【2022年1月】建設業界 人材市場動向月次レポート

本レポートは、建設業に特化して人材関連の様々な情報、最新の雇用関連データを月に1回のペースで発信しています。今回は、少子高齢化が進行する中で建設業に就職する人の現状を把握するために、文部科学省の「学校基本調査」のデータから、大学新卒で※建設技術者として就職する学生数について調査します。
その結果、建設技術者として就職した大学新卒者が10年間で1.5倍に増加、女性の就職者も10年で2.5倍となり、建設技術者職として働く若者層および女性が増えている実態がわかりました。
※大学院(修士・博士課程)を除く
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今月のトピックス

大学新卒で建設技術者として就職する学生数は過去10年間で約1.7倍に増加

大学新卒で建築・土木・測量技術者(以下、建設技術者)として就職した学生数について、過去10年間の推移をみると、2012年卒の8,213人から2019年卒の13,051人まで8年連続で増加しました。2020年は東京オリンピック・パラリンピック関連の建設需要が落ち着いたこともあり、12,539人(前年比3.9%減)となりましたが、2021年は再び増加に転じて13,837人(同10.4%増)となるなど、この10年間で約1.7倍になりました。このことから、大学新卒で建設技術者として就職する学生数は増加傾向にあることが分かります。

【図表① 大学新卒で建設技術者として就職した学生数の推移】図表① 大学新卒で建設技術者として就職した学生数の推移出典:文部科学省「学校基本調査」より作成

大学新卒で建設技術者として就職した女性は、過去10年で約2.5倍増加

大学新卒で建設技術者として就職した女性は、2012年卒の1,268人から上昇傾向が続き、2021年卒では3,232人になるなど、10年間で約2.5倍になっています。
その中で女性が占める割合も2012年卒の15.4%から2021年卒では23.4%になるなど、10年間で8.0ポイントも上昇しています。このことから、建設技術職を希望する女性が増えてきていることがわかります。

【図表② 大学新卒で建設技術者として就職した女性の推移】図表② 大学新卒で建設技術者として就職した女性の推移出典:文部科学省「学校基本調査」より作成

より多くの大学新卒者を確保するために、積極的な働き方改革の推進が重要

建設業各社は厳しい人手不足が続く建設技術者を確保するために、人材の大きな供給源となっている大学新卒者の獲得に精力的に取り組んでいることが推察されます。また、建設技術者として就職する女性が増加している背景には、建設業界全体で、女性活用推進に向けた労働環境の整備などが積極的に進められていることがあると考えられます。
建設技術者は他産業と比較しても高齢化が著しく進んでおり、若者の確保は喫緊の課題になっています。今後ますます人材確保が難しくなることが懸念される中、若者を確保するために、給与アップや週休2日制導入、長時間労働の是正、リモートワークの戦略的導入などの積極推進による就業環境整備も重要と言えるでしょう。

2021年11月の建設業界の最新雇用関連データ

(1)建設業の就業者数・雇用者数・新規求人数

建設業の就業者数は471万人(前年同月比92.3%)、雇用者数は383万人(同92.3%)で、前年同月比でともに7カ月連続減少しました。

<建設業の就業者数と雇用者数の推移>建設業の就業者数と雇用者数の推移出典:総務省「労働力調査」より作成

公共職業安定所(ハローワーク)における新規求人数は68,022人(同106.6%)と前年同月比で12カ月連続増加しました。

<建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)>建設業の新規求人数の推移(新規学卒者とパートを除く)出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(2)建設技術職の雇用動向

ハローワークにおける建築・土木・測量技術者(常用・除くパート)の有効求人倍率は7カ月連続で上昇し、前年同月を0.42ポイント上回る6.46倍になりました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は前年同月を0.10ポイント上回る10.23倍となり、前年同月比で11カ月連続上昇しました。
有効求人数は前年同月比106.5%となり、11カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同107.5%と11カ月連続で増加しており、建設技術者の需要は増加傾向が続いています。
充足率は前年同月より0.59ポイント低下して3.34%となり、ハローワークで建設技術者を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>建築・土木・測量技術者の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)建設技能工の雇用動向

ハローワークにおける建設・採掘の職業(常用・除くパート)の有効求人倍率は、前年同月を0.03ポイント上回る5.72倍となり、前年同月比で2カ月連続増加しました。
労働需給の先行指標となる新規求人倍率は、前年同月を0.46ポイント下回る7.99倍となり、減少に転じました。
有効求人数は前年同月比105.4%となり、15カ月連続で前年同月を上回りました。新規求人数も同105.7%と15カ月連続で前年同月を上回っており、建設技能工への求人意欲は上昇傾向が続いています。
新規求職者数は前年同月比111.7%となり、上昇に転じました。
充足率は前年同月より0.94ポイント低下して5.97%となり、ハローワークで建設技能工を採用することは困難な状況が続いています。
*充足率=(就職件数/新規求人数)×100(%)

<建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)>建設・採掘の職業の雇用関連指標の推移(常用・除くパート)
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

2021年11月の雇用関連データのまとめ

(1)主要な雇用環境指標の推移

就業者数は3カ月連続、雇用者数は2カ月連続で減少

就業者数は6,650万人(前年同月比57万人減)と3カ月連続で減少しました。雇用者数は5,970万人(同47万人減)となり2カ月連続で減少しました。就業率は60.3%となり2カ月連続で前年同月を下回りました。

完全失業者数は前年同期比で5カ月連続減少

完全失業率(季節調整値)は前月より0.1ポイント上昇して2.8%、完全失業者数は5カ月連続で減少して前年同月比13万人減の182万人となりました。

【主要雇用環境指標の推移】
主要雇用環境指標の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

情報通信業の就業者数の増加傾向が続く

産業別に就業者数を見ると、最も増加率が高いのは先月に続いて情報通信業であり、前年同月比9.3%増となりました。一方、最も減少率が高いのは生活関連サービス業・娯楽業であり同10.5%減、次いで農業・林業が同10.0%減、建設業が同6.7%減となっています。

【主要産業別の就業者数・雇用者数】
主要産業別の就業者数・雇用者数出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

正規の職員・従業員数が18カ月ぶりに減少に転じ、非正規の職員・従業員数は4カ月連続で減少

雇用者数を正規、非正規別に見ると、正規の職員・従業員数は3,546万人(前年同月比1万人減)となり、18カ月ぶりに減少に転じました。非正規の職員・従業員数は4カ月連続で減少して、同37万人減の2,087万人となりました。

【雇用形態別雇用者数の推移】
雇用形態別雇用者数の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

15歳から24歳男性の完全失業率が前月よりも大幅に悪化

男女別に完全失業率を見ると、男性は前月比で0.2ポイント、女性は同0.1ポイント悪化しています。最も悪化したのは15歳から24歳の男性で、前月よりも1.7ポイント悪化して6.6%となりました。完全失業者数の前年同月比をみると、男性が12万人減、女性が1万人減となっています。

【年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率】
年齢階級別・男女別完全失業者数・完全失業率出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で4カ月連続減少

完全失業者数を求職理由別に見ると、勤め先や事業の都合による離職が前年同月比11万人減の31万人と4カ月連続で減少しました。一方、自発的な離職者についても前年同月よりも5万人増加して72万人となりました。

【求職理由別完全失業者数の推移】
求職理由別完全失業者数の推移出典:総務省統計局「労働力調査」より作成

(2)全体の有効求人倍率・新規求人倍率・正社員求人倍率の推移

ハローワークにおける有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じで1.15倍となりました。労働需給の先行指標である新規求人倍率は前月より0.05ポイント上昇して2.13倍になりました。正社員の有効求人倍率は4カ月連続で低下し、前月より0.02ポイント低い0.87倍となりました。

【ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移】
ハローワークにおける有効求人倍率(パートタイムを含む/季節調整値)の推移出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

(3)職業別有効求人倍率の推移

ハローワークにおける専門的・技術的職業の有効求人倍率は、前年同月を0.16ポイント上回って1.87倍となり、5カ月連続で上昇しました。
有効求人倍率が最も上昇したのは、前月に続いて生産工程の職業で前年同月を0.66ポイント上回って1.84倍となりました。次いで建設・土木・測量技術者が同0.42ポイント上回って6.46倍となりました。
最も有効求人倍率が高いのは建築・土木・測量技術者の6.46倍、次いで建設・採掘の職業の5.72倍となっており、建設業関連専門職の人手不足が最も深刻な状況が続いています。

【ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移】
ハローワークにおける職業別有効求人倍率(パート除く)の推移出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成

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