流に水を流す琵琶湖疎水が大きな影響を出している、という可能性も多少あるのだろうか。

流域面積は最小ながら4位に食い込んだ宇奈月ダムは、さすが黒部川の底力を見せつけられた感じ。鶴田ダムと滝里ダムのデッドヒートも印象深い。というか、滝里ダムが鶴田ダムに肉薄しているのは驚いた。空知川、石狩川に水害のあった2016年は26億立方メートルの流入があったらしい。

01丸山ダムごくろうさま!

というわけで、いくつかのダムをピックアップして年間総流入量を算出して比べてみた。しかし阿賀野川や天竜川、熊野川など、ほかにも流量のありそうなダムは多く存在するのだけど、発電用ダムなどでデータが参照できず参戦させられなかった。

また、信濃川や利根川などは本流の中~下流部にダムがなく、こちらも参戦できなかったのが少し残念だった。だから造ってくれ、というわけにもいかないけれど。

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