まず登壇したのは、国土交通省大臣官房技術調査課で事業評価・保全企画官を務める藤浪武志氏。2007年に国交省に入省し、外務省でSDGs関連の業務に従事したのち、国交省で働き方改革官を併任しています。
藤浪氏は「建設業をとりまく環境変化と働き方改革について」と題し、日本を取り巻く状況(急速に減少する生産年齢人口やコロナ禍による働き方の変化)、建設産業の現状(高齢化が進んでいること)などをフックに、建設業における働き方改革、インフラ分野のDX推進について紹介。
「新3K」の実現に向けて、国土交通省直轄工事での週休2日の取り組みや適切な工期設定指針などを紹介。印象的だったのは、最後に徳島県による下記動画を「ぜひ観てほしい」と紹介したことです。藤浪氏は「建設業の魅力を高めていきたい」という熱い想いを語っていました。
続いて成功事例の紹介です。
鹿島建設の事例
登壇した鹿島建設東京土木支店の阿部泰典氏は、東京外環自動車道中央ジャンクションの構造物構築現場で2021年4月から所長をつとめているそう。
しかし、経験豊富やベテラン年上社員とJV若手社員、協力会社などで構成された30名程度の現場で、「周囲に助けてもらえるだろうか、自分の言うことを聞いてもらえるだろうか」と風通しがあまり良くはなく、不安げな空気が漂っていたといいます。
鹿島建設Webサイト
そんな折、阿部氏が社内でおこなわれたWLB社の働き方改革セミナーに参加し、出会ったキーワードが「心理的安全性」でした。阿部氏は現場の雰囲気を良くしてコミュニケーションを活発化し、何でも相談できるような雰囲気をつくろうと決めたのです。
そこでまずおこなったことは、「ご意見吸い上げワーク(ふせん会議)」。若手社員や職長を対象に否定的な意見はナシというお約束で「どんな職場が良い職場だろう?」とじっくり話し合ったのだとか。
他にも「グッジョブカード」「テーマを決めたご意見ボード」「現場スローガンの策定」「実施工への改善取り組み」など雰囲気を良くする取り組みによって、現場の雰囲気やコミュニケーション面は明らかに良くなり、調整や相談の機会が増えたことで安全面や施工において好影響があったとのこと。「ひとりではなく、推進者とタッグを組んで進めることが重要」と阿部氏は締めました。
新菱冷熱工業の事例
続いて登壇したのは新菱冷熱工業 首都圏事業部の加藤生一氏。設備施工管理に長年従事してきた「仕事大好き人間」の加藤氏が、2017年から参画した「働き方さわやかProject」を振り返りました。
新菱冷熱工業 働き方改革「働き方さわやかProject」
長時間労働問題の解決と担い手確保のため、最重要経営課題としてスタートした当Project。「業界全体での課題解決も必要だが、まずは自分たちでできることから働き方を見直す活動」という位置づけだったそう。
2016年にスタートして以来、「フェーズ5」に入った働き方さわやかProjectのスタートは、WLB社が提唱する「カエル会議」でした。
その他、業務の見える化や管理職の意識改革に向けた活動、ICTを活用した現場業務の効率化などに取り組んだ結果、2020年度の平均残業時間はマイナス9.3パーセント(2015年度比)、有給休暇取得率はプラス28.9ポイント(同)に。「(長時間労働の解決なんて)そもそも無理だ、できるはずがない」という雰囲気は、いまや「有給休暇を取得しやすく、早く帰りやすい」雰囲気へと変わったといいます。
「新しいものはどんどん採り入れる。ダメだったらすぐあきらめる」「働き方改革に特効薬はない」「TTP(徹底的にパクる)、二番煎じ大歓迎」など実経験に基づいたフレーズを連発する加藤氏。今年度は「働き方改革“チャレンジ45”」と銘打ち、「月45時間を6か月以上」等に取り組むとのこと。
「とは言ってもね……」と、働き方改革の酸いも甘いも嚙み分けてきた加藤氏は、現状や今後の課題を語りました。