<img height="1" width="1" src="https://www.facebook.com/tr?id=247086693971850&amp;ev=PageView&amp;noscript=1">
建設人事のお悩みに圧倒的熱量で寄りそうメディア

Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【5】日本武道館の守護霊?~土地の歴史をたずねて

編集部 2021年07月26日

大人気漫画エッセイも早いもので第5回。ところでみなさん、日本武道館がなぜあの場所に建っているのか、考えてみたことあります……?(編集部)

記事初出:『建設の匠』2019年8月30日

 

【5】日本武道館の守護霊?~土地の歴史をたずねて

01

02

03

04

05

06

07

08

09

10

11

12

 

今月の編集後記

こんにちは。漫画エッセイストのY田Y子です。この夏の猛暑をみなさまも無事乗り切られたでしょうか?

13

「一度は向き合ってみなければ……」と思っていた「日本武道館 立地の歴史」。私もアイスノン片手に、夏休みの宿題よろしく挑んでみました。というのも、4話冒頭でも触れた“武道館の特別感”は、江戸城の跡地という由緒ある土地柄から来ているのでは……? とつねづね感じていたからです。

さて、歴史をひもといてみると、震災や戦渦を経て日々変革を続ける大東京において、この界隈は古くは500年程前からの光景を残す場所もあるんだとか。この十数ページの漫画にどこをどう描くか、夏の暑さもあって目眩がする思いでした。

たとえば、田安明神(=築土神社)だけを見ても、江戸城拡張のため現在の飯田橋付近に、その後外堀拡張のため新宿区へ、戦災により千代田区富士見へ――などと、さまざまな理由により各地を転々としていた歴史があるのです。

日本武道館が創建された時、代官町と呼ばれた当時の住所と江戸城の鎮守については、日枝神社の管轄だった関係で、金の擬宝珠(玉ねぎ)の中には、今も上棟時の日枝神社のお札が納められているのだそうです。そして、その後神社庁により編成が代わり、築土神社の守りが復帰したのだとか。

また平将門に関しても首塚に行くと、案内板には「霊は神田明神で祀られている」と書かれています。一説には四肢をばらばらにされた平将門の身体は神田明神、首は田安明神に祀られているとか。さらに、徳川家康らに使えた天海という僧侶兼陰陽師が綿密に江戸の風水計画をしたとか、その時いくつかの神社を動かして江戸の守りを固めた……とか。興味をそそられるエピソードがたくさんありました。

ところで、首塚は動かそうとすると祟りがあるのに、なぜ神社はどんどん移動していくんだろう? と不思議に思っていたところ、築土神社は一度首塚から遠ざけられたのに、また移転を繰り返しながら首塚の近くに戻ってきている、という説があるのも知りました。

首塚に行ってみると“カエル”の置物がたくさん奉納されています(写真右下をご注目)。

14

「将門様に祈願すると無事に帰ってこられる」という信仰があるそうで(京都でさらされた首が東京に戻ったことから)、転勤が決まったサラリーマンが無事帰還できるよう祈願していくのだとか。

……では、かつての田安明神の敷地にできた日本武道館の守護についても、武士の祖であり、勝負の神様とも慕われる将門様がやっぱり適任なので、持ち前の帰還力で氏神様の地位に返り咲いてくださったのでは? などと思ったり……。不思議な話が大好きな私は描いてみたいことがいっぱいで、悩ましい第5回でした。

歴史は諸説あり、ここでは本当に少ししか歴史にしか触れることができませんでしたが、この場所にかつてこんなことがあったというご参考にでもなれば――。私の夏休みの武道館の土地調べが、みなさんのご興味を惹くきっかけに、少しでもなれたなら光栄です。

さて、これを書いたのは夏まっさかり……。戦没者追悼式の行われている8月15日、日本武道館がどんな様子なのだろう、と訪れてみました。戦没者遺族の方も高齢化が進み、お年を召した方が主でしたが、全国からバスを仕立て、大勢の方が祈りを捧げにいらっしゃっていました。

いつもは高く掲げられている日章旗が、この日は半旗。

15

武道の「武」は、一説には「戈(ほこ)を止める」(=戦える力を内に秘めつつ、武器をとどめて戦わない)という意味があるといいます。

武士道の流れをひく武道も、「心技一如」(=技と心を一体化させること)という言葉をかかげ、自分を向上させる精神修養的なものを非常に重視していて、技のみに走るのを戒めています。そのような精神は海外でも愛され、柔道人口が多いフランスでは「礼」を学ぶために柔道を習う人が多いと聞きました。

屋根の玉ねぎは「“武道の心”のシンボル」。“武道の心”とは、互いを尊敬することで相手が敵ではなくなる「無敵に至る道を歩むこと」(第4回参照)。

この漫画を描いて知った思いが、日本武道館を訪れる多くの人に伝わったらいいな……。そのためにもいっそう頑張って漫画を描こう! と気持ちを新たにしつつ、九段下を後にした真夏の一日でした。

 

 

追記 前回クイズに出した平成版バナーに載っているバンドは『人間椅子』さんでした!(バンドの事務に許可済み)。現在もますます円熟した演奏で活動されています! また武道館で勇姿を見たい!!

合わせて読みたい

Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【7】日本武道館は大仏殿?

Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【9】音楽プロデューサーに聞いた!日本武道館の魅力とは

Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【2】日本武道館と半世紀~設計者の孫の気づき